1台の端末で複数のSIMを活用するデバイス|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

世界では1台の端末に2枚以上のSIMカードを挿入して利用できる端末が市販されています。日本ではほぼ見かけることがないものですが、このほど複数のSIMを切り替えて使用するためのデバイスなるものが発表されました。これはちょっと面白そう!

日本では採用されないデュアルSIM端末

 山根康宏さんのほうがご専門ですが、中華圏を中心に世界には2枚以上のSIMカードを挿入して利用できる携帯電話やスマートフォンが多数販売されています。残念ながらわが国ではこういった端末は発売されてこなかったため、むしろご存知なかった方のほうが大半ではないかと思います。

 SIMカードを複数使うことにどんな意味があるの、と思われたことでしょう。たとえば、音声通話をメインに複数の回線で使いたいというニーズが考えられます。仕事用とプライベート用を使い分けるシチュエーションなどです。これは以前からNTTドコモの「2in1」などのサービスによって1端末2番号のような使い方も利用可能でした。しかし、これでは2番号とも同じ通信キャリアに縛られてしまいます。2回線を別々の通信キャリアで契約していれば、万が一、一方の通信キャリアの電波が入らない「圏外」エリアでも、場合によっては他方の通信キャリアで通話できる場合があるかもしれません。

 あるいは、音声通話用のSIMカードと、データ通信用のSIMカードを組み合わせて使用するというシチュエーションも考えられます。データ通信用のSIMカードはパケットを