スマホの画面は「真の全画面」に、新興メーカーがノッチを廃止|山根康宏のワールドモバイルレポート

2017年9月に発表された「iPhone X」以降、多くのスマートフォンメーカーがノッチ付きディスプレイの採用に踏み切った。ノッチとはディスプレイ上部の欠き取り部分のこと。今では誰もがiPhoneの画面上部を見ても違和感を覚えないだろうが、登場した当初は賛否両論が巻き上がった。しかし今やノッチの無いディスプレイのほうがマイナーと言わんばかりの存在となっている。グーグルもアプリの開発指標に「ノッチは上下1つずつ」と、ノッチの存在を公式なものとしている。

ところが2018年後半になってからノッチを否定するかのように、ノッチの無い「全画面」スマートフォンが次々と登場している。

ディスプレイにノッチの無い完全「全画面」スマホ、VivoのNEX

ディスプレイにノッチの無い完全「全画面」スマホ、VivoのNEX

そもそもノッチはアップルがiPhoneの指紋認証を廃止し、顔認証に一本化する際にセンサーを搭載するためにやむなくフロントカメラの横に搭載し、その結果ディスプレイの一部を欠き取ることになったものだ。なぜ従来のようにカメラ部分をディスプレイの上にもっていかなかったのかといえば、それはディスプレイの一部に埋め込めば電源オフの際にフロント面が「全画面ディスプレイ」のように美しく見えるからだろう。またディスプレイの最上部はメニューや通知を表示する領域であり、この部分の一部をカメラやセンサーとしても実用上は問題ない。アップルの目の付け所は優れていたのだ。

その後は顔認証センサーを搭載しないにも関わらず、あえてノッチを作りフロントカメラを搭載するスマートフォンが増えていった。iPhone Xの登場直前にはAndroidの父と呼ばれた元グーグルのアンディ・ルービン氏が立ち上げた「Essential Phone」がディスプレイ上部中央に丸いノッチを搭載しており、シャープの「AQUOS R Compact」も同様のデザインを採用。しかし他社はこぞってiPhone型の横に長い形状のノッチを採用していった。そして各社ともにそれを「全画面」とアピールしている。しかし電源を入れてみれば、これを「全画面」と呼ぶにのは疑問が残る。

スマートフォンで世界シェア上位の常連となった中国のOPPOとVivoも2017年後半から相次いでノッチディスプレイを採用し、この流れは完全にトレンドとなった。ところがこの2社は相次いでノッチレスなスマートフォンを発表。どちらもカメラを電動で収納するという凝ったギミックを採用した。このうちOPPOの「FIND X」は日本でも発売。カメラ部分どころか本体上部の全体をモーターで出し入れする機構で世間を驚かせている。

スマホ本体の上部が電動で上下するOPPOのFIND X

スマホ本体の上部が電動で上下するOPPOのFIND X

モーター駆動となるとコストや精度、そして耐久性が心配だ。ならばとこの2社はカメラ回りのノッチ部分を最小限にした「水滴型」と呼ばれるディスプレイを採用したスマートフォンも投入している。ディスプレイ表示を遮る部分が少なく、これなら「全画面」と呼んでも
よいかもしれない。ノッチが登場してからわずか1年の間に、ディスプレイとフロントカメラのデザインは大きく変化しているのだ。

結局ノッチの有無の是非はユーザーが「気になるか、気にならないか」の議論だろう。しかし写真や動画を全画面表示するとなると、ノッチはないほうが美しい。そのため各社はコストをかけられる上位モデルに完全ノッチレスディスプレイの採用を搭載し、ユーザーの評価を得ようとしている。

水滴型ノッチのOPPO R17

水滴型ノッチのOPPO R17

OPPOとVivoの電動式によるカメラ収納スタイルはそう簡単に設計できるものではない。そこでほかのメーカーは手動によるカメラの上下稼働機構を採用したモデルを開発した。シャオミの「Mi Mix 3」は横から見ると薄いスマートフォンを2枚張り合わせたような形状になっており、指先で背面を上にスライドさせるとフロントカメラが出てくる。この機構ならば故障の心配は電動式より少なく、設計もしやすそうだ。同様の製品はファーウェイが「honor Magic 2」として採用している。

そして新興メーカーのJGWはさらに簡素な機構を生み出した。フロントカメラ部分のみが背面からばねで飛び出す方式で、収納時はカメラを指先で押せばよい。指先より小さいパーツが動くだけなので機構は簡単で故障もしにくそうだ。ちなみに前述したVivoは同様の機構だがこの小さいカメラがモーターで上下する。

一方では、ノッチを搭載しながらその表示をOFFにできるスマートフォンも増えている。つまりその意味は「ノッチに必然性がない」ということだろう。アップルに合わせたデザインにしたものの、ユーザーにメリットがなければノッチはただの黒い画面の欠き取りにしかならない。iPhoneと同じデザインにすればいいだろう、という考えだけではユーザーからの評価は得られないのだ。

フロントカメラ部分だけが背面からばねで動くJWDのスマートフォン

フロントカメラ部分だけが背面からばねで動くJWDのスマートフォン

さてノッチの無いディスプレイにはどれくらいのメリットがあるのだろう。実際に各社の製品を見てみると、スマートフォンの画面全体に広がる写真や動画は美しい。一方SNSなど従来のアプリを起動すれば最上部にメニュー画面が現れるため、ノッチの有無はあまり気にならない。ゲームや映像などのコンテンツ利用にはノッチはないほうがいいだろうが、検索やショッピング、SNSなどは今のユーザーインターフェースが変わらなければノッチレスを十分に生かしきれない。

ではiPhoneはどうだろうか?おそらく今後数年以内にアップルもノッチレスディスプレイの採用は考えているだろう。アップルとしては、まず顔認証を確実に普及させるためにフロントカメラ回りにセンサーを配置させ、その技術を確立するためにノッチディスプレイを採用した。しかし今後センサーの小型化や集約化、そしてディスプレイ埋め込み型カメラなどが開発されればノッチ無しディスプレイを採用する可能性は高い。ノッチはあくまでもFace IDのためであり、ノッチデザインが最初にありき、ではないのだ。

iPhoneのノッチには顔認証という必然性がある

iPhoneのノッチには顔認証という必然性がある

ノッチの存在が気にならない人は多い。だが今後ノッチレスディスプレイが増えていけば、ノッチの無いスマートフォンに興味を覚えるユーザーも増えるだろう。そしてディスプレイメーカーは少しでも高い価格でディスプレイをスマートフォンメーカーに販売すべく、新技術の開発を進めているはずだ。数年もすれば「ノッチ、あったね」なんて時代になっているかもしれない。スマートフォンのディスプレイの進化はまだまだ続くのだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
IoT品質検証

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