日本市場での戦略を大きく変えるASUS、ZenFone 3は「脱・格安スマホ」を目指す|山根康宏のワールドモバイルレポート

「ZenFone 3 Deluxの価格は8万9800円」。日本の発表会のために来日していたASUSの会長、ジョニー・シー氏が壇上で発表すると、会場内に駆け付けたメディア関係者のあいだに小声ながらも驚きの声が広がった。チップセットにSnapdragon821、RAM6GB、ROM256GB、そしてディスプレイは5.7インチ、解像度フルHD、カメラはメインが2300万画素、フロントが800万画素、さらにはLTEの3バンドキャリアアグリゲーションにも対応するなど、スペックてんこ盛りとも言えるZenFone 3 Deluxは「性能怪獣」と同社が誇る、高性能なスマートフォンだ。

ZenFone 3 Deluxの価格を発表するASUSジョニー・シー会長

ZenFone 3 Deluxの価格を発表するASUSジョニー・シー会長

2016年9月28日、ASUS Japanは日本で製品発表会を開催し、日本向けの「ZenFone 3」「ZenFone 3 Delux」の2モデルを発表した。なおZenFone 3 Deluxにはスペックを押さえた別モデルも投入される。これまでのZenFoneシリーズは2-3万円台の価格の製品が多く、コストパフォーマンスに優れた低価格モデル、という印象が強い。

ところが今回発表されたZenFone 3ファミリーは、最上位モデルが税込みで9万円を超える高価格なモデルとなった。発表会会場で驚きの声が聞かれたのも、まさかここまで高い製品が出てくるとは誰もが思わなかったからだろう。なお台湾での同モデルの価格は2万4990台湾ドル、約8万円だ。それでも十分高価格だが、日本向けモデルはさらに1万円強高くなったことで、10万円に近い値段となった。

ちなみに同じディスプレイサイズのiPhone 7 Plusの256GBモデルの価格は10万7800円(ジェットブラック以外のモデル)。ZenFone 3 Deluxはそれよりも安いものの、価格はほぼ同じクラスと言っていいだろう。

8万9800円の価格に見合ったスペックと仕上げのZenFone 3 Delux

8万9800円の価格に見合ったスペックと仕上げのZenFone 3 Delux

初代ZenFone、二代目のZenFone 3と比べ、ZenFone 3シリーズは高級感あふれるボディーに高いスペックを盛り込んだ、ワンランク上の製品となった。そのあたりは過去に本コラムで執筆した通りだ。日本向けには最下位モデルのZenFone 3が3万9800円となり、昨年発売されたZenFone 2の再下位モデルの3万5800円より値段が上がっている。もちろんZenFone 3のほうがスペックが高く、単純に価格の比較はできない。だが初代ZenFone、二代目ZenFone 2は登場時に「スペックの割に価格が安い」というイメージであったのに対し、ZenFone 3は税込みで4万円を超えることになることから、「価格相応の製品」になったという印象を受ける。

このZenFone 3の価格についても、台湾では7990台湾ドル、約2万600円となっている。このことからZenFone 3の日本向け価格もZenFone 2同様の3万5800円あたりが予想されていた。しかし4万円に近い価格を付けてきたということは、ASUSとしてZenFone 3シリーズをいわゆる「格安スマホ」とは違う、さらに上のモデルという位置づけに置きたいのだろう。

今や大手家電量販店ではSIMフリースマートフォンが10機種以上販売されている。フリーテルのように専用の販売ブースを持つところもあるほどだ。このSIMフリー端末も日本で製品の数が増えだしたころは「安かろう・悪かろう」レベルの製品が多かったが、今ではメインで使うスマートフォンとしても使えるだけの性能と品質を備えた製品が増えている。

ZenFoneは価格を売りにしつつ、必要十分なスペックを備えた端末として日本のSIMフリー市場での販売数は常にトップレベルに入っている。だが競合他社の製品も増えてきており、今のままではいずれ価格競争に巻き込まれてしまうだろう。しかし「高性能だから高価格」ということで、プラスチックボディーの昨年モデル、ZenFone 2のメモリやカメラの画素数を増やしたところで、多くの消費者は「価格の高いZenFone 2」には興味を示さないだろう。

今回日本で発売になるZenFone 3とZenFone 3 Deluxはどちらも高級感あふれる仕上げのボディーとなり、スペックも大幅に上がっている。価格レベルを従来品より高く設定できるだけの製品になっており、性能と外観をアピールすれば消費者も十分納得してくれるとASUSは判断し、強気の価格設定をしたと思われる。実際にZenFone 3のガラスのような背面仕上げやサクサクと動く動作を体験すると、約4万円の端末としての価値は十分あると感じられる。

ZenFone 3。お買い得感は無くなったが価格相応ではある。サードパーティーからも高級感あるアクセサリが登場予定

ZenFone 3。お買い得感は無くなったが価格相応ではある。サードパーティーからも高級感あるアクセサリが登場予定

さらに10万円弱のZenFone 3 Deluxの存在は、ASUSがハイスペック端末やプレミアム製品を作る力があるメーカーであることをアピールできるだろう。iPhoneに10万円を出す日本人は多いだろうが、いくらハイスペックだからといってASUSの製品に同じ金額を出す消費者はあまり多くないはずだ。それでも家電量販店にZenFone 3 Deluxがディスプレイされていれば、SIMフリースマートフォンコーナーに立ち寄った客に「ASUSはiPhoneに匹敵する製品を出せるメーカー」ということを知らしめることができる。

つまり今回の新モデルのうち、ZenFone 3 Deluxは一定の販売数を期待するモデルではなく、いわば広告塔としての役割も持った製品なのかもしれない。そうであればZenFone 3 Deluxは「あえて高い価格にする」ところに存在意義があるということになる。

ZenFone 3 Deluxはあえて価格を高く設定したとも考えられる。なおパッケージも豪華だ

ZenFone 3 Deluxはあえて価格を高く設定したとも考えられる。なおパッケージも豪華だ

高価格なプレミアムレンジモデルと、手ごろな価格ながらも高級感あふれるモデルという2つの新製品を投入することで、ASUSのライバルは他の「格安スマホ」ではなく、SonyやSamsung、そしてAppleなどの大手メーカーとなる。勝算はまだわからないが、品質と性能では十分互角な製品になっているだけに、ブランド力が追い付けばいずれ台風の目のような存在になるかもしれない。

SIMフリースマートフォン市場でシェア1位争いに加わることも多いZenFoneだが、果たして今回のZenFone 3はどれくらい販売数を伸ばすことができるだろうか。そしてZenFone 3 Deluxは日本の消費者からどれだけ注目される製品になるのだろう。この冬のASUSの動向には大いに注目したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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