遂にSIMフリー義務化へ!背景にある「国家戦略」とは?|池端隆司のモバイルジャンクション

こんにちは、池端です。
ポストコ・ラボでコラムを書き始めてから、しばしば不思議な現象に遭遇することがあります。

某携帯キャリアが某大手IT会社に買収されて新たなブランド立ち上げ!という話が進んでいたのに、コラムや原稿に書いた直後に実質「ご破産」になったこと。iPhoneのシェア7割も近い将来に逆転すると書いたら、今年の夏前にXperia Zシリーズが大躍進して出荷台数でiPhoneを抜いたり。そして今回もそんなトピック。6月末に、総務省が各キャリア向けに「SIMフリー義務化」を通達しました。現状でもSIMフリーの端末は少しずつ増えてきているのですが、通達の中身を「イケハタ流」に紐解いてみたいと思います。

総務省が各キャリア向けに「SIMフリー義務化」

本命はむしろ「真っ当な商売化」への是正勧告!?

これまでも総務省は、「SIMフリー化をもっと進めなさい」、という勧奨のようなニュアンスで通達を出してきました。ところが、今回は「SIMフリー義務化」という強い表現に現れている通り、かなり踏み込んだ内容といわれています。特に、キャリア3社がとりまとめて上申した、懸念点に関しての回答はほぼ「却下」でした。

具体的には、

  1. 現状の端末をSIMフリー化したい際、他社サービスの使える・使えないをキチンと説明し、判断は利用者にゆだねよ→「他社の~が使えない事が、SIMロック維持の理由にならない」

  2. 行き過ぎたMNPキャッシュバック(春先の通達は今回の前振り!?)を抑制する意味でもSIMロック解除を促進すべし。→2年縛り、MNPインセンティブは抑制または廃止へ

  3. キャリア毎のブランド戦略は、利用者に不便をかけるやり方ではなく、端末の魅力を最大限引き出すサービス(思わず使いたくなる、面白い、これが欲しい)を開発・提供すべし→契約時のオプション加入や2年縛りの違約金等、囲い込み型の商売を是正

この3つに共通するのは「これまでの商売(課金)の仕方を全面的に見なおせ」という強烈なメッセージを対キャリア向けに総務省が発して、今後のモバイル業界の方向性に「介入」してきたということ。全面SIMフリー化は「国策である」と言わんばかりです。私としては「よくぞ言ってくれた!」と喝采を送りたいくらいの気持ちです。

背景にはやはり、2020年のオリンピック開催を睨んで、通信サービスを「国際基準」並にしなくてはならないという政治の思惑もあるように思います。海外からの旅行者、もしくは日本から海外へ旅行する場合でも同じですが、「SIMロック端末では現地のSIMが使えない=利用者の自由な選択を妨げている」という大義名分をはっきりと中間報告の中で明記しています。

私が拙著の中で「通信サービスにおいて、海外旅行者を全然ウェルカムしていない国、日本」という趣旨を提言として申し上げましたが、そう書いたわずか数ヶ月後に政府の決断がくだされたことに、武者震いする思いです。

SIMフリー化は「国策である」

いっそのことBTO方式にすれば良いのでは?

小々、熱く語りすぎた気がするので、この中間報告からの流れを受けて、ユーザー主導の通信サービス・端末とはどんなものになるのか、私なりに考えてみました。

一つは端末の直販・カスタマイズ販売が出てくるのではないか?好きなメーカーの端末、好きな色、欲しい機能やアプリ(必要なものだけ入れて、必要ないものはいれない)、内蔵メモリ容量やバッテリー容量も値段を見ながら選べる、最後に好きなケース(デザインだったり機能だったり)も選んでカートに入れて注文。
これ、なにかに似ているなぁと思ったら15年位前からPCメーカーが行っているBTO(Build to order)方式と同じスタイルです。法人納入で収益を伸ばしたDELLやHP。個人向けノートPCとして一時代を築いたVaioもスペックやアクセサリーをカスタマイズして、自分好みの端末が買えるという体験ををユーザーに提供してきました。既にMotorolaではMoto-Xというカスタマイズ注文ができる端末を販売していますし、Googleも自社端末でその方向性を打ち出しています。国産スマホ勢も遅かれ早かれ、そうなってくる可能性が高いです。

二つ目は「料金のカスタマイズ化」です。具体的には、MVNOのSIMが行っているような「ターボスイッチ(OCN)」のように、必要なときだけ、ユーザーの意思で通信料を多く払ったり、いらなければ月ぎめのパケット容量内に抑えるか、超過した時だけ通信速度が遅くなったりする。ある意味においては「従量制料金」の一部復活と言ってもいいかもしれません。それが来ると思います。

もちろん、未成年者が知らずに高額な通信料を請求されたりしないように、フィルタリングやチャイルドロックのような安全対策とセットで実現すれば、問題ないと私は思っています。SIMというキーワードを核に、モバイル業界は今度もドラスティックに動いていきそうです。筆者としては目が話せません。

SIMというキーワードを核に、モバイル業界は今度もドラスティックに動いていきそうです

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池端 隆司
個人で1,000台以上の携帯端末を保有する弊社の携帯博士。株式会社ウェブレッジに2011年入社し、品質検証事業部の事業部長としてテストチームのマネージメントする他、「携帯電話研究家・品質コンサルタント」として活動。品質管理体制の構築・検証手法の提案、ニアショア・オフショア検証の体制構築提案を実施。そのほか国内、国外の携帯電話市場調査やアプリケーションの企画やアイディアの提案なども行う。現在は、ウェブレッジの社外アドバイザーとして活動中。 著書に「ディープでギークなスマホ情報―これがスマホ&モバイルの未来だ!?」 (技術評論社 2014年6月)がある。
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