4G時代が本格到来した中国 | 山根康宏のワールドモバイルレポート

中国の通信事業者が相次いで4Gサービスを開始した。2013年12月に中国移動がTD-LTE方式のサービスを開始したのを皮切りに、年明け2014年2月には中国電信、そして3月には中国聯通と3つの通信事業者全社の4Gサービスが出揃った。世界最大の携帯電話加入者数を誇る中国市場は本格的な4G時代を迎えようとしている。

TD-LTE方式の本格普及を目指す中国政府

中国政府は2013年末に各社へTD-LTE方式の免許を交付し、中国移動、中国電信、中国聯通の3社がそれに基づき相次いで同方式によるサービスを開始した。世界の4Gサービスは多くの国でFDD-LTE方式が採用されているが、中国政府としてはTD-LTE方式の普及に力を入れている。これは国内のTD-LTE産業のサプライチェーンを育て上げることで、国内企業の国際進出を目論んでいるためだ。

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3事業者がLTEサービスを開始した中国

なお加入者シェア数で2位の中国聯通と3位の中国電信はそれぞれ3G方式としてW-CDMA、CDMA2000という国際互換方式を採用しているため、この2社にはFDD-LTEの免許も追って交付されると見られている。そもそも両社はFDD-LTEでの4Gサービスの開始を希望していたのだ。例えば中国聯通はW-CDMAとFDD-LTE方式を併用すれば、すでに日本や海外で広く発売されている最新のスマートフォンの投入も可能になる。だがTD-LTEとW-CDMAに対応したスマートフォンはまだ数が少なく、また中国向け製品となることからコストも上がってしまう。

それでも中国政府はTD-LTEの普及を第一として3社にまずはTD-LTEの免許のみを交付したのである。この背景には2008年から2009年にかけてサービス開始が相次いだ3Gサービスで、中国独自のTD-SCDMA方式を中国移動1社のみに与えた結果、同方式の普及に手間取ってしまったという過去の反省がある。4Gではその失敗を活かし、TD-LTE方式の採用を3社に強制したとも言える。

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TD-LTE方式の国内普及が最優先される

このように中国政府が推進を図るTD-LTE(TDD=Time Division Duplex、時分割多重)方式は、日本ではソフトバンクモバイルが互換となるAXGP方式を提供、アメリカの一部やインドなどで採用する事業者が増えている。とはいえ世界の主流はFDD-LTE(Frequency Division Duplex、周波数分割多重)方式であり、日本でもドコモを始めとする各社が採用、アメリカ、韓国、アジアなど世界中で採用されている。

中国の動きを見ると、今後はTD-LTEとFDD-LTEという2つのLTE規格が世界各国市場を2分化しているようにも見える。だが実はどちらの方式も基幹部分の技術は同じものを利用しており、ネットワーク設備側では両方式へ対応したものも多い。またTD-LTEの業界団体であるGTI(Global TD-LTE Initiative)も両LTE方式は相反するものではないという立場をとっており、互いの優位点を相互に補完しあうという調和の道を取り始めている。つまりTD-LTE、FDD-LTEのどちらの方式が優れているとか、どちらが主流になるのかといった心配を消費者がする必要はなくなっていく。数年後にはTD-LTE、FDD-LTEの区別なく4Gサービスが利用されているだろう。

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業界団体のGTIも、TDとFDD両方式の融合を進める

中国メーカーの国外進出が加速

中国で最もTD-LTEに力を入れている通信事業者はシェア1位の中国移動だ。加入者数7億6000万と世界最大の事業者である同社は、TD-LTE普及のために導入する端末を「脱・国内規格」のものを進める予定だ。同社の3Gは世界で同社のみが採用するTD-SCDMAであることは前述した通りだが、4G開始に当たり各端末メーカーには「5モード13バンド(あるいは11バンド)」の製品の開発を依頼している。この5モードとは中国移動が採用するTD-LTE、TD-SCDMAに加え、FDD-LTE、W-CDMAさらには2GのGSMを加えた5つの通信方式を指す。5モード対応端末は中国移動だけではなく世界中の通信事業者の通信回線でもローミング利用が可能な「グローバル端末」となるわけだ。

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TD-LTEに加え他の通信方式に対応するマルチモードのチップセット開発も進んでいる

そして中国移動向けに5モード対応のスマートフォンを開発した中国メーカーは、それを仕様変更して海外向けにも販売することが可能になるだろう。例えばTD-LTEとTD-SCDMAを非対応としFDD-LTE/W-CDMA/GSM対応として、アジアや日本などに売り込むこともできる。実際に中国のOPPOが3月19日に発表したフラッグシップスマートフォン「Find 7」は、中国向けが5モード対応であるのに対し、アメリカ向けやアジア向けとしてFDD-LTEのみ対応、あるいはW-CDMAのみ対応の製品も同時に発表されている。

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中国メーカーOPPOが発表したばかりのFind 7はグローバル展開も行われる

世界各国でLTEの普及が進む中で、各通信事業者は安価なLTEスマートフォンを求めているものの、安価な製品でも価格はまだ日本円で2万円前後のものが多い(注:SIMフリーの単体価格)。今後中国メーカーが1万円台前半のLTE端末を続々と開発すれば、中国国内だけではなく国外市場にも販路は大きく広がるだろう。中国の4G時代の到来は国際市場にも大きなインパクトを与えるものになるだろう。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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