キットカットをIoTで発注するサービス「たのめるくん」| 木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 木暮祐一のぶらり携帯散歩道 ,

富山の置き薬商法というのは16世紀中ごろから始まったのだそうですが、薬より消費頻度が高いものといえばお菓子ですよね。どこの企業が始めたのかしりませんが、今やオフィスに“置き薬”ならぬ“置きお菓子”は当たり前のものになりました。仕事が煮詰まると、ついつい甘いものに手が伸びてしまうのですよね。そのお菓子の補充と代金回収に来ている業者の方を見ていて、これこそIoTでもっと仕事が簡単になりそうではと考えていたら、やはりそれを試行している企業がありました。それはネスカフェでご存知のネスレです。

ネスレといえば世界最大の食品・飲料会社ですが、とくにインスタントコーヒーで知る人ぞ知る企業として認知されていると思います。そのネスレが展開しているコーヒーマシンを無料で貸しだすサービス「ネスカフェアンバサダー」は、今や日本国内で40万件もの申込件数を誇るインフラに成長しているようです。この「ネスカフェアンバサダー」こそ、富山の置き薬商法の典型であるなと考えていましたが、これがいつのまにか着々とICT化を進めてきたようで、たとえばBluetoothを使ってスマートフォンから音声で操作できるコーヒーマシン「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ i[アイ]」をラインアップしたり、コーヒーマシンとタブレット、専用アプリをセットにして貸し出してコミュニケーション機能を持たせた「ネスカフェコネクト」なども展開しています。

そのネスレが、IoTキットカット専用販売機「たのめるくん」を開発、昨年12月からオフィス向けに展開しているのだそうです。そういえば、よくよく考えてみるとキットカットもネスレの商品でしたね。そしてコーヒーとの相性もいいお菓子だこと…。

この「たのめるくん」は、販売機のハンドルを回すと好きなだけキットカットが出てくる、というシンプルなもの。そして、販売機にあるボタンを押せばネスレに注文が自動送信され、補充用のキットカットが届けられてくるという仕組みです。一見、単純な構造ではありますが、何気にIoTをめぐる最新技術を駆使し、しかもそのシステムの裏側に名だたる企業が参画しています。

これがキットカット専用販売機「たのめるくん」

これがキットカット専用販売機「たのめるくん」

「たのめるくん」を使ってキットカットの追加発注をかけるボタンには、LPWAの通信規格のひとつである「SIGFOX」のネットワークを活用しています。SIGFOXは現在、日本国内では京セラコミュニケーションシステム(以下、KCCS)が独占展開しており、2017年2月27日から東京都内でネットワークのサービス提供開始を皮切りに、エリアを拡充中です。そして「たのめるくん」の通信デバイスにはSIGFOX向けのデバイスやソリューションを展開するKCCSモバイルエンジニアリング(以下、KCME)が開発した専用デバイスを用いています。

「たのめるくん」から送信された発注データは、SIGFOXのネットワークを経由し、ACCESSが開発したオーダーサーバーに送信されます。ACCESSといえば、iモードのブラウザで広く知られた企業ですが、現在15億台を越えるモバイルソフトウェア、300社以上の通信機器メーカーでの採用実績を誇る独立系ソフトウェア企業。この「たのめるくん」のシステムでは、サーバー側の機器およびシステムの仕様策定などシステムイングレーション全般を担当しています。

ともあれ、キットカットをいつでも食べられるという環境の実現のためにKCCSグループとACCESSをも巻き込んでサービスを構築してしまったネスレに思わず脱帽してしまいます。

本気で構築された「たのめるくん」のサービスフロー

本気で構築された「たのめるくん」のサービスフロー

SIGFOXについて補足しておくと、もともとフランスのSIGFOX社が2009年から展開しているIoT用のネットワークで、世界展開に当たっては1国1事業社とする戦略を取っており、日本ではKCCSが事業者となって展開を図っています。KCCSによると、2017年3月に東京23区、横浜市、川崎市、大阪市でサービス提供を開始。2018年3月には政令指定都市を含む主要36都市に展開、そして2020年3月を目途に全国展開を図ることになっています。

なるほど、「たのめるくん」のサービス提供エリアが東京23区、横浜市、川崎市、大阪市の一部に限定されているというのは、SIGFOXのサービス提供エリアに限定されるからなのですね。ということは青森で「たのめるくん」を設置できるのは2020年以降ということか…(悲)。

ネスレ日本によると、「たのめるくん」は2018年末には1万オフィスでの導入を見込んでいるとのこと。何より、分かりやすいシンプルなIoT活用がいいですね。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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