マイクロソフトの「本気」が詰まった低価格スマホが登場|山根康宏のワールドモバイルレポート

マイクロソフトは85ユーロのスマートフォン『Nokia Lumia 530』の販売を開始した。ノキアの携帯電話部門を買収したばかりのマイクロソフトだが、シェア奪回のためまずは低価格端末で勝負を挑もうとしている。

低価格端末が売れているWindows Phone

Windows Phoneのスマートフォン全体におけるOSマーケットシェアはゆるやかに上がってきてはいるものの、今のところAndoid OSやiOSの対抗にはなり切れていない。だが一部の国では低価格モデルの販売数が好調で、Windows PhoneがiPhoneの販売数を抜く国も出てきている。

その中でも売れているのは低価格モデルである。ノキア時代から販売されている『Lumia520』『Lumia525』といった低価格モデルはSIMフリーモデルの定価が約140ユーロ(2万円前後)。SIMロックをかけたプリペイド品では1万円を切る価格で販売されている。

ノキアのフィーチャーフォンを使い続けていた人がスマートフォンに乗り換える際は、やはり使い慣れたノキアを選ぶユーザーが多い。新興国ではまだフィーチャーフォンユーザー、すなわちノキアユーザーが多いこともあり、スマートフォンへ乗り換える際にこれら低価格Windows Phone機を購入する客が多いのだ。

昨年末のデータであるが、Adduplexの調査によると2013年12月のWindows Phoneの販売数のうち、Lumia 520と派生モデルの521の合計は34.1%だった。インドやベトナムなどの新興国ではほぼ半数がこの機種であり、確かにWindows Phone全体で一番の売れ筋は低価格モデルになっている。

Windows Phoneの中で最も売れているのが低価格モデルだ

Windows Phoneの中で最も売れているのが低価格モデルだ

また先進国でもスマートフォンのライトユーザーにWindows Phoneは人気だ。Windows Phoneは電話帳にFacebookやTwitterのアカウントを融合できるため、わざわざアプリを起動しなくてもメッセージのやり取りや近況報告を読むこともできる。しかも低価格モデルは価格競争力があり、ノキアのブランド力もまだ衰えていないことからAndoridスマートフォンと十分互角の競争を演じている。

マイクロソフトとしてはハイエンド機種も売れてほしい所だろうが、高価格帯のWindows PhoneはAndoridやiPhoneに対抗しうる製品が無いのが実情だ。2014年8月にようやくHTCのフラッグシップモデル『HTC One(M8)』のWindows Phone版が発売となったが、ノキア時代からの製品はまだGALAXY S5やXperia Z2に匹敵するスペックのものが出てきていない。

先進国ではビジネス層にPCのコンパニオンとしてWindows Phoneを使ってもらえば、Windows OS搭載のPCやタブレットの販売数増も期待できる。だがマイクロソフトとしては販売数そのものを引き上げることでOSシェアを上げることを優先するようだ。シェアが上がればアプリやサービスの開発者も増え、Windows Phoneのエコシステムも底上げすることができる。そのためにも低価格モデルはおろそかにできないわけだ。

但し幸いなことに、先進国でもWindows Phoneの販売数が高い国が出てきており、消費者の間に製品が広がりつつある。Kantarのレポートを見ると、例えばスペインではWindows PhoneがiOSのシェアを抜いている。またフランスではWindows Phoneのシェアは3位ながらも10%を超えており、フランスで売れているスマートフォンの10台に1台がWindows Phoneになっているのだ。

スペインではシェア2位。フランスでは10台に1台がWindows Phoneだ

スペインではシェア2位。フランスでは10台に1台がWindows Phoneだ

低価格をつきつめたLumia 530

このように低価格モデルが売れる中、マイクロソフトが2014年7月に投入したのが『Lumia530』である。Lumia520/525の実質的な後継機種だが、本体のデザインを一新し曲面を多用したスタイリッシュなものとしている。本体カラーは白と黒に加え緑とオレンジというカラフルな色が提供されるのは歴代のLumiaシリーズと同じ。スペックはLumia520とほとんど変わっていない。

だが最大の特徴はその販売価格である。Lumia530のヨーロッパでのSIMフリー価格は85ユーロと、Lumia520より4割も安いのである。日本円でも1万円ちょっとであり、この価格でWindows Phoneが購入できてしまうわけだ。もちろんSIMロック付きのプリペイド販売であれば5000円程度でも購入できる。

85ユーロのWindows Phone、Lumia530

85ユーロのWindows Phone、Lumia530

またLumia530の登場は、ノキアがこれまで出していたフルタッチのフィーチャーフォンの代替にもなる。ノキアはベーシックな10キーフィーチャーフォン、モバイルインターネット用途のフルタッチフィーチャーフォン『Asha』そしてWindows Phoneスマートフォン『Lumia』の3つのラインで製品展開をしていた。Ashaのラインはマイクロソフトとして今後継続開発していくのは難しく、かといって代替モデルがなければAndroidの超低価格モデルに消費者を奪われかねない。Lumia530はAshaシリーズの中上位モデルと価格が変わらないことから、Ashaを廃止し製品ラインを大きく統合できる。

Lumia530は先進国のハイエンド製品を好むユーザーには無縁のものかもしれないが、低スペックであろうともWindows Phoneが売れれば製品を目にする機会が増えるだろう。そして販売数が伸びれば取り扱うキャリアや販売店も増えるだろう。その結果、上位モデルを扱う店も増加しLumiaのハイエンド機種を消費者にアピールしやすくなるわけだ。

マイクロソフトとしては、当面の目標としてスマートフォンのOSシェアで10%までもっていきたいところ。そのためにも低価格機は重要な戦力であり、ハイエンドモデル以上にマーケティングにも力を入れていくだろう。今年のクリスマス商戦で、果たしてLumia530がどれくらい売れるのか注目したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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