無料通信分を他人に販売できる香港のサービス|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォン購入時、最近では機種変更よりも新規契約したほうが安上がりなことが多い。そのため1人でもう1回線を新たに契約する例も増えているようだ。1人で複数回線を所有している場合、無料で利用できる通話分やデータ利用分は翌月へ繰り越したり家族間で共有できるサービスを提供している通信事業者もある。だがあまり使わない月が続いたときなどは、繰り越しや共有しても無料利用分が余ってしまうことがある。そんな時にその余剰の利用分を他の利用者に個人が販売できるサービスを香港の通信事業者が開始した。

1GB単位で余ったデータ利用分を他の加入者に販売

香港の通信事業者、中国移動香港が提供しているのが自分の基本料金に含まれる無料データ利用分を他の加入者に販売できるサービス「2cm Data Exchange Platform」だ。販売者、購入者はどちらも同社の4Gスマートフォンプランの加入者に限られる。いつでも好きな時に自分の無料データ利用分をオンライン上で自由に販売できるのである。

データ量の販売は1GB単位。HK$15(約200円)からHK$60(約800)の間で自由に設定できる。一方購入者側は1GBあたり購入価格に加え、行政費としてHK$15を加算して払う必要がある。たとえばHK$15で1GBを購入した場合、HK$15+15=HK$30(約400円)の支払いが必要となる。なお清算は販売者側、購入者側どちらも翌月の請求分に適応される。

中国移動香港は中国大陸の中国移動の完全子会社

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中国移動香港の4Gスマートフォンプランは、無料データ利用分ごとに1GBプラン、5GBプラン、10GBプランの3タイプが提供されている。データ量の販売は1GB単位となるため、一番下の1GBプラン加入者がこのサービスを使うことは現実にはないだろう。とはいえ普段使わない契約だったり、長期契約で1-2ヶ月不在といったケースの時はその1GBをまるまる販売してもよいわけだ。また普段からスマートフォンを多用する人は念のため10GBプランなどに加入するだろうが、月の中旬になってそれほど使っていないことがわかれば余りそうな分を早めに売ってしまうこともできるわけだ。

一方購入者側の視点でこのサービスを見てみよう。4Gスマートフォンプランそれぞれの基本料金は1GBプランがHK$98/月(約1300円)、5GBプランがHK$198/月(約2600円)、10GBプランがHK$278/月(約3700円)となる。そして無料データ分を超過した場合、1GBプランはHK$30/0.5GB、5GBプランと10GBプランはHK$30/GBとなる。

すなわち、5GBプランと10GBプランに加入している場合は、1GBあたりHK$30を払えばそれぞれの無料利用分以上を利用できるのだ。この金額は、無料データ利用分を販売したい人の最低販売価格HK$15に行政費HK$15を加えたHK$30に等しい。すなわち5GBと10GBプランに加入している人が、あえて他の人から無料データ分を購入する必要はないわけだ。

それに対し1GBプラン加入者にはこのサービスは有用だ。1GBを超えるとHK$30/0.5GBの追加料金がかかるので、たとえば月間合計3GBを使うとなると、HK$30×4=HK$120(約1600円)の追加支払いが必要となるわけだ。これが他の加入者から1GBあたりHK$25で無料データ分を購入したとしても、HK$25+15×2=HK$80となり、HK$40(約500円)お得になるのである。

中国移動香港の4Gプラン。1GB加入者にとって本サービスはメリットが大きい

中国移動香港の4Gプラン。1GB加入者にとって本サービスはメリットが大きい

つまりこのサービスは、販売側は高容量の無料データプランに加入し利用分が余りそうな人、販売側はなるべく費用を抑えようと一番安い1GBプランに加入している人をターゲットにしている。売り側と買う側どちらにもメリットがあるため本サービスの利用者は毎月増えているという。

基本料金無料の例も。通信事業者にもメリットあり

中国移動香港のこのサービスの最大のメリットは、通信事業者とオプション契約を一切結ぶ必要がないことだ。家族契約や登録者登録といったものは不要で、データ量は誰にでも販売できるし、購入者側も誰からでも買うことができる。また売り出しのタイミング、購入のタイミングも24時間いつでも可能なので「月末なのに無料データ利用分が不足してしまう」ということもない。

また価格をある程度自由に設定できるのも興味深い試みだ。一般的に考えれば、購入者側としては誰もが最低価格となるHK$30/GBでの購入を望むだろう。ところが例えば月末が近づいてくると、データ利用分の足りない加入者が増え最低価格で売り出されるデータ分があっという間に売り切れてしまうこともあるだろう。そのような時にあえてHK$30/GBやHK$40/GBで売り出せばその料金でも購入者が現れるかもしれない。ちょっとしたオークション気分でデータ量の売買ができるわけだ。

単純計算だが、例えば10GBプラン加入者が自分の無料データ分8GBをHK$35/GBで販売できれば、その月の収益はHK$35×8=HK$280となる。これは本来の基本料金のHK$278より高く、毎月の実質支払額はほぼ無料になる。もしも8GBを1人に売るとするとその相手を見つけるのは大変だろうが、8人に1GBずつ売るのであれば簡単に販売できるだろう。

中国移動香港にとっては本来データ利用の超過分を支払ってくれるところを、他の加入者からその分を購入されてしまえば収益が減ってしまう。しかしその一方で、余った無料データ利用分をいつでも転売できるとなれば、あえて高い料金プランを選ぶ利用者も増えるだろう。また他の事業者に加入している利用者をMNPで移転させる時の謳い文句にもできそうだ。そしてなによりも高い料金プランへの加入はコンテンツ利用などを促進でき、オプション契約の付加価値サービスの加入を促すこともできる。

通信事業者の店舗が隣接することも珍しくない。香港の携帯電話市場は競争が激しい

通信事業者の店舗が隣接することも珍しくない。香港の携帯電話市場は競争が激しい

今のところ香港の他の通信事業者に追従する動きは出てきていないものの、各社の競争が激しいことから今後他社からも類似のサービスが出てくるかもしれない。通信料金の自由化だけではなく、加入者の無料利用分も自由に売買や移動が可能になれば、スマートフォンの利用もより活発化され、新たな使い方やサービスも生まれてくるのではないだろうか。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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