スマートスピーカーにLTEが内蔵、単体で使える製品が韓国で登場|山根康宏のワールドモバイルレポート

音声AIアシスタントを搭載したスマートスピーカーは日本でもグーグル、アマゾン、そしてLINEの参入で盛り上がりを見せている。家庭やオフィスに1台設置しておけば、話しかけるだけで情報検索や音楽再生、家電コントロールなどを行える。スマートスピーカーが自宅にあれば、スマートフォンでゲームをしながらスピーカーに「明日の天気は?」と聞くなど、スマートフォンが2台あるかのような使い方も出来る。スマートスピーカーは今後1家に1台必須の製品になっていくだろう。

スマートスピーカーを利用するには電源とWi-Fi環境が必要だ。つまり基本的には室内での利用を前提としている。ところが韓国では電源もWi-Fiも不要なスマートスピーカーが登場した。それがKTの「GiGa Genie LTE」だ。韓国では通信キャリアがスマートスピーカーを発売しており、シェア1位のSKテレコムが「NUGU」、2位のKTが「GiGa Ginie」を販売している。どちらもGoogle HomeやAmazon Echoのように、音声AIアシスタントを搭載しており、家庭内で利用できる。

KTが韓国で販売するスマートスピーカー「GiGa Genie」

KTが韓国で販売するスマートスピーカー「GiGa Genie」

KTのGiGa Genieは同社が提供するIPTVと接続し、TVのコントロールを音声で行えることを一番の武器にしている。100チャンネル以上あるIPTVをリモコンで操作するのは困難だが、GiGa Genieを使えば好みの番組の検索も簡単に行える。各社のスマートスピーカーは情報検索を売りにしているが、GiGa Ginieは家庭内でよく使われるTVと連携することでユーザーの購買意欲を高めようとしているのだ。

そのGiGa GinieにLTE搭載の製品が今回発表された。これによりスマートスピーカーは家庭に設置するものから、どこにでも持ち運べるモバイル製品へと大きな進化を遂げる。家庭にWi-Fiが無い場所であったり、ホテル、そして屋外でのキャンプなど、モバイル化したスマートスピーカーは利用場所を選ばない。

LTE内蔵の「GiGa Genie LTE」(左)

LTE内蔵の「GiGa Genie LTE」(左)

例えば出張に持ち運べば、会議やプレゼンの時にも情報を検索し出席者全員に音声で情報を共有することができる。GiGa Ginie LTEのバッテリーは8時間もつので、昼間の会議の時間中に電源が無くとも十分使える。そしてホテルに戻れば音楽を聞くなどエンタメ用途にも使えるし、スマートフォンを使って仕事をしながら航空券や鉄道の時間を検索することもできる。スマートスピーカーはスマートフォンの補佐として使うと最強の組み合わせになるのだ。

KTのスマートスピーカーは2017年頭に発売され、10か月で40万台を販売したという。韓国の総世帯数は約1900万なので、普及率は約2%となる。KTとしては年末までに50万台を販売したい考えだが、販売数の伸びは当初より落ちているという。現状のスマートスピーカーは各社ともまだキラーサービス・アプリが無く、消費者にとって「無くても困らないもの」であるのが実情だろう。たとえば年配者にとって、スマートスピーカーをWi-Fiに接続するだけでも面倒なものだ。

IPTVのコントローラーとしての機能もある。だが年配者には設定が面倒だ

IPTVのコントローラーとしての機能もある。だが年配者には設定が面倒だ

GiGa Genie LTEは購入後、箱から出して電源を入れて音声で語り掛けるだけでセットアップが完了するという。定期的な充電は必要なものの、スマートフォンの充電と同じ操作ならば年配者でも十分使いこなせるだろう。目覚まし時計をセットしたり、天気を聞いたり、バスの時間を核にしたり、病院の場所を検索する、などなど年配者にこそスマートスピーカーは便利な製品なのだ。

KTがLTE搭載製品を他社に先駆けて出してきたのは、通信事業者自らがハードとサービスの両方を提供しているというアドバンテージがあるからだ。韓国は年明け、2018年2月の冬季オリンピックに向けて国内で5Gのサービス開始を控えている。GiGa Genie LTEはあらゆるものが高速かつワイヤレスで繋がる時代の象徴ともいえる製品だ。そして単体で使えるGiGa Genie LTEオリンピック会場内の各場所に設置され、その存在をアピールするだろう。

平昌オリンピックの会場ではこのオブジェクトがあちこちで見られるに違いない

平昌オリンピックの会場ではこのオブジェクトがあちこちで見られるに違いない

スマートスピーカーはまだまだ普及期にも入っていない、未熟な製品だ。数年もすれば現状の欠点など誰もが忘れ去り、家庭に必須の製品になっていることは間違いない。そのころはタブレットやPCのように、スマートスピーカーもLTE版(5G版)とWi-Fi版の2種類が販売され、LTE版はキャリアの2年契約で買えばタダ、なんて時代になっているだろう。KTに続きどのメーカー、キャリアがLTE版のスマートスピーカーを出すか、楽しみである。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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