中国発のAI音声スピーカーが続々登場か|山根康宏のワールドモバイルレポート

日本でも相次いでAI音声スピーカー、いわゆる「スマートスピーカー」の販売が始まった。音声対応AIを搭載し、会話するかのようにネットからの情報を検索することができる全く新しいデバイスだ。「今日のスケジュールは?」「明日の天気は?」「電車の時間を教えて」のように、スピーカーに話しかけるだけで音声で応対してくれるのだ。今までスマートフォンのアプリで手入力が必要だった操作が不要になるとあって、ITリテラシーの有無に関係なく幅広い消費者が簡単に使うことができる。

スマートスピーカーは日本ではまだ製品数が少なく、またIPTVやスマート家電との連携もこれからという状況だ。そのためかまだまだどのような使い道があるかを消費者が模索しなくてはならない。だがアメリカなどではすでにスマートスピーカーに話しかけるだけで家の中の電気を消したり、お気に入りのTV番組を検索してもらうなど、スマートスピーカー本来の「スマート」な使い方も可能になっている。

日本ではグーグルのGoogle HomeとLINEのClove Waveが登場し、アマゾンのAmazon Echoも発売になる。今はまだコンシューマー層も様子見と言う状況だろうが、来年には一家に一台スマートスピーカーが設置されている時代がやってきそうだ。アマゾンが電子書籍端末「Kindle」の割引キャンペーンを継続して行っているように、Amazon Echoも格安で購入できるようになるだろう。それに対抗してグーグル、LINEが値下げキャンペーンを行う、そんな状況がいずれやってくるはずだ。

さて日本のお隣中国でもスマートスピーカーが盛り上がりを始めている。すでに大手ECサイトのJD.com(京東)が「Dingdong」という製品を出しており、アマゾンのEchoのようにスピーカーを使って手軽にショッピングや予定確認などが行える。そもそもJD.comは「中国のアマゾン」と言われるECサービスを展開しており、スマートスピーカーの開発は当然の成り行きだったのだろう。JD.comはスマートホームのプラットフォームも手掛けており、Dingdong経由で家の中の家電全てをコントロールすることも可能になる。

中国で最初に登場したJD.comのスマートスピーカー、Dingdong

中国で最初に登場したJD.comのスマートスピーカー、Dingdong

このDingdongを追いかけるように、アリババから登場するのがTmall Genieだ。DingdongやEcho同様に語りかけるだけで操作できる。アリババと言えばJD.comのライバルであるB2C向けECサイト「Tmall」のみならず、B2BのAribaba.comも運営している。ECサイト全体の顧客数は約4億5000万人と言われており、そのユーザーがTmall Genieを使い始めれば先行するJD.comの顧客も奪いかねない。

とはいえ中国の消費者は賢く、おそらくTmall GenieとDingdongの2台を買って併用するようになるだろう。それにより両陣営のサービス強化が加速され、中国語の音声認識力の向上や、外食デリバリーサービス、自転車シェアサービスなどといった各社のサービスとの提携も進むと予想される。その結果アマゾンやグーグルのスマートスピーカーが政治的な理由ではなく、単純に「機能が低い」「使いにくい」と言った理由で中国では見向きもされなくなるかもしれない。

DingdongのライバルともいえるアリババのTmall Genie

DingdongのライバルともいえるアリババのTmall Genie

さてEC陣営が競争を繰り広げる中、中国のスマートスピーカーの本命と言えるのはバイドゥだ。大手検索エンジンを中心にサービスを展開し、日本ではスマートフォン用日本語入力アプリも手掛ける同社だが、次世代サービスとして音声認識・AIの開発に注力している。バイドゥはスマートスピーカーだけではなく、自動運転可能なコネクテッドカーへも自社のAI・音声認識エンジンを提供予定だ。現時点で中国語の認識率は他社を大きく引き離していると言われている。

バイドゥは現時点ではスマートスピーカーより高性能な小型ロボットとも言える「Little Fish」を市場に送り出している。他社のスマートスピーカーが1万円以下と低価格であるのに対し、Little Fishは5万円程度と価格は高い。Little Fishはディスプレイやカメラを搭載しており、検索結果を映像で表示したり、ビデオ通話なども出来る。そのためLittle Fishがあればスマートフォンが無くてもほぼ全く同じ体験を得ることが可能だ。

バイドゥは高機能なディスプレイ搭載スピーカーから参入

バイドゥは高機能なディスプレイ搭載スピーカーから参入

ショッピングなど日常の身近な作業からスマート化を進めるJD.comとアリババに対し、バイドゥは検索から生活をスマートにする、両者の市場参入の攻め方は大きく異なっている。しかしバイドゥもいずれ低価格なスマートスピーカー市場に参入するであろうから、中国のスマートスピーカー市場はネット企業による三つ巴の戦いが本格化するだろう。

3社以外にも、スマートフォンで市場を賑わせるシャオミもスマートスピーカーを販売している。シャオミはスマートホーム向け製品も数多く出しており、スマートフォンからコントロールできる炊飯器なども販売中だ。とはいえハードウェアメーカーが提供するスマートなサービスはできることに限界がある。オンラインショッピングなどは他社と提携する必要があり、いずれは前述した3社のどこかと提携することになるだろう。

中国は人口約13億人を有する巨大な市場だが、華僑のネットワークは世界中に広がっている。いずれは世界のどの国にいっても中国のスマートスピーカーが普通に見られるようになっているだろう。そして中国語だけではなく日本語や韓国語も認識するようになるかもしれない。今はまだ中国国内だけで見られる各社のスマートスピーカーだが、日本市場への上陸もありうるかもしれないのだ。

シャオミも参入したスマートスピーカー、中国市場から目が離せない

シャオミも参入したスマートスピーカー、中国市場から目が離せない

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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