折り曲げ可能なスマホの実現は近い?IFA2018で「曲がるディスプレイ」を見た│山根康宏のワールドモバイルレポート

曲がるディスプレイ

サムスンの「曲げられるスマートフォン」が年内にも登場といううわさでもちきりになっている。ディスプレイメーカーでもあるサムスンはこれまでにも角を丸めたエッジディスプレイを開発するなど、スマートフォンの世界に新風を吹き込んできた。今度はスマートフォン本体を曲げることができるという、想像もつかない製品を市場に投入するというのだ。

ちなみに曲がったディスプレイの採用もサムスンが世界初で「Galaxy Round」を2013年10月に発売している。だがこれはLGが発売を早々にアナウンスしていた曲面ディスプレイスマートフォン「G Flex」に先駆けて投入したモデルで、「世界初」の名を得るために出したのではないかともいわれている。

さてスマートフォンを「曲げる」ためには基板設計の大幅な変更など、簡単にできるものではない。前述のG Flexは実は数ミリ程度なら「たわむ」構造だったが、曲げられるわけではなかった。二つ折りにしたりくるくる丸められる、そんなディスプレイの実現は素人目にも簡単ではないことは明白だろう。

IFA2018で見かけた曲げられるディスプレイ

IFA2018で見かけた曲げられるディスプレイ

ところが2018年9月にドイツ・ベルリンで開催された「IFA2018」の会場には、なんと折り曲げできるスマートフォンが展示されていたのである。実は大きさは腕時計サイズで、一般的に思い浮かぶ形状のスマートフォンではないものの、手首に巻き付けて使える「曲がる」ディスプレイを採用しているのだ。

Nubiaが発表した曲がるスマートフォン

Nubiaが発表した曲がるスマートフォン

この曲がるディスプレイ採用スマートフォンを展示したのはNubia(ヌビア)。もともとスマートフォンやインフラを手掛けるZTEの子会社で、カメラ機能を強化したスマートフォンを手掛けているメーカーである。しかし最近は各社のカメラ性能が高まっていることから、Nubiaのカメラ機能もそれほど目立つものではなくなっている。そこでNubiaが考え出したのが、世界初の「曲がるスマートフォン」なのだ。

「Nubia α(アルファ)」という名前の腕時計型スマートフォンはまだ試作モデルで、展示品に触れて実際に操作することはできなかった。しかしこの形状、デザインはほぼ最終モデルとのことで、2018年末までに販売する予定だという。

腕に合わせてここまで曲げることができる

腕に合わせてここまで曲げることができる

Nubia αはアップルウォッチのようなスマートウォッチにも見えるが、Android OSをベースにしたアプリが動くスマートフォンとのこと。4Gモデムも内蔵しており通話もできる。また運動量を計測したり音楽再生も可能だが、折り曲げ可能なディスプレイを採用していることから表示エリアは大きく、画面表示も見やすくなっている。

腕時計型ながらも機能はスマートフォン相当だという

腕時計型ながらも機能はスマートフォン相当だという

スマートウォッチの新製品の話といえば、最近ではアナログ時計のデザインをしたものばかりになっている。スマートウォッチでアプリを動かしたところで、狭い画面でできることには限界がある。スマートウォッチは通知を受ける、運動量を計測する、といった単純機能に特化し、デザインで勝負する製品が増えているのだ。

Nubia αはそんなスマートウォッチの限界を打ち破る製品だ。腕に巻くことからスマートウォッチと同じカテゴリの製品でもあるが、大型ディスプレイを搭載していることからスマートフォンに近い使い方、体験を得ることができる。細長いディスプレイのため動画を表示するのには適していないかもしれないが、最近はやりの「TikTok」のようなショートクリップを見るならこの大きさでも十分かもしれない。

またカメラも内蔵しているので、撮影した写真をこのディスプレイに並べて表示するのも面白そうだ。時計のベルトを着せ替えるように、曲がるディスプレイにテクスチャ模様の画像を表示するといった使い方もできるだろう。スマートウォッチとスマートフォンのいいとこどりをした製品になりそうだ。

さてIFA2018の会場にはほかにも曲がるディスプレイの展示が行われていた。Royoleが展示していたディスプレイは厚さが0.1ミリ、サイズは8インチ前後の紙のような薄さのディスプレイだ。布のように自由に曲がり、180度曲げることも可能だという。実際にこのディスプレイを帽子に組み込んだ製品はすでに販売しているという。

Royoleの曲がるディスプレイは0.1ミリと薄い

Royoleの曲がるディスプレイは0.1ミリと薄い

タブレットに搭載できる大きさなので、このままタブレットのディスプレイを置き換えることもできそうだ。折り曲げ可能なタブレットを作るためには基板側の設計を考える必要があるものの、二つ折りの形状にするくらいならば基盤を2つに分割してフレキシブルケーブルでつなげは何とかなりそうだ。

実際に製品化する際はこのディスプレイの表面にタッチパネルやディスプレイ保護層などを張り合わせる必要があるため、曲げには制限が加わってしまう。しかしRoyoleブースにはスマートフォンサイズのモックアップが展示されており、いずれは曲げられるスマートフォンを製品化する予定だという。

スマートフォンのモックアップ。手首に巻き付けできる

スマートフォンのモックアップ。手首に巻き付けできる

サイズは細長くRoloyeも腕に巻き付けることもできるデザインの製品を考えているようだ。このあたりは、曲がるディスプレイの応用として腕に巻き付ける以外の使い方を各社まだまだ模索しているということなのだろう。サムスンの折り曲げ可能なスマートフォンも、実際にどのような形で出てくるかはわかっていない。

曲がる特性をどう製品に生かしていくかが課題

曲がる特性をどう製品に生かしていくかが課題

ディスプレイは曲がらないものの、本体を折りたためるスマートフォンはNECが過去に出しており、ZTEも現在「AXON M」を販売中だ。閉じればスマートフォン、開けばタブレットとして大画面を使うことができるため、使い道によっては便利な製品である。しかし2枚のディスプレイをヒンジでつないでいるために、開いた時には真ん中に「線」が見えてしまい、完全な1枚の大型画面にはならない。

もしもサムスンの折り曲げスマートフォンが、開いた状態で完全な大型ディスプレイとして使えるのであれば、ようやく「閉じても開いても使える」実用的な製品になるだろう。そしてそんな製品が出てくれば、スマートフォンの使い方も大きく変わるかもしれない。たとえば普段はスマートフォンスタイルで使い、複数のアプリを使いたいときは画面を開く、なんて使い分けもできそうだ。

角を丸めたエッジディスプレイもソニーが2018年の秋冬モデル「Xperia XZ3」で採用したように、今では採用メーカーが広がっている。サムスンも折り曲げ可能なディスプレイをいずれは自社以外のスマートフォンメーカーへ拡販するだろう。またディスプレイメーカーとしてライバルのLGも折り曲げ可能なディスプレイを開発中だ。

PCの世界ではキーボードが分離できる「2in1」デザインの製品が急増している。当初は合体式という、キワモノのような存在だった2in1 PCも今ではすっかり市民権を得た製品になっている。タブレットの世界でも同様に、いずれは7-8インチクラスの小型モデルは「折りたためばスマートフォンにもなる」なんて製品が増えるのかもしれない。曲がるディスプレイの実用化がこれから楽しみである。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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