地域事情も大きいスマホ普及動向|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

このほど、 POSTCO Lab.にコラムを寄稿させていただくことになりました、木暮祐一と申します。これまで携帯電話サービスの黎明期から、端末やサービス、業界動向などをウォッチしてきました。マスコミ業界、モバイルコンテンツ業界を経て、現在は大学にて教鞭に立ち ICT(とくにモバイル)の利活用を指南し、また学生とともにモバイル機器の社会応用を色々と模索しているところです。

私の担当コラムでは、スマートフォン向けサービスの企画者、開発者の皆様にも役立つような、モバイル業界の動向やユーザー視点からの利用傾向、最新のサービスや技術のトピックスを順次発信して行こうと考えています。

まず第 1回目となる今回は、スマートフォン利活用事情の地域性に着目してみたいと思います。

地域によるスマートフォン普及率の違いに愕然

スマートフォン市場規模を示すデータとして各所で頻繁に引用されるのが MM総研の「スマートフォン市場規模の推移・予測」ですが、最新のデータが 4月23 日に公表されました。これを見ると、 2014年3 月末時点でのスマートフォン契約比率は 50%をわずかに切ったところ。すなわちガラケーことフィーチャーフォンがまだ契約の半分以上を占めているというのです。実際に、皆さんの周りのモバイル機器利用状況はいかがですか? おそらく、そんなにスマートフォン比率が低いなんて信じられないと驚かれることではないでしょうか。

MM総研「スマートフォン市場規模の推移・予測( 2014年4 月)

MM総研「スマートフォン市場規模の推移・予測( 2014年4 月)

確かに、東京で地下鉄などの公共交通機関を利用していると、車内の乗客のほとんどの方がスマートフォンの画面に夢中になられているはず。フィーチャーフォンなど使っている方はまず見かけないのではないでしょうか。それなにのなぜスマホ比率が50% 未満というのはどういうこと ?!

じつは、周りがみんなスマートフォンを使っているという状況は、大都市圏だけの話なのです。筆者は東京生まれ、東京育ちながら、昨年春に青森に引越し、地方都市のスマートフォン普及動向に愕然とさせられたのでした。

総務省 平成25 年版『情報通信白書』に収録されている「平成 24年通信利用動向調査」によると、平成 24年末時点での都道府県別インターネット利用率(個人)におけるスマートフォンからのアクセス率は秋田県、岩手県、青森県など北東北地区での利用率が著しく低いことに気付かれると思います。それ以外の手段でもインターネットの活用が決して十分とはいえないのですが、他県のデータも含め、大都市圏とそれ以外の県とでは、スマートフォンの利用率に差があることがお分かり頂けるでしょう。

総務省 平成25 年版「情報通信白書」より

総務省 平成25 年版「情報通信白書」より

なぜ、地方でスマートフォン普及が伸び悩む?

実際に、青森県の人たちがどのようなモバイル機器を使っているのかを街中で観察していると、確かに多くの方が未だにフィーチャーフォンなのです。その理由は簡単で、地方では大都市圏とは異なり鉄道を使うというシチュエーションがほとんどありません。通勤や通学は、大半の方が自家用車での移動ということになります。となると、自宅や勤務先、通学先等にはブロードバンドと PCが整えられているので、移動中にインターネットを活用する必要性が少ないのです。したがって、音声通話と最小限のメール程度ができる端末があれば十分という方が、まだまだ多いのでしょう。大半のユーザーがスマートフォンを使っている大都市圏に対し、まだまだ地方ではスマートフォンの普及が十分に進んでおらず、そのため日本全体でスマートフォン普及率を均すと 50%に満たないということになるのです。

とはいえ、それでもこのわずか数年の間に、地方においてもスマートフォンの普及率上昇に勢いがついて来たように感じます。とくに若者たちのスマートフォン利用は急激に進んでいる感じです。 3年前に筆者が勤務する青森公立大学にて(当時は非常勤で講義を担当)学生たちのモバイル機器利用状況を調査したところ、スマートフォンを所持していた学生はざっと 2割ぐらいでした。ところが昨年や今年の新入学生はほぼ 100%のスマートフォン所持率です。 3年前に調査した学生・卒業生たちも、現在は 7〜8 割がスマートフォンに買い替えている様子です。

では、 1年生たちがなぜスマートフォンを必要としているのかというと、そこには「 LINE」という強力なアプリケーションの存在が浮かび上がります。 1年生たちのコミュニケーション手段はもっぱら「 LINE」。LINE にいくつもグループを作り、そこでメッセージが飛び交い、コミュニケーションしているのです。一方で、大学入学時にまだフィーチャーフォン世代であった今春の卒業生たちは、スマートフォンへの買い替えが進んだとはいえ、コミュニケーションの手段は「ケータイメール」がまだ欠かせません。ところが 1年生はケータイメールよりも LINE。ケータイメールアドレスはおろか、下手をすると友達同士で電話番号さえ知らないなんてことも。電話番号を知らずとも、 LINEでつながっていればそれで十分なのです。いざとなれば LINEで音声通話もできますので。このため場合によっては 1年生と4 年生でコミュニケーションが取れないなどという困ったケースも見られました。たった数年の生まれの違いでも、モバイルの利活用には大きなジェネレーションギャップが存在するんですね、驚きです。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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