中国IoT家電ショーの隠れた主役はビューティーテック|山根康宏のワールドモバイルレポート

家電メーカー各社はスマートフォンからコントロールできるスマート家電の開発に注力している。中国で行われた家電関連展示会でも、スマートフォンを使ってエアコンをコントロールするデモは当たり前のものになっている。もちろんスマートフォンから家電を操作できれば便利ではあるものの、消費者に家電を買い替えさせるほど利便性が上がるものでもない。スマート家電は家電の買い替えサイクルと共にゆっくりと普及が進んでいくのだろう。

一方、女性をターゲットにしたスマート家電の展示がここ1年ほどで増えている。2018年3月に上海で開催されたAWE2018でも、パナソニックなどが女性向けの美容スマート家電を展示。ただのデザインのいい家電製品ではなく、スマートフォンと連携できるのが大きな売りだ。ビューティーテックと呼ばれるスマートな美容家電は、既存の家電の置き換えではなく、女性たちが新たに購入する家電製品として市場の拡大が見込まれる分野の製品だ。

たとえば中国のTVメーカーであるKonka(コンカ)は、化粧品を補完できる小型冷蔵庫の扉にネット接続してコンテンツを表示できるモニターを内蔵した製品を発表している。高価な化粧品を低温、あるいは一定の温度で保管できるだけではなく、冷蔵庫そのものの表面は鏡になっており化粧をするときに利用できる。さらにはその鏡の一部がタッチパネル式のモニターになっており、動画コンテンツの表示などができるのだ。YouTubeにある化粧のハウツー動画を再生しながら化粧をする、なんてことができるのである。

Konkaの化粧品冷蔵庫。ドアはスマートミラーだ

Konkaの化粧品冷蔵庫。ドアはスマートミラーだ

鏡の一部をモニターに利用する、スマートミラーはすでに実用されており、中国の家電メーカーの数社が製品化している。鏡の前に立つと人を感知して、その日の天気やニュース、予定を表示する、といった機能を持つものもある。それだけの機能ならばスマート家電の域を超えないが、パナソニックはカメラを使って肌状態をチェックし、肌状態にあった化粧を提案するといったビューティーテック系の鏡を開発中だ。

パナソニックは美容家電分野でも様々な製品を出しており、中国でも人気は高い。しかしただの家電ではいずれ中国メーカーに類似製品を出され、差別化も難しくなる。そこで美容家電の機能をさらに踏み込み肌診断などのソリューションを開発しているのだ。

パナソニックはスマートミラーをビューティーテック製品に応用

パナソニックはスマートミラーをビューティーテック製品に応用

さて美容家電分野では韓国メーカーもがんばっている。LGは「Pla.L」の名前でLEDマスクなどを販売している。女性が買う製品なだけに、センスあるブランド名をつけ、さらに製品デザインやパッケージも十分凝った仕上がりにしている。現時点ではまだスマートフォン連携できる製品はないもものの、今後はビューティーテック系へと進化を進めるだろう。

LGはスマートフォン分野で苦戦が続いている一方、高級デザイン家電などで存在感を高めつつある。ビューティーテック製品はスマートフォンの販売との相乗効果も見込まれるだけに、最優先で取り組んでいるに違いない。2月に発表した「LG V30 ThinQ」は同社のスマート家電ブランド「ThinQ」の名前をつけ、家電連携を強く意識した製品だ。5月に発売予定の新モデルも「G7 ThinQ」となる予定で、LGはスマートフォンと家電との連携強化を2018年の柱にしようとしている。

LGの美容家電。今後スマートフォンとの連携機能が期待される

LGの美容家電。今後スマートフォンとの連携機能が期待される

香港では4月と10月に大型の家電トレードショーが行われ、中国の家電メーカーが大量に出展するが、会場のあちこちで見かけるのがやはり美容家電だ。まだまだただの家電に過ぎないものの、話を聞いてみるとスマートフォン連携を考えているメーカーが意外と多い。AndroidだけではなくiOSにも対応することが必須であることもあり、ビューティーテック製品の商用化にはもう少し時間がかかるようである。とはいえいずれはドライヤー一つにしても、スマートフォンで温度や風量をコントロールするのが当たり前になるのかもしれない。

中国製の美容家電もデザインが良くなりつつある

中国製の美容家電もデザインが良くなりつつある

女性の美へ対する欲求は高く、ビューティーテック系の製品はこれからますます数が増えてくるに違いない。中国ではすでに美容家電だけの展示会も開催されているという。中国メーカー間の競争は、ビューティーテックという新しい分野でのテクノロジーの進化を生み出すだろう。しかもそれだけではなく、世界中の女性たちをより美しくしてくれるものになるのである。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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