MVNOブレイク!背景に潜む、SIMフリー版「失われた20年」|池端隆司のモバイルジャンクション

MVNOブレイク!背景に潜む、SIMフリー版「失われた20年|池端隆司のモバイルジャンクション
世界から遅れること20年、日本でもようやく自分が使いたい端末を通信キャリアの縛りなく選ぶことができる「SIMフリー」の時代がやってきました。20年前というともちろん現代のようなスマホではなく、その後フィーチャーフォンと呼ばれるセルラーフォンの頃。i-modeでドコモが絶好調でしたし、ケータイの通信料も高くて学生や若者でPHSを持っている人が多かった頃。先日大きなニュースを提供したドワンゴさんが、着メロの配信でブレイクする以前が20 年前のモバイル状況でした。

総務省・通信キャリアも歓迎する、MVNO

今年の正月に「5000円スマホがコンビニやスーパーで買えるようになる」という新聞記事を見ました。イオンなどの大手流通界隈で格安SIMと端末のセット販売が展開する公算での未来予測記事でした。ノリとしては、プリペイド携帯があったのと同じだなと、その時は思っていたのですが、蓋を開けてみたら、今春よりイオンで月額2980円、端末はNexus4と一番安価なSIMという組み合わせで、私の予想よりも遥かに速く、安価なスマホの販売がスタートしています。

このトレンドに貢献するのはMVNO(仮想移動体通信事業者 )。日本通信、イーモバイル、DTIといった自社で基地局をもたない、接続サービスだけを提供する会社のことです。これらの事業者が販売するSIMは、一旦MVNOを提供する会社が3大キャリアから買い上げた番号と帯域に独自のサービス(決まった容量までなら月額いくら…等)をつけて再販する「帯域貸し」と呼ばれるビジネスモデルです。最近では人気の声優さんの声による留守電サービス、という特典付きのSIMも売っているようです。

総務省の「MVNO推進」を意図した通達以降、ソフトバンクやauもMVNO業者にLTEなどの帯域を開放する方向で動き始めています。これまでは、ドコモのFOMAハイスピード網を利用したMVNOが大半でしたが、今後はもっと事業者やサービスが増えていきます。格安SIMの卸元であるドコモをはじめとした3大キャリア側としてみれば、自社で宣伝や営業をかけずにパケット料金を稼ぐことができます。前回のコラムでご紹介した、海外からの旅行者、ビジネスマンなどの「一見さん」がすぐにスマホやタブレットを使いたいのなら、MVNOのSIMを買うほうが断然便利です。

総務省・通信キャリアも歓迎する、MVNO

面倒だから機種変後もキャリアはそのまま・・・失われた20年の根拠

20年遅れ…と小々刺激的な書き方をしていますが、私の見方を述べます。
日本の携帯ユーザーはこれまで携帯電話に関する情報、もう少し噛み砕くと買って使えるようになるまでの手順を、ドコモの提供してきたサービスベースで慣れ親しんでました。「SIMカード」は電話会社なり量販店さんが用意してくれるもので、自分では買えないものという意識を刷り込まれてしまったと思っています。

これが海外に行くと、電話機は「家電」、SIMカードは「電話番号」でそれぞれ自分で買う。電話機は電気屋さんで買い、電話番号は電話屋さんで買うという文化があったので、アクセスポイントの設定をしてインターネットにつなげるといったことにスムーズに適用することができました。前回書いた空港内のSIM自販機はもちろんのこと、スーパーやコンビニ、露天商で格安SIMが売っていて買ってすぐに使えるのが当たり前。フィーチャーフォン時代からデザインが気に入ってる携帯があったら買って、好きなSIMを挿して使える。買い換えると番号が変わる、キャリアも変わるという「日本式」は世界から見ると、とても奇妙な縛りだった訳です。

3大キャリアがユーザーの囲い込みと他キャリアへの流出を防ぐ防壁(ユーザーにとっては障壁ですが…)の役目を果たしていたのがSIMロックであり、MNP以前の番号変更であったり、魅力的な端末であったり一部のおサイフケータイ(iD)機能でした。

オールSIMフリー化で、ケータイが嗜好品化する日

「この会社でしか使えないサービス・機種=そこでしか体験できないこと」というのは競合との差別化という意味では商売の鉄則かもしれません。しかしながら、日本のモバイル業界はそれをやり過ぎたと、私は思っています。その結果ユーザー側の利便性や選択の自由をかなり制限してきた、しかもその事を未だに知らない人が多い。それこそがモバイル業界の「失われた20年」と私が言っている理由です。携帯の機種変の話をしていると、「ドコモの~の色がすごくいいんだけど、キャリア変えるのが面倒なんだよね」という理由で購入を躊躇しているという話、友人知人周りで聞いたことありませんか?それこそが囲い込み施策の産物だったのです。

私がMVNOに期待しているのは通信料金の低価格化だけでなく、端末とキャリアの縛りが完全になくなることで、デザインや色・形がユニークだったり、機能を特化したSIMフリー端末が出現するのではないかという点です。ジャストアイデアですが…ふなっしーの形したSIMフリーのスマホとかあったら楽しいと思いませんか?

ここ最近コンビニエンスストアでもMVNOのSIMが買えるのですが…実際にやってみると、購入後専用サイトで申し込みをして、SIMカード実物が届くのは数日先。現状プリペイドSIMでも、入手の際は防犯上身分の確認や入手までの手順や日数がかかるようです。日本にもロンドンやマカオ並に簡単な格安SIMの自販機を!

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池端 隆司
個人で1,000台以上の携帯端末を保有する弊社の携帯博士。株式会社ウェブレッジに2011年入社し、品質検証事業部の事業部長としてテストチームのマネージメントする他、「携帯電話研究家・品質コンサルタント」として活動。品質管理体制の構築・検証手法の提案、ニアショア・オフショア検証の体制構築提案を実施。そのほか国内、国外の携帯電話市場調査やアプリケーションの企画やアイディアの提案なども行う。 著書に「ディープでギークなスマホ情報―これがスマホ&モバイルの未来だ!?」 (技術評論社 2014年6月)がある。
IoT品質検証

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