電子ペーパー搭載のデュアル画面スマートフォンが発売 | 山根康宏のワールドモバイルレポート

ロシアのYota Deviceからデュアルディスプレイのスマートフォン「YotaPhone」がヨーロッパで発売になった。表側には普通のスマートフォン同様液晶ディスプレイを搭載しているが、背面側にも電子ペーパー製のディスプレイを搭載した両画面スマートフォンである。世界初のデュアルディスプレイスマートフォンの利点はどこにあるのだろうか。

0101 Yota DevicesのYotaPhone

「YotaPhone」の基本スペックは1.7GHzのデュアルコアCPU、メインディスプレイが4.3インチ1280×720ピクセル液晶、OSはAndroid 4.2を採用し通信方式はLTEにも対応する。今となってはミッドレンジクラスの製品ではあるものの、背面に同じく4.3インチ640×360ピクセルの電子ペーパーを採用しているのが大きな特徴だ。その分価格は449ユーロ(約7万1000円)と他社のハイエンドスマートフォン並に高いものの、異なる2種類のディスプレイの特性を生かすことでYotaPhoneはその真価を発揮する。

電子ペーパー採用の最大の利点は消費電力の低減化だ。電子書籍を読んだり地図を表示しておくといった静止画面の表示時でも、バックライトを利用する液晶は電力を消費する。これに対して電子ペーパーは一度表示を行えばあとは電気を切ってもその表示状態が維持される。Yota Devicesによると電子ペーパー側だけを使った場合、YotaPhoneは約50時間連続利用できるという。すべてを電子ペーパー側だけで利用するのは現実的ではないだろうが、両面をうまく使い分ければこれまでのスマートフォンよりも動作時間を大きく伸ばすことができるだろう。

0102 背面の電子ペーパーが最大の特徴

YotaPhoneは電子ペーパーへの表示を簡単に行えるようにユーザーインターフェースも独特のものを装備している。液晶側でディスプレイの上から下へ指2本でスワイプすると、そのままスクリーンキャプチャが撮られ電子ペーパー側に表示ができる。表示しておきたい画面やメモしておきたい画面をキャプチャしておくのもよい。航空券のEチケットやコンサートの入場券を表示しておく際も電子ペーパー側に表示させておけば、チケットを見せる際に端末のロックを解除する必要もない。

もちろん電子ブックや電子コミックを読む際も電子ペーパー側を使えば目にやさしく読みやすいだろう。応用としてお気に入りのイラストや模様を表示すれば、YotaPhoneの外観を自分の好きなようにカスタマイズできる。なおYotaPhoneには電子ペーパー側で利用できる時計や天気アプリも搭載されている。折り畳みスタイルの携帯電話のサブディスプレイのように、ちょっとした情報を常時表示しておくという使い方もできそうだ。

0103 電子ペーパーならではの使い方の例

YotaPhoneのようなデュアルディスプレイ端末はまだ他に出てきていないものの、似たようなコンセプトの製品はすでに開発されている。例えばAlcatelの「One Touch Hero」は、フリップ式のカバーを本体と接点を持ったマグネットで接続し、機能性を持たせたカバーを発売している。現在発売されているのは「Qi充電対応カバー」と「LEDライト内蔵カバー」。LTDライト内蔵カバーは着信時などにフリップカバー内のライトが光り着信を通達してくれる。

Alcatelはこの機能性カバーの拡張として、電子ペーパー内蔵カバーの試作品を発表している。カバーを閉じれば液晶側は電源がOFFとなり、カバー表面の電子ペーパーを使って電子ブックを読むといったこともできる。面白いのはカバー部分だけをはずしても電子ペーパーの表示は保持されたままだ。カバーをあたかもチケットのように使うといった新しい利用方法も考えられそうだ。

0104 Alcatelはフリップカバーを電子ペーパー化

一方、iPhoneなどに装着するカバーに電子ペーパーを搭載した製品を出す動きも出てきている。モノクロ画面とはいえスマートフォンに常に何かを表示しておきたい、という使い道として低消費電力な電子ペーパーの利用はこれからこのような形で増えていくかもしれない。今後「デュアル画面」「電子ペーパー」を大きく生かせるアプリやサービスが出てくれば、電子化ペーパー搭載カバーの普及に加速がつくだろう。

