シェア奪回を目指すASUSのスマホ新戦略|山根康宏のワールドモバイルレポート

台湾のPCメーカー、ASUSがこの春に発売した『Zenfone』の売れ行きが好調だ。先行販売されている台湾や中国では同社の予想を超えるヒットを記録しており、生産が追い付いてないほどだという。PC市場の縮小が続く中、ZenFoneは同社のスマートフォン市場でのプレゼンスを大きく高めるだろう。

低価格高スペック、デザインもよいZenFone

世界のPC市場はここ数年減少が続いている。特に個人市場ではスマートフォンやタブレットに利用者を奪われており、新興国では初めてインターネットに接続するユーザーの多くがスマートフォンを選んでいる。2014年に入りWindows XPのサポート切れから、ビジネス市場を中心にPC買い替え需要が高まっているが、それも一時的な現象だろう。現実的にPCメーカーは「脱・PC」を図るためここ数年タブレットやスマートフォンに活路を求めている。

ASUSも2009年にGPSやカーナビのGarminと提携したスマートフォン『nuvifone』を発表。その後はタブレット型のベースステーションにスマートフォンを合体できる分離式端末『PadFone』シリーズを市場に投入してきた。だがタブレットの低価格化も進む中で合体式のPadfoneは割高感が目立ってしまい、スマートフォン単体として見ても他社品と差別化しにくい製品だった。

SUSの顔ともいえるPadFoneだが商業的には苦戦している

ASUSの顔ともいえるPadFoneだが商業的には苦戦している

もはやスマートフォンは各社機能も横並びであり、iPhoneやGALAXYを超えるハイエンド製品を開発するのも難しくなっている。高性能製品では勝負は苦しいと判断した同社は思い切った戦略変更を行い、低価格端末へと方向転換を行った。しかもこの低価格端末は単純に販売数を増やすだけではなく、世界市場でのシェア拡大までも視野に入れているのだ。

そのASUSの低価格スマートフォンが『ZenFone』である。2014年4月15日から台湾で発売が始まり、その後中国などアジアを中心に販路を広げている。ZenFoneはインテルのAtom Z2580またはZ2560プロセッサを搭載、ディスプレイサイズは現在主流の5インチ、小型サイズを求めるユーザー向けの4インチ、そしてファブレット需要に応えた6インチと3つのラインを揃えている。価格は5インチの16GBモデルで約1万7000円と、他社品よりも低い値段に抑えられている。

ZenfoneはASUSの新戦略スマートフォン

ZenfoneはASUSの新戦略スマートフォン

安さだけではなく

Zenfoneは価格が安いだけではなく、本体の仕上がりも美しい。背面の電池カバーは指紋が付きにくく、テカリによる安っぽさもあまり感じられない。また本体正面下部の表面仕上げは光の当たり具合によって金属のように見えるカッティングがされている。価格が安くとも製品としての質感は非常に高いのだ。

実際に台湾の携帯電話販売店に行ってみるとZenfoneの展示コーナーにはいつも人だかりができている。ASUSの専門店でも最新のノートPCやタブレットコーナーよりZenfoneのディスプレイの周りに集まる来客のほうが多い。しかも若い女性や年配の男性など、老若男女を問わず幅広い層の消費者がZenfoneに注目しているのだ。これはノートPCを含むこれまでのASUSの製品にもなかった現象だろう。Zenfoneの台湾での販売台数は発売からわずか2週間で10万台を記録している。

台湾の展示会でも大人気のZenfone。女性からの注目も多い

台湾の展示会でも大人気のZenfone。女性からの注目も多い

Zenfoneはこの低価格&高品質を武器に世界中へ販路を広げる予定だ。安くて品質のいいスマートフォンとしては、最近話題の中国の小米(Xiaomi)の製品が有名で、中国国内ではAppleのiPhoneの販売台数を抜き去った。小米も東南アジアに販売先を広げているが、ASUSのCEO、沈振来氏は「小米には負けない」と自信を見せている。

なぜならASUSはすでにPCでグローバル市場での長い販売経験を持っており、各国にも強力な販路を築き上げている。日本で先日発売されたLTE搭載のタブレット『Fonepad 7 LTE』も既存のPCの販路を活用しながら販売先を広げている。小米はオンライン販売にも力を入れているが、ブランド力の無い市場で実物を消費者に見せることなく製品を認知してもらうことは難しいだろう。
一方ASUSはすでにPCを販売している世界中の販売店にZenfoneを置くだけでよいわけだ。しかも個人向けPCの販売が縮小する中、PC販売店にとってはASUSのスマートフォンの取り扱いは売上アップと集客効果が見込める。しかもスマートフォンの販売はケースやメモリなど周辺アクセサリの販売も期待できるのだ。

ケースなどアクセサリも豊富に用意される

ケースなどアクセサリも豊富に用意される

小米以外の中国メーカーも低価格・高品質なスマートフォンで世界市場への販売数拡大を目指している。ここ数年スマートフォン市場ですっかりプレゼンスを失っていた台湾のPCメーカーがこの市場に参入することで、業界の勢力図に大きな変化が起きるかもしれない。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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