スマホシェア3位のファーウェイ、ブランド力向上が鍵に|山根康宏のワールドモバイルレポート

2013年の世界のスマートフォンシェアランキングで中国のHuawei(ファーウェイ)が初めてシェア3位になった。とはいえ3位グループは各社が数%の差でシェア争いを行う激戦区となっている。他社を引き離しシェア2位を伺いたいHuaweiが目指すもの、それはブランド力の向上だ。

スマートフォンラインナップは5種類、グローバルに販売

日本ではLTEルーターなどでおなじみのHuawei。データ端末では堂々の世界一のメーカーとなっているが、スマートフォンも年々販売数を増やしている。IDCやGartnerなど大手調査会社のレポートによると2013年のスマートフォン販売シェアは1位がSamsung、2位がApple、そして3位の座に入ったのはLGを抜き去ったHuaweiだった。今や欧米の先進国でもHuaweiのスマートフォンは普通に見かける製品となっているほどだ。

Huaweiがここまで販売数を伸ばせたのは製品ラインナップの明確化と低価品を増やしてきたからである。同社のスマートフォンは「Ascend」のブランド名を持ち、ハイスペックな「D」シリーズ、スタイリッシュな「P」シリーズ、大衆向けの「G」シリーズ、価格を抑えた若い世代向けの「Yシリーズ」の4つのラインに製品が区分されている。また2013年には大画面需要に応えた「Mate」シリーズも投入、さらには価格が安いだけではなくファッショナブルなデザインの「Honnor」シリーズも2014年に中国で販売が開始された。現時点の最新モデルは2014年5月に発表された「Ascend P7」となる。

5月7日に発表された最新モデルのAscend P7

5月7日に発表された最新モデルのAscend P7

これら複数のカテゴリに属する製品が1年間のうちでローテーションを組むように順次発売され、年間の販売モデル数はHTCやSonyを抜いている。上位モデルの「D」「P」シリーズの新製品はAppleやSamsungのように大々的な発表会も開催している。そして販売国ごとに投入するモデルも選別されており、新興国や途上国では「G」「Y」シリーズを強力にプロモーションする一方、先進国では「D」「P」シリーズを前面に出しつつ、プリペイド向けに「G」「Y」シリーズも販売するなど、各国の市場に応じた販売戦略を取っているのだ。アメリカにはLTE搭載機を増やし、日本には防水モデルを投入するなど機能面でのローカライズ化も行われている。

アジアで人気の大画面+フリップカバーというAscend Mate 2 4G

アジアで人気の大画面+フリップカバーというAscend Mate 2 4G

だが製品の数を増やしただけで販売数を伸ばすことは難しい。Huaweiのシェア拡大の最大の要因は自社ブランドを確立するという大きな賭けに成功したからだろう。同社のスマートフォンは通信事業者ブランドをつけたODM品が大半を占めていたが、2012年にそのODMから撤退。自社ブランドを付けた製品を各事業者に納入し、自らの販売戦略で新製品を次々に市場へ投入していった。その結果Huaweiブランドを消費者に浸透させることに成功し、販売数も増やしていったのである。

機能はすでに必要十分、ブランド力の引き上げが必須

ここまで順調にシェアを伸ばしてきたHuaweiも、これからさらに販売数を伸ばしていくためには他社との差別化が必要となる。とはいえスマートフォンの機能は各社横並びとなりつつあることから、機能での差別化は難しい。一方、スマートフォンの外観や使い勝手といったデザイン面ではまだまだ勝負のしどころはある。だがいくら美しい製品を作ったところで、そのメーカーが知られていない製品であれば消費者はなかなか手を出しにくい。

2014年5月にHuaweiが発表した「Ascend P7」はLTEスマートフォンとしては世界で最も薄い6.5ミリの厚みに、7層の素材を貼り合わせた表面処理、そして曲面を多用した美しいデザインの製品だ。Huaweiの「Pシリーズ」は2012年の初代モデルから4機種となるが、いずれも女性などを中心に人気の製品になっている。HuaweiのコンシューマービジネスグループのCEO、リチャード・ユー氏によると2013年の同社のブランド認知度は52%となり、2012年の25%から大きく向上した。これは2013年に発売された前モデルの「Ascend P6」の高い評価が大きく影響している。

ブランド認知度は2013年に52%まで高まった

ブランド認知度は2013年に52%まで高まった

また今や低価格スマートフォンは中国の各メーカーから様々な製品が毎月のように発売されている。先進国ではHuaweiの低価格スマートフォンはプリペイド製品として人気だが、母国である中国国内ではもはや珍しい存在ではなくなっている。低価格製品は販売数量を稼ぐことができるものの、今後競争は厳しくなっていくだろう。同じ価格の製品であれば、有名なもの、安心できるものに消費者は引き付けられる。ブランド力の引き上げは上位製品だけではなく、低価格品にも有効なのである。

若年層へのブランド力向上を目指すHonnorシリーズ

若年層へのブランド力向上を目指すHonnorシリーズ

2014年に中国で販売を開始した「Honnor」も、若い世代向けにブランド価値を高める戦略で投入された製品だ。「安い製品だから見た目はまぁまぁ」ではなく、「安いけれどおしゃれ」を目指した製品なのである。Huaweiはネットワークインフラも手掛け、子会社でスマートフォンの心臓部ともいえるチップセットの開発も手掛けている。技術力では大手メーカーに匹敵する力をつけているだけに、これから販売数をさらに伸ばしていくためにはブランド力の引き上げが大きな鍵となっていくだろう。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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