0105 電子ペーパー搭載iPhoneカバーのプロトタイプ

YotaPhoneの発表は2013年2月で、発売まで約1年という長い時間がかかってしまった。Yota Devicesによると2014年中には新型モデルを出すとのことで、CPUやディスプレイサイズなどのスペックアップや高すぎる価格の低減化が図られるだろう。また電子ペーパー側をより使いやすく見やすくする改善も必要だ。そのためにはより高解像度でサイズの大きい電子ペーパーの搭載が望まれる。なお可能性は薄いものの、業界大手の「E Ink Holdings」が製品化している4096色表示可能な「E Ink Triton 2」を搭載すれば、電子ペーパー側で利用できるアプリやサービスの幅が広がりYotaPhoneへの注目度もより高まるだろう。なおE Ink Triton 2搭載のタブレット端末はすでに発売されている。

0106 カラー電子ペーパーを搭載したタブレット

異なる2つのディスプレイを搭載したYotaPhoneはスマートフォンの新しい使い方を提唱していけるだろうか?会社や航空券などのペーパーレス化や電子ブック市場の成長が進めば、スマートフォンへの電子ペーパー搭載が後押しされていくかもしれない。発売されたばかりのYotaPhoneがどれくらい売れ、そして後継機種はどのような製品が出てくるのかに注目したい。

山根先生が書いたおすすめ記事

東京オリンピック時の参考にしたい、シンガポールの無料WiFiサービス
GALAXY S5に見る2014年スマホの新トレンド
これからのスマホカメラのトレンドは「自分撮り」
無料通信分を他人に販売できる香港のサービス
スマートフォンと連携できる腕時計は流行になるか?

その他の山根先生の記事一覧:山根康宏のワールドモバイルレポート
モバイル研究家の記事一覧 :モバイル研究家コラム

The following two tabs change content below.
山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

関連記事

MWC2015で発表されたGalaxy S6とS6 edge

Samsungの反撃体制がようやく整ったMWC2015|山根康宏のワールドモバイルレポート

世界最大のモバイル関連イベントである「Mobile World Congress 2015(MWC2

記事を読む

就寝前でもスマホが手放せない人はJINS SCREEN NIGHT USEを掛けるべし

JINSが寝不足解消メガネ?!を発売|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

スマホを目覚まし代わりに使っている方も少なくないでしょう。筆者もその一人ですが、枕元にスマホを置いて

記事を読む

香港を中心に世界に流通する中古スマホ(概念図) 出典:オークネット総合研究所

中古スマホはどこへ行く?!|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

MM総研によると、2014年度にわが国で出荷されたスマホは2,748万台となっているそうです。もはや

記事を読む

WR170602_02

VR空間で細かい操作を可能にできる、新たなハンドコントローラーが登場|山根康宏のワールドモバイルレポート

ゲームやエンターテイメント用途から、教育などへと活用が広がるVR(バーチャルリアリティー)。だが大

記事を読む

透明度を下げれば発電効率は上がる。用途によっては低透過率のパネルでも十分だろう

スマホの電池切れの心配が無くなる、ディスプレイで充電できるWysips Crystalに期待|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンやスマートウォッチの電池切れは頭の痛い問題だ。スマートフォンの電池を長持ちさせるための

記事を読む

(図1)改正労働安全衛生法の改正内容のうち、ストレスチェック制度創設に関する概要(厚生労働省公表資料より)

このところヘルスケアIoTが注目される理由|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

いうまでもないことですが、スマートフォンはアプリマーケットにある膨大なアプリを上手に利用することで、

記事を読む

初参入ながら一瞬で完売となったLUNA

もはや「格安」ではない韓国TGのSIMフリースマホ|山根康宏のワールドモバイルレポート

日本でも通信キャリアを通さず購入できるSIMフリーのスマートフォンの種類が増えている。ASUSのZe

記事を読む

161002_01

スマホよりも面白い!?持ち運びできるモバイルPCの世界が熱くなってきた|山根康宏のワールドモバイルレポート

アップルのiPhone 7やグーグルの新型スマートフォン「Pixel」シリーズが登場しているものの、

記事を読む

日本メーカーからもWindows 10スマートフォンが登場(MADOSMA)

Windows 10スマートフォン登場で消える、第三のスマホOS|山根康宏のワールドモバイルレポート

「第3のスマートフォンOS」合戦が盛り上がったのはまだ1年ちょっと前のこと。GoogleやApple

記事を読む

01

およそ10年のスパンで繰り返されるケータイ端末の潮流|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

先日、携帯電話の歴史を説明する展示をしたいという相談を受け、ケータイ端末を260台ほどお貸出ししまし

記事を読む

  • Facebook
  • Twitter
  • Google+
  • はてなブックマーク
  • RSS
  • Feedly
PAGE TOP ↑