究極のウェアラブルデバイスは“繊維”だった|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 最終更新日:2018/02/19 木暮祐一のぶらり携帯散歩道

さる1月16日から18日までの3日間、東京ビッグサイトにてウェアラブル端末の活用と技術の総合展「第5回 ウェアラブルEXPO」が開催され、展示をのぞいてきました。その率直な印象を一言で表現すると「ウェアラブルはついに繊維の時代になった!」といったところでしょうか(笑)。もちろん、リストバンド型活動量計などのデータ入力デバイスからヘッドマウントディスプレイなどのデータ出力デバイスまで、様々な展示が展開されていましたが、筆者が強く感じたことは身につけるデバイスとして生体情報を収集できる衣料(シャツ等)の展示がものすごく増えたなという印象を持ちました。衣料、すなわち繊維なのです。

1月16日から18日まで開催されていたウェアラブルEXPOに行ってきました!

1月16日から18日まで開催されていたウェアラブルEXPOに行ってきました!

ICT関連企業がひしめくEXPOの中で、かなり目立った衣類型ウェアラブルの展示を行っていたのがミツフジでした。じつはこのミツフジは、1956年に京都・西陣にて西陣織工場として創業した織物の加工・製造メーカーでした。ミツフジはその後、新規事業展開として1992年に銀メッキ繊維「AGposs」(エージーポス)を開発します。当初は抗菌製品からスタートしたのですが、そののちに銀の持つ高い導電性能が注目されるようになり、導電性繊維として事業を発展させていきました。この「AGposs」をはじめ、導電性繊維に関するノウハウは、国内の著名繊維・衣料メーカーにも供給しているようです。

この伝導性繊維を使った衣料型ウェアラブルが同社の「hamon」です。体にフィットしながらも高精度のデータが取得できる「シャツ型電極」、シャツに着脱できる小型トランスミッター「hamon-transmitter」、そして着用して得られたデータを管理するクラウドサービスをセットにして提供するウェアラブルIoT製品となっています。

ミツフジの「hamon」は伝導性繊維を使って生体情報収集可能なウェアと生体情報をスマホに飛ばすトランスミッタ、そしてクラウドソリューションがセットになっています。(ミツフジのWebサイトより)

ミツフジの「hamon」は伝導性繊維を使って生体情報収集可能なウェアと生体情報をスマホに飛ばすトランスミッタ、そしてクラウドソリューションがセットになっています。(ミツフジのWebサイトより)

ミツフジは、このhamonのPRを兼ねてロンドンオリンピックボクシングミドル級金メダリストの村田諒太選手に着用してもらい、トレーニング時の生体データを取得するなどしてアスリート向けウェアラブルIoT製品の開発に取り組むことも発表しています。

生体情報の中でも重要なのが心拍の計測です。心拍のゆらぎ(HRV=Heart Rate VariabilityとかRRI=心拍R-R間隔などと言われます)を計測できれば、交感神経・副交感神経の活性が分析できます。すなわち、ストレス状態になるのか、リラックスしているのかといったその人の状態をリアルタイムに知ることができるのです。従来であれば心電計が必要だったHRV計測も、近年はウェアラブルデバイスの進歩によってもっと手軽に計測が可能になってきました。

じつは筆者もこの分野に以前から関心を持ち、様々な生体情報センサーを試してきました。リストバンド型の活動量計でも常時心拍を計測できるデバイスが増えてきましたので、それらも主要なものを評価したのですが、やはり胸に接触するデバイスが有利なことが分かってきました。たとえば東芝製のSilmee Bar Type(研究向け製品で、現在東芝からTDKに移管)も購入して試しましたが、従来の胸に貼りつけるタイプのデバイスはゲルパッドで装着する必要があり、ベタベタして気持ちが悪かったのです。

一方で、このミツフジのhamonのような着るだけでよい製品で、はたして正しい心拍計測ができるのか大いに疑問でした。そこで、ミツフジからこのhamonをお借りし、試す機会を頂きました。

ミツフジからお借りすることができたhamonのタンクトップとトランスミッタ

ミツフジからお借りすることができたhamonのタンクトップとトランスミッタ

タンクトップ裏側の銀メッキ繊維「AGposs」部分。手触りは普通の繊維と何ら変わりません

タンクトップ裏側の銀メッキ繊維「AGposs」部分。手触りは普通の繊維と何ら変わりません

タンクトップの内側の、胸に接触するあたりにAGpossで織った繊維が取り付けられており、外側の電極とつながっています。その電極にトランスミッタを取り付けるようになっています。導電性繊維の部分はベルト状のゴム繊維が縫い込まれ皮膚に密着するよう工夫されています。もしかして息苦しいのかとも思いましたが、ほとんど装着感は気になりませんでした。胸部以外は普通のポリエステル素材のタンクトップと変わりません。普段着用している下着とまったく変わらない着心地です。

電極にトランスミッターを装着し、電源を起動、そしてスマホ側でアプリを起動してアプリのメニューからBLE接続されたトランスミッターをセレクトすれば心拍計測開始です。操作も簡単で、動作は安定していました。ちなみにアプリやクラウド側のサービスは、ミツフジが新たに九州工業大学系ベンチャーで、遠隔医療システム開発などの実績があるTRIARTと新たに提携し、新たなアプリとクラウドサービスの構築を進めていくことを1月17日に公表しています。今回はTRIART製の評価用試作アプリで自分の心拍データ収集を試みました。

装着後、専用アプリでの自身の心拍計測画面のキャプチャは以下の通りです。

左は着用直後。ちょっと不安定でノイズが乗っています

左は着用直後。ちょっと不安定でノイズが乗っています

アプリのキャプチャ画面上の時刻をご覧いただければと思いますが、一番左の11:24のものは装着直後のもので、ちょっとノイズも乗っていますね。そして中央はウェアラブルEXPOで他の方の講演を聴講していた時のものです。かなり安定しています。装着して分かったことは、装着直後はなかなか安定した心拍波形が得られないのですが、時間が経ってくると極めて安定してきます。多少、汗ばんだほうが正確にデータを収集できるようです。右の画面はウェアラブルEXPOの会場で筆者が講演した直後のもの。講演中もチェックしていたのですが度胸が据わっているのか波形に変化はなく、むしろこの終了後のデータでは達成感による興奮で波形が乱れている感じですね。この日は深夜まで装着していましたが、電池がなくなることもなく(むしろスマホのほうが先に落ちました)、衣料型のウェアラブルデバイスで不快感もなく、これだけ生体情報が正確に得られるようになったということは大いなる進歩と感じました。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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