身近なところからIoTを広げるLoRaの展開に期待|山根康宏のワールドモバイルレポート

直接ネットワークに接続できるLPWA(ローパワー・ワイドエリア)関連製品が今年になって増えている。中でもLoRaの規格を採用した製品はすでに一部の国で商用化が進んでおり、他規格よりも普及の面で一歩リードを始めている。そのLoRaは2月にバルセロナで行われたMWC2017にブースを出し、関連企業の製品を多数出展していた。

LoRaの通信モジュールを内蔵した製品は、ガスや水道メーターなど人目に付かないB2B向けのものが多い。最近流行りの駐車場の空管理ソリューション向けのモジュールも、地面に埋まっていればそれがなんであるかを一般消費者が理解することは無い。社会の裏方に隠れ豊かな生活を支援する、LPWAモジュールはそんな製品が多い。

ところがMWC2017では複数の会社から、一般消費者が今すぐにでも買いたくなるような製品が展示されていた。一見するとIoTやデジタルとは関係ない製品に見えるが、来場者の多くが手に取り「個人で欲しい」と話す人の姿も見られた。

MWC2017のLoRa Allianceブース。関連各社も製品を出展

MWC2017のLoRa Allianceブース。関連各社も製品を出展

それはねずみ獲り。100年以上も前からあるような、ばねでねずみを挟んで捕まえる捕獲機である。こんなローテクでアナログな機器でも、IoTにより便利でクリーンな機器に変えることができるのだ。従来のねずみ獲りは、ねずみが捕まったかどうかをいちいち見に行かなくてはならなかった。また気が付いたら餌だけを取られていた、なんてこともある。そして無事ねずみを捕獲しても、すぐに取りに行かねば環境的にも良くは無い。ねずみ取りを置けば置いた数だけ、手間が増えるのである。

ところがLoRaモジュールを内蔵したねずみ獲りならば、餌に引っかかった瞬間に全体が振動し、それをスマートフォンに通知してくれる。仮に餌だけを取られたとしても、その瞬間の振動はスマートフォンに伝わるわけで、何時ころにねずみが捕獲機のあたりを通るかを知ることも出来る。

これをWi-Fiでやろうとすれば、充電を考えなくてはならないし、ゲートウェイに近い場所にしか設置できない。またコストも割高だろう。わざわざねずみ獲りごときの製品に搭載するメリットは少ない。しかしLoRaならば低消費電力であり、データを発信するのはせいぜい数日に1回だ。コストメリットは十分あるのである。

LoRaモジュール内蔵のねずみ獲り

LoRaモジュール内蔵のねずみ獲り

実際にはねずみの駆逐は薬剤を使うことが一般的であり、このねずみ獲りが普及するかどうかはわからない。しかし自然環境を考えれば薬剤は使わないに越したことはない。なによりも適当に床の下などに置いておけば、あとは捕獲した時に自動的に通知してくれるので使い方も簡単だ。メーカーによってはより大きな獲物が捕まえられる捕獲機も展示しており、商用化については真面目に検討しているとのことである。

このように人の目に触れるLPWA内蔵製品としては、ウェアラブルデバイスの展示も増えていた。いわゆるスマートウォッチとは異なりデータを一方通行で発信するだけだが、実際に消費者が求めているのはこのような製品かもしれない。

例えば身体の健康データを一定時間ごとに医療機関に送ったり、クラウドに保管する用途であれば、データ通信速度が高速である必要は無い。GPSの補佐として位置情報を発信する用途でも同様だ。腕時計型の身体データ(体温や心拍数、身体の動き)センサーを搭載したデバイスにLoRaモジュールを内蔵させれば、今のスマートウォッチよりも電池は持つうえにスマートフォンが無くても動作する。水泳中の運動データを取得する、なんて用途にもうってつけだろう。

LoRaを内蔵したウェアラブルデバイスも増えそうだ

LoRaを内蔵したウェアラブルデバイスも増えそうだ

もちろんスマートウォッチには利点があり、アプリケーションが動くなど高度な機能もある。だが実際にスマートウォッチ市場が全く盛り上がっていない現状を見ると、今のスマートウォッチは消費者にとって魅力の無い製品ということになる。例えばスマートウォッチで買物をしようとメーカーは訴えるが、普及は全くしていない。むしろ身体データをスマートフォン無しでも送り続けるデバイスの方が、消費者受けするかもしれない。

今後はスマートウェアといった、洋服の中にセンサーを組み込み身体の状態データを常に取得するスポーツウェアなども増えてくるだろう。そのデータの発信には、BluetoothやWi-Fiではなく、LoRaなどのLPWAが使われるようになっていくだろう。なぜならスマートフォン不要で動作し、しかも消費電力も低いからだ。

韓国のように国内のほぼ全土にLoRaネットワークを広げるキャリアが出てくれば、スマートウォッチやスマートウェアだけではなく、Wi-FiやBluetooth、あるいは2Gや3Gを搭載していたIoT機器がLoRaへと置き換わっていくだろう。今後国際ローミングの利用が可能になれば、第二の携帯電話ネットワークのようにLoRaの普及が爆発的に広がっていく可能性もありうるだろう。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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