アクションカムにもLTE、市場拡大で差別化を狙うメーカーたち|山根康宏のワールドモバイルレポート

ひと時ほど騒がれていないが、小型でスマートフォンと連携でき、三脚のみならずヘルメットや自転車などに取り付けのできるアクションカムの人気は今でも高い。ビデオカメラ市場が縮小する中で、アクションカムはこれからまだ成長が期待されている製品だという。 Tracticaの調査によると、アクションカム市場は2015年の740万台から2021年には2400万台へと広がりを見せる予定だという。

アクションカムの代名詞と言えばGoProで、業界の標準とも言える存在だ。だがそのGoProも2015年には赤字に転落。2016年末にはレイオフに踏み切った。アクションカム市場が拡大する中で、市場はより低価格な製品へのシフトが進み、また360度カメラのような新しいデバイスに注目が集まっているのだ。

たとえば新興スマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ)の関連会社、XhaoYi(シャオイー)は2015年にGoProそっくりな製品を発売。価格は1万円とGoProの1/5程度と安く、しかもGoProとは異なり専用のアタッチメントを取り付けなくとも三脚が利用可能だ。2016年には「Yi II」を出すなど、低価格アクションカム市場で着々と存在感を高めている。

シャオイーの「Yi II」。2世代目になりデザインはスタイリッシュになった

シャオイーの「Yi II」。2世代目になりデザインはスタイリッシュになった

またGoProクローンと呼ばれる低価格モデルも中国から多数の製品が登場している。こちらも1万円程度で4K動画が撮影可能など、その性能は日常的な用途には十分と言えるだろう。このように低価格なアクションカムが次々と登場する中、差別化を図ろうと単体通信できる製品も登場している。

中国のSioeyeのアクションカムは、LTEを内蔵しSIMカードを入れれば単体でライブストリーミング放送ができる製品だ。「IRIS4G V3」は4K動画対応で2499元(約4万1500円)「IRIS4G Blink」はフルHD対応ながら1999元(約3万3200円)と価格を下げた製品。どちらもSIMスロットを本体に備え、録画ボタンを押すだけで即座にライブ配信も可能だ。

従来のアクションカムは単体で撮影後にスマートフォンに画像を転送し、それをSNSやYouTubeなどの動画配信サービスにアップロードする、という使い方だった。一部のアクションカムとSNSサービスの組み合わせでライブストリーミング放送ができるものもあるが、利用できるモデルやサービスは限られてしまっている。

SioeyeのLTE内蔵アクションカム

SioeyeのLTE内蔵アクションカム

今やインスタグラムでもライブ配信が可能になり、Facebookなど主要なSNSはもちろん、Line Liveなど新しいライブ配信サービスもメジャーな存在になりつつある。また日本ではメルカリでライブ配信が始まるなど、今や個人が物を売るときですら「生放送」で行う時代だ。ライブ配信の主役はスマートフォンだが、単体でストリーミング配信できるアクションカムならその市場へ割り込むことも出来るだろう。

またすでにイギリスでは通信事業者がLTE内蔵のアクションカムを販売している。EEは2015年にLTE内蔵の「4GEE Action Cam」を発売し、自社の回線利用ユーザーを増やそうとした。この4GEE Action Camは単体で利用またはスマートフォンと接続して利用できるが、腕時計型のライブビューモニターも付属。身体に取り付けたカメラの映像を腕時計の画面で確認することもできた。

Eのアクションカムは腕時計型ビュワーも付属した

Eのアクションカムは腕時計型ビュワーも付属した

製造は台湾のBenQで、BenQは自社ブランドでもこの製品を販売したようだ。しかし価格が高かったようで、売れ行きは思わしくなかったとのこと。またEEのアクションカムも思ったほど売れ行きは伸ばせなかったようだ。

しかしEEは2016年になって後継モデルとなる「4GEE CAPTURE CAM」を発売。前モデルはGoProライクなボディーで、身体に取り付けるにはアタッチメントが必要、また水まわりでの撮影時には防水ハウジングを取り付けるなどやや使いにくいものだった。4GEE CAPTURE CAMはスリムサイズになり本体のクリップで胸ポケットなどにも手軽に取り付け可能だ。重量も99グラムと軽く、生活防水に対応している。後継モデルを出してくるあたり、ライブストリーミング市場が延びているとEEは考えているのだろう。

他にもLGが2016年に「LG Action Cam LTE」を発売。スマートフォンだけあればライブ配信はできるが、配信中にスマートフォンを利用したい場合は単体でLTE接続できるアクションカムがあったほうが便利だろう。LGはスマートフォンの周辺機器として、あえてLTEを搭載したアクションカムをリリースしたのだ。

少しずつ製品が増えているLTE内蔵のアクションカムだが、課題は電池の持ちだろう。通常の動画撮影でも2-3時間程度で電池が切れてしまうことを考えると、ライブ配信は1時間も持たないだろう。かといって数分程度の配信ならば、スマートフォンを使えば事足りる。

LGからもLTE内蔵アクションカムが登場。スマートフォンとの併用もしやすい

LGからもLTE内蔵アクションカムが登場。スマートフォンとの併用もしやすい

ライブ配信市場が拡大する中、LTE内蔵アクションカムはこれからも製品が増えていくだろう。いずれはコンビニでSIM内蔵のアクションカムが5000円程度で買える、そんな時代が来るかもしれない。しかし単純にUSBケーブルでモバイルバッテリーを繋ぐというだけではなく、アタッチメント式のバッテリーや無線充電に対応するなど、電池の持ちを気にせず使えるソリューションが欲しいところ。LTE内蔵のアクションカムは価格よりも電池の持ちがその普及を左右するものになるように思えるのだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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