ランドセルから電話がかけられる!子供の安全を考えた中国のスマートバッグ|山根康宏のワールドモバイルレポート

新学期も始まりこれから小学校にお子さんを通わせる親御さんたちは、日々の通学時の子供の安全が気になってしかたないだろう。日本では誘拐事件に巻き込まれることはなかなかないだろうが、徒歩通学なら道路での交通トラブル、電車通学なら電車の乗り間違えなどは常日頃から起こりうる問題だ。子供にスマートフォンを持たせていても、電池切れで緊急時に連絡が取れないこともあるだろう。

最近では体につけたり、ランドセルの中に入れることのできるGPSモジュールが販売されており、子供の位置情報を親のスマートフォンで常に確認することができるようになっている。しかしこれも、子供の位置が数時間動かないようなときなどは、現地まで行かねば子供の安否を確認することができないだろう。

誘拐や事故が心配なのは中国でも同様だ。すでに数年前から子供向けの腕時計型のGPSウォッチや、簡単に緊急発信可能な腕時計が販売されている。そして今ではランドセルにGPSや携帯電話機能を内蔵した製品も出てきているのだ。

見た目は普通のランドセルなHOWOの製品

見た目は普通のランドセルなHOWOの製品

HOWO社のスマートランドセルは888元(約1万5000円)で販売されている。一見すると普通のランドセルだが、肩紐部分に携帯電話に見られるボタンやスピーカーが取り付けられている。内蔵されているのは2GのGSM方式の通信モジュール。通話とGPS用途程度にしか使えないが、電池の持ちは3GやLTEよりも長い。またメーカー側からするとコストが安いのも製品化しやすい点だ。バッテリーはリュックサックの底に入っており、6000mAhと大容量だ。これで約15日間電池が持つという。

親のスマートフォンにアプリを入れれば、ランドセルの位置がリアルタイムで確認できる。またアプリから緊急発信ボタンを押せば、ランドセルのスピーカーからすぐに親の声が聞こえる。また子供側も緊急時にはボタンを押すだけで、一発で親のスマートフォンに通話することができる。ランドセルの肩紐部分にボタンがあるので素早く操作もできるのだ。

肩紐部分に携帯電話の発信ボタンなどを備える

肩紐部分に携帯電話の発信ボタンなどを備える

なお親のスマートフォンアプリでは「安全地域」を設定することができる。通学路や公園などを地図上で指定しておくのだ。子供がその範囲内にいるときは何も起きないが、そこから外れた場所へ移動するとアプリへすぐに通知がくる。子供が道に迷ったときはもちろん、万が一誘拐にあった時も速やかに警告してくれるというわけである。

この手のスマートランドセルは、中国でもまだ数社しか製品を出していない。しかし子供用のGPS・携帯電話内蔵腕時計は今や複数社が何十もの製品を出している。いずれランドセルに携帯電話が搭載されるのは当たり前の時代がくるかもしれない。そして各社が競争すれば、高性能なスマートランドセルが次々と登場するだろう。

たとえばすでに肩紐部分にカメラを搭載したスマートランドセルも登場している。内蔵されている携帯電話で親と通話ができるだけではなく、子供が周りの状況を写真に撮影して親のスマートフォンに送ることができるのだ。「知らない人が話しかけてきた時は、このボタンを押すこと」と子供に教えておけば、万が一の時も相手の写真を記録しておくことができる。

さらには親のスマートフォン側からリモートでカメラの起動もできる。子供から「塾に行ってくる」という連絡がありながら、カメラを起動してみたら塾の隣のゲームセンターに入っていた、なんて時もしっかりと確認できるのだ。いずれはビデオ通話できるランドセルもでてきそうだ。

肩紐にカメラを内蔵したスマートランドセル

肩紐にカメラを内蔵したスマートランドセル

このようにスマートランドセルは子供の安否確認に使えるだけではなく、アプリを介して利用することから、学習関連アプリとの連携も面白い展開ができるだろう。たとえば学校の時間割をアプリに入れておき、毎朝自動的にランドセルのスピーカーから「今日の授業はXXとXXなので、教科書を忘れないように」といった通知を行えば忘れ物も無くせるだろう。同じことを子供のスマートフォンに通知しても、教科書を入れるランドセルは別の場所なので効果も薄い。

そしてもしかすると近い将来、スマートランドセルにはスマートスピーカー機能が内蔵され、学習の補佐までやってくれるようになるかもしれない。スマートフォンよりも大型のスピーカーやバッテリーを内蔵できるし、子供が学校に行くときは必ず持っていくものであるから忘れてしまうこともない。ランドセルの蓋である「かぶせ」の部分に太陽電池を登載すれば電池切れも防げるだろう。あるいはGSMや3GではなくNB-IoTなど超低消費電力の通信モジュールを搭載すれば、子供が小学校在学中は充電すら不要になる。

ランドセルをアプリと一緒に使う時代がやってくるかも

ランドセルをアプリと一緒に使う時代がやってくるかも

さらにはAIを組み合わせれば、ランドセル、すなわち子供の動きが普段と異なるパターンであれば自動的に親のスマートフォンに警告を送る、といったこともできるだろう。

大人の場合は日々持ち運ぶカバンやバッグを変えるだろうから、スマートバッグは特定用途に使うものだけ、たとえばスーツケースなどの旅行製品なら普及するかもしれない。しかしランドセルは毎日必ず持ち運ぶものである。スマートバッグは大人向け製品よりも、子供向け製品のほうが急激に普及が進むかもしれない。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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