ついに登場した「充電不要スマートウォッチ」。体温発電が世界を変える|山根康宏のワールドモバイルレポート

高機能化やファッション化が進むスマートウォッチだが、毎日の充電は面倒なものだ。また高機能な製品を買ったものの、ほとんどの機能はつかわずスマートフォンで済ませてしまう人も多いだろう。最近の売れ筋はApple WatchやAndroid Wearなどの高性能な製品よりも、数か月は電池が持つ活動量計の製品になっている。Withingsなどデザインのいい製品も増えており、機能よりも見た目や電池の持ちをスマートウォッチ選びの判断基準にするケースが増えている。

ところが充電不要で使い続けられるという、夢のようなスマートウォッチが登場した。電池交換も不要で、自動巻腕時計のように本体が壊れるまで使い続けられるというのである。旅行先に充電ケーブルなどを持っていく必要も無ければ、疲れて帰宅して充電を忘れてしまい翌朝使えなかった、なんてことも無くなるのだ。

MATRIX PowerWatchは、人体の発熱を利用して発電できるスマートウォッチだ。熱電効果により腕にはめておくだけで、時計本体の裏面のセンサー部分が発電する。これは1821年に発見されたゼーベック効果というものを利用しており、製品の開発に5年をかけたとのこと。

MATRIX PowerWatch(左)とMATRIX PowerWatch Pro(右)

MATRIX PowerWatch(左)とMATRIX PowerWatch Pro(右)

MATRIX PowerWatchを腕にはめると、すぐに文字盤上に「Realtime Power」の表示と共に、電池残量が表示される。このまま腕にはめておけば、電池残量が徐々に増えていく様を見ることができる。ディスプレイは消費電力の少ないメモリ液晶を使っているようで、表示は黒白のモノクロ。だが高度なアプリを動かすのではなく、活動量計として使われるので十分だろう。

MATRIX PowerWatchは腕から外せば、自動的に休止モードに入る。データは本体内に保存され、再び腕にはめると動作再開、データをスマートフォンに送信できる。スマートフォンとはBluetooth接続された一般的なスマートウォッチと同様に使うことができるが、スマートフォンからの通知を受けることが出来るのは上位モデルの「MATRIX PowerWatch X」のみとなっている。対応するスマートフォンはiOSとAndroidだ。

腕にはめると充電を開始。文字盤画面の外の「弧」の数が電池残量だ

腕にはめると充電を開始。文字盤画面の外の「弧」の数が電池残量だ

機能としてはベーシックなMATRIX PowerWatchだが、ウェアラブルデバイスの概念を大きく変えるものになるかもしれない。まず「充電不要」というだけで、あらゆるユーザーをターゲットにすることができるからだ。たとえばアスリートの人に限らず、スマートフォン初心者の人でも「腕にはめておくだけで毎日の運動量を記録できる」と聞けば、一台買って使ってみようと思う気になれるだろう。すでにスマートウオッチを買って、充電が面倒で三日坊主で使うのをやめてしまった人でも、MATRIX PowerWatchなら使いつづけられるだろうう。

また子供向けの防犯ウォッチとしての活用もできるだろう。現状の発電力ではGPSを内蔵しその電力を供給することは難しいようだ。だがMATRIX PowerWatchが急激な動き---子供が誘拐されそうになり子供が激しく動いたときなど---を起こした時に、親など指定した通知先に連絡が行くようにしておく、といった利用方法も考えられる。充電不要で腕にはめているだけで使い続けることができるMATRIX PowerWatchだからこそ、子供にも安心して使わせることができる。

子供向けスマートウォッチは「日々充電する」ことを飽きさせない工夫の製品が多い。だが人体発電ならそれも不要だ

子供向けスマートウォッチは「日々充電する」ことを飽きさせない工夫の製品が多い。だが人体発電ならそれも不要だ

他にも、ファッションアイテムとしてのスマートウォッチとしての可能性も開ける。デザインに優れたスマートウォッチやブランド品の製品をいくつか購入して、その日の気分で付け替えようとしても、すべてを充電して準備しておくことは面倒だ。だが充電が不要であれば、気軽に複数のスマートウォッチを購入しておける。メーカー側としても売り込みしやすいだろう。

ゼーベック効果による発電容量は限られたものであり、上限容量も大きいものではない。そのためスマートフォンを充電するだけの発電力を得ることは難しい。しかしスマートウォッチレベルのものならば十分発電できることから、時計以外にもブレスレット型の製品などへの展開が考えられる。ウェアラブル端末に興味を持っていなかった企業にも、製品参入のチャンスを与えるものにもなるだろう。

ファッションアイテムなど、異業種からのウェアラブル参入も進むかもしれない

ファッションアイテムなど、異業種からのウェアラブル参入も進むかもしれない

太陽電池や燃料電池など、新しい充電ソリューションは様々なものが登場しているが、ウェアラブルデバイスをいつでも充電できるというものにはなりえなかった。体温を使って発電する熱電効果はこれからのウェアラブルデバイスの有力な充電方法になるかもしれない。MATRIX PowerWatchに続く製品の登場に期待したいものだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
IoT品質検証

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