落とし物防止タグ「MAMORIO」が鉄道と組む理由|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

BLE(Bluetooth Low Energy)でスマホと通信できるタグを使い、このタグを所持品に装着しておくことで紛失した際に紛失場所を特定できるサービスって、何度かソーシャルメディアの広告で見かけたことがありました。海外の企業の中には、誇大広告じゃないかと思われるようなものも多く見かけました。たとえば自転車のサドルの裏にタグを貼り付けておいて、この自転車が盗難にあった際にその場所がスマホのマップ上に表示され、簡単に自分の自転車が見つかるというようなムービーもありました。

BLEやビーコンの仕組みを知っている人からすると、まるで「どうなっているの?」みたいな広告に思われたはず。これは、スマホとビーコンの通信が切れた場合にその場所をスマホ側に記録したり通知することで、紛失場所が分かるというものなのですが、紛失物が紛失場所から動いてしまったら見つけることができません。

宣伝では、他のユーザーが同じサービスを使っていれば、他のユーザーのアプリにタグが反応することで、本来のユーザーのアプリにも通知が来るという仕組みを説明していました。しかし、これもユーザーがそこら中にいれば可能になると思われますが(BLEの通信範囲はせいぜい30mなので、本当にそこらじゅうにユーザーが必要)、まずそこまで普及させること自体が無理と感じました。

日本でもこのような忘れ物タグを展開している企業があります。MAMORIO株式会社が展開する落とし物防止タグ「MAMORIO」です。お守りのような形をしたタグを大切なものに忍ばせておけば、万が一紛失した場合(つまり、ペアリングさせているスマホと通信が切断された場合)にその場所が記録され、スマホに通知が来るというものです。世界で展開されている同様なサービスに比べ誇大広告もなく信頼が持てます。

これがMAMORIO

これがMAMORIO

大切なものにこのようにぶら下げておけばOK

大切なものにこのようにぶら下げておけばOK

紛失場所の通知が来ます

紛失場所の通知が来ます

紛失した場所が分かるだけでも便利ですが、やはりサービスとしては多くのユーザーがこれを利用するようになり、すれ違い通信によって紛失物の行方も追いかけられるというのが理想なのでしょう。すなわち、このサービスを利用するユーザーが増加し、かつユーザーが密集することで、より有用なサービスとなっていくのです。

では、どうやったら特定エリアでユーザーを増やせるか?! MAMORIOは賢いです、鉄道会社と組みました。まず昨年11月から東急電鉄と組み、東急沿線に住むユーザーが万が一車内に忘れ物をした際に、その忘れ物が渋谷駅ヒカリエ2改札口横のお忘れ物受付所に届くとユーザーのスマホにアラートが届くというサービスを試験導入しました(実施期間は11月15日から半年間)。これはお忘れ物受付所にMAMORIO専用の専用アンテナ(MAMORIO Spotというそうです)を設置し、ユーザーの忘れ物がここに来るとMAMORIOと通信が行われ、その場所がユーザーのスマホに通知されるという仕組みです。

そして7月からは、同様なサービスを小田急電鉄でも実施します。東急電鉄と同様に、所持品が小田急沿線3カ所にあるいずれかの忘れ物集約所に届くと、ユーザーのスマホにアラートが届きます。(こちらも7月から半年間のようです)

7月からスタートする小田急電鉄でのサービス

7月からスタートする小田急電鉄でのサービス

MAMORIOが目指すところは、やはりMAMORIOユーザーを増やすところにあると思います。とくに特定の沿線などにユーザーが集中してくれると、ユーザー同士のすれ違いによるトラッキング機能がようやく有効に活用できるようになるわけです。特定のエリアでユーザーを増やすという戦略に、まさに鉄道を使うというのは大いにありなのでしょう。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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