アクションカムは生き残る?GoProの現状と課題|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンとセットで利用するIoT製品として、一昔前は大きな脚光を集めていたアクションカム。だが最近は参入するメーカーの数も減っており、業界最大手であるGoProからも元気のある動きが見えてこない。そのGoProは2018年上半期に199.99ドルという廉価版製品を販売予定だ。しかしこの価格でもアクションカム市場を盛り上げるには力不足だろう。

アクションカム市場を盛り上げたGoPro

アクションカム市場を盛り上げたGoPro

GoProが登場した2012年、多くの人がアクションカムという新しいカテゴリの製品に飛びついた。しかし需要が一巡するには時間はそうかからなかった。スマートフォンでは撮れない映像を撮影できるアクションカムは全ての消費者が必要な製品ではなく、ニッチなユーザー向けの製品だったからだ。

それでもGoProの登場と合わせるように市場に出てきたドローンで空撮を行う用途として、GoProは引っ張りだこの存在となった。しかし今ではどのドローンもカメラを標準搭載していることからわかるように、ドローンの技術進化がアクションカムを不要なものにしてしまった。そもそも今のドローン市場の盛り上がりは、カメラを内蔵したことでだれもが簡単に空撮ができるようになったからだ。

さらには中国メーカーの安価な互換品が次々と登場しGoProの地位を脅かした。その中でも中国のスマートフォン新興メーカーシャオミから、1万円を切る低価格なアクションカムが登場し話題になったのは記憶に新しい。だがそのシャオミも今やアクションカムには注力していない。ポータブルサイズのカメラで同社が力を入れているのは自動車用の車載レコーダーだ。

GoProは低価格モデルの登場で優位性をなくしている

GoProは低価格モデルの登場で優位性をなくしている

GoProは過去に低価格モデルを投入したことがあったが、そもそも低価格なアクションカムを求めるユーザーであれば、スマートフォンのカメラでも十分だ。スマートフォンではできないことを提供するのがアクションカムであり、それだけの性能の無い製品ではユーザー満足度は低い。低価格で間口を広げようにも、低性能ではユーザーは着いてこないのだ。

2018年に199.99ドルで発売される新型「Hero」は、上位モデル同様に2インチのタッチスクリーンを搭載、音声コントロールにも対応し、ヘッドフォンを取り付け録画中の音声のモニタリングも可能だ。しかし画質はHDどまりである。GoProは撮ってそのまま動画を使うのではなく、後から編集してBGMを入れるなど「作品」に仕上げて使うことが多い。4K動画なら動画の一部分をトリミングしてアップにするなども自在だが、HDでは画質低下が気になるところ。またHD画質なら200ドルを出してアクションカムを買うほどでもないと考える消費者が多いのではないだろうか。

そもそも最近のスマートフォンは動画の撮影性能も大幅に高まっている。たとえばサムスンのGalaxy S9はメインカメラの手振れ補正をカメラ機能の一つとしてアピールしているが、フロントカメラ側の手振れ補正もなかなかのものだ。Galaxy S9を手に持って街を歩けば、十分鑑賞に耐えうるレベルの動画を撮影できる。

またファーウェイのP20 Proは手振れ補正にAIを活用し、三脚なしでも夜景を美しく撮影できる。現状ではこの機能は写真撮影のみに対応するが、いずれ動画の撮影時にもジンバル不要で手振れ知らず、という時代がやってくるだろう。今やスマートフォンメーカー各社が最も力を入れているのがカメラ機能だからだ。

強力な手振れ補正を搭載したファーウェイP20 Pro

強力な手振れ補正を搭載したファーウェイP20 Pro

こうしてみるともはやGoProやアクションカムの生き残る道は無いように見える。だがちょっと前からインスタグラムではGoProで撮影した静止画を上げることが流行になっている。GoProの超広角レンズを生かし、スマートフォンでは取れないような画角の広い写真をアップしているのだ。スマートフォンは動画性能が高まる一方で、そのレンズは望遠重視で広角側はまだまだ弱い。広角を重視したスマートフォンもあるにはあるが、GoProの15ミリ程度という超広角には敵わない。

スマートフォンのカメラはファーウェイのP20 Proが3つのカメラを搭載したことで、今後他社も追従を始めるだろう。ファーウェイのようにカラー+モノクロのデュアルカメラはカラー+望遠+モノクロ化していくだろう。一方、現時点で望遠+標準の組み合わせのカメラは、望遠+標準+広角、という組み合わせのものが出てくるかもしれない。

スマートフォンのカメラはこれから3つが標準化するかもしれない

スマートフォンのカメラはこれから3つが標準化するかもしれない

スマートフォンのカメラが超広角に対応するまでの時間に、GoProがアクションカムの新たな使い道を提案することができれば、まだまだアクションカムにも将来の生き残りの道があるだろう。しかし今と変わらぬ使い道しかなければ、いずれは衰退する製品となってしまうだろう。

GoProに対してはシャオミが買収をするのでは?という憶測も流れている。しかしシャオミが狙っているのはアクションカムそのものではなく、将来のスマートシティー用のカメラなどを展開する際の技術や特許かもしれない。GoProのカメラそのものがシャオミ傘下で販売されるとは、今の市場の流れを見ると考えにくいところだ。

果たしてアクションカムはニッチ製品のままにとどまるのか、あるいはメジャーの道へと利用シーンを拡大するのか?GoProがこれからどんな動きをするのか、注目したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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