最新漁業IoTではスマホで給餌管理│木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 木暮祐一のぶらり携帯散歩道 ,

農業分野へのIoT活用はずいぶんと定着してきましたね。IoTによって農作物の生育環境をモニタリングし、栽培工程の管理から効果的な作物生育環境の管理に至るまで活用できる様々なソリューションも登場しています。そんな中で情報収集を続けていたら、なんと漁業分野への展開というのも見かけるようになってきました。とくに養殖産業においては、言ってみれば農業と同じ視点からIoTの応用ができそうですね。

海に囲まれた環境にあるわが国は漁業国であったにも関わらず、近年は肉類の消費が増える一方で魚介類の摂取は減少が続いています。農林水産省の統計では、漁業の国内生産量はピーク時の4割以下に落ち込んでいるのだとか。とくに遠洋漁業や沖合漁業の減少は目に余るものがあります。一方で、養殖業は若干の減少傾向はあるとしても、安定した需要が続いているようです。

じつはわが国は養殖産業における技術発展が進んでおり、その水産倍養殖技術は世界トップレベルといわれています。さらに最近ではIoTやAIを使った最先端技術で着々と進化を続けていました。

このIoTを使った養殖産業の取り組みとしてみつけたのが、ウミトロン株式会社が開発した「UmiGarden」です。UmiGardenは養殖産業における生産者の経験やノウハウの部分(餌の量や種類、タイミング、水温やプランクトンの分布など)をデータ化し、それを基にスマートフォンで餌の管理が行えるシステムになっています。なるほど、農業IoTと同じ発想ですね。ウミトロンは本年5月に愛媛県愛南町と研究契約を締結し、このUmiGarden 20台を養殖生産者に提供して実証実験を開始しました。さらに7月には大分県での実証実験も公表しています。

近年、養殖産業で課題とされているのが餌の主原料である魚粉の価格高騰です。2015年前後から魚粉の価格が高騰しており、生産コストの5割以上を占める餌の影響は結果的に生産される魚の価格に直接響いてきます。逆に言えば餌の量をしっかりと管理できれば、生産コストの削減につなげられるのだそうです。

UmiGardenはこの課題に対し、IoTによるデータ分析に基づく餌やりの最適化と、遠隔での餌やりによる作業軽減の実現を目指します。さらにAI・IoT技術を用いて養殖業の経営に欠かすことの出来ないデータの取得を自動化し、データを経営へ役立てるための実証を行うと共に、日々の業務を効率化することで働き方改革の実現を目指していくそうです。

UmiGarden活用の流れ(ウミトロン社プレスリリースより)

UmiGarden活用の流れ(ウミトロン社プレスリリースより)

「働き方改革」なんてところまで踏み込んでいますが、養殖産業においてはこの給餌管理も現場の負担を大きくしてきた要因の一つだったそうです。給餌においては、魚がきちんと食べているか監視する必要があり、1回の餌やりに30分から1時間前後かかるのだそう。台風などの荒れた天気でも餌やりを行わなければいけないので、管理上の負担が大きいのです。しかしUmiGardenを活用してスマホ片手に気軽に給餌管理できれば人的負担はかなり軽減されるわけですね。

ウミトロンでは漁業にこうしたIoTやAIを活用していくことで、持続可能な水産養殖を目指しています。IoTやAIはどうしても“人の仕事を奪う”というイメージが付きまといがちですが、決してそうではありません。IoTやAIを使い餌が適切に管理されることで、労働者の負担軽減や魚の生産品質向上に繋げられます。就業者不足と言われている業界において未来のある話ではないですか。ともあれ、こうした実証実験は西日本が先行的ですが、ぜひ青森県をはじめ東北方面でも展開してもらいたいものですね。

参考情報

ウミトロン
https://umitron.com/ja/

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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