国慶節で火花を散らす、中国スマートフォンメーカーの割引セール合戦|山根康宏のワールドモバイルレポート

10月の第一週の中国は国慶節の大型連休となる。例年この休みの期間に合わせ、中国では一斉に特売セールが開催される。デパートからECサイトまで、オフライン、オンラインあらゆるところでバーゲンが行われるのだ。最近では「独身の日」と名付けられた11月11日のセール日が記録的な売り上げになるなど、国慶節は買物よりも旅行などに消費を向ける中国の消費者も増えている。だがスマートフォンメーカー各社は9月に秋の新製品を発表しており、国慶節の重要性は今でも変わっていない。

中国では各メーカーも自社のオンライン販売サイトを持っており、そのWEBページは「国慶」の文字で埋め尽くされる。そのセール販売の内容は、各社の今の現状をそのまま物語っているようで興味深い。勢いのあるメーカーはセールの内容にも余裕が見られる一方、元気の無いメーカーは「ここで売り込む」という必死の決意が見え隠れしているのだ。

10月第一週は各メーカーが国慶節のバーゲンセールを行う

10月第一週は各メーカーが国慶節のバーゲンセールを行う

中国で今やシェアNo.1のファーウェイは、圧倒的な製品数であらゆる製品をセール一覧に掲示。ハイエンドからエントリーモデルまで、どの製品も普段より数千円値引きされるとあって、どれを買おうか悩んでしまうほどだ。またセール品のところどころにセルフィースティックなどの周辺機器やアクセサリを混ぜており、スマートフォンとのまとめ買いも促している。なおセール品目を「旅行用」「家庭用」と左右2つのカテゴリに別けているのも特徴だ。その内容を見ると、旅行用にはデュアルカメラスマートフォンをイチオシにしており、「P9」「P9 Plus」「Honor 8」「Honor V8」と4機種も揃えている。iPhone 7 Plusの登場でデュアルカメラが気になる消費者も増えているが、ファーウェイのデュアルカメラ製品はiPhoneよりも安く、しかも種類も多い。セールに合わせて買ってしまう来客も多いことだろう。

他にも「長時間駆動」「ゲーム向き」といった中国語も書かれており、セール品目当てにWEBサイトに来た一見客にもわかりやすい。ファーウェイのスマートフォンは日本でも複数の製品が発売されているが、メインラインの「Pシリーズ」「Mateシリーズ」などに加え、オンライン販売向けの「Honor(中国語では「栄耀」)シリーズ」の2つのラインがあり、その製品種類は多岐にわたっている。しかもタブレットも複数モデルを出しており、中国では最も製品数の多いメーカーとなっている。何を買っていいか悩む消費者に、メーカー側がお勧め品をわかりやすく説明し、しかもそのほぼ全ての製品がセールとなれば、国慶節期間中の売り上げ増も他社を圧倒するだろう。

ファーウェイの国慶節セールは圧倒的な数で消費者の目を惹きつける

ファーウェイの国慶節セールは圧倒的な数で消費者の目を惹きつける

ファーウェイにスマートフォン1位の座を奪われ、勢いに陰りの見えるシャオミ(Xiaomi)は9月27日に発表したばかりの最新スマートフォン「Mi 5s」に福袋をつけて販売。だが定価が安くなるわけではなく、ファーウェイの圧倒的なセール品の前には存在感は薄い。過去の国慶節セールではスマートフォンをずらりと並べていたシャオミだが、今年は「スマートフォン」「スマート家電」「若者向けアイテム」「キッズ」と4つのカテゴリを用意。スマートフォン以外の製品もこのセールで売り込みをかけている。

同社が今最も力を入れているのは「炊飯器」「浄水器」「空気清浄機」の3つの製品だ。このうち浄水器と空気清浄機は中国国内の大気・水質の悪さから売り上げは上々で、小売店でもスマートフォン以上の人気になっている。また炊飯器は日本へ「爆買い」に行かなくとも買える高品質な製品であり、しかもスマートフォンからのコントロールも可能だ。価格も999元(約1万2000円)と手ごろではある。しかし家電製品はそれなりの価格であるため、賢い消費者は「スマホはファーウェイ、炊飯器はシャオミ」のように別々に買い物をするだろう。家電が売れてもシャオミの懐は潤うだろうが、スマートフォンの売り上げ寄与するとは言い切れないのが苦しいところだ。

スマートフォンよりもスマート家電に注目があつまるシャオミ

スマートフォンよりもスマート家電に注目があつまるシャオミ

そのシャオミを抜いて、今最も勢いのあるのがOPPO(オッポ)。同社のフラッグシップモデルにギフトを付けて販売するという、堂々とした販売セールを行っている。フロントカメラも1600万画素という、セルフィーに特化した「R9」と、その大画面&高性能モデル「R9 Plus」を一押ししている。OPPOの飛躍はこのセルフィー機能への特化であり、中国では女性ユーザーが大幅に増えている。この両モデルを約5000円値引いた上に、Bluetoothスピーカーやヘッドセットを無料進呈。R9 Plusは3299元(約5万円)と高価なモデルだけに、この値引き率はなかなか魅力的だ。

低価格モデルをさらに安く売るのではなく、高価格帯の製品を値引きして販売できるのが今のOPPOの強さである。これは低価格・高コストパフォーマンスで勢いを伸ばしていったシャオミとは逆の製品展開を行っていった結果だ。シャオミの製品はたしかに価格性能比は他社を大きく圧倒している。だが価格の高いモデルを出しても人気はパッとせず、結局は1000元前後(約1万5000円)の製品ばかりが売れてしまっている。OPPOの製品は全体的に高価格だが、それでも売れるだけの魅力(セルフィー機能など)を備えているのだ。

ハイエンド製品を値引きするOPPO。手の届きにくい製品が安くなるとあって、人気を集めるだろう

ハイエンド製品を値引きするOPPO。手の届きにくい製品が安くなるとあって、人気を集めるだろう

最後にメイズ(Meizu)の国慶節セールもなかなかがんばっているので紹介したい。同社はシャオミが現れるまで「中国スマートフォンの顔」とも言えるメーカーだった。一時はシャオミを超える人気になったものの、ファーウェイの攻勢の前に今はやや勢いを失っている。そのメイズの国慶節セールで目立つのが分割払いの表示だ。しかも自社製品だけではなく、オンラインストアで扱う他社のアクセサリ類も分割で安く買うことができるのだ。

例えばミスフィットのスマートリストバンドをほぼ半額の119元に割引し、さらに19.8元の6回払いも可能にしている。19.8元とは約300円。すなわち「毎月コーヒー1杯分で、リストバンドが手軽に買えますよ」ということをアピールしているのだ。他にもスマートフォンが毎月2000円から3000円程度の分割払いで購入できる。値引きして安くなった製品を、分割でさらに買いやすく提供することで売り上げ増を狙っているのだろう。リストバンドの月300円という支払額も、スマートフォンを買った客のついで買いを狙うことができる。

メイズは値引きと分割払いでお買い得感を高める

メイズは値引きと分割払いでお買い得感を高める

国慶節のセールだけを見ても、各社の内容は横並びではなく、それぞれの置かれた立場や製品ラインナップの種類によって大きく異なるものになっている。中国のスマートフォン市場も一時期の勢いは無く、年々競争は激しさを増している。中国メーカーの今後の動向を見るためにも、今年の国慶節セールの動きには注目したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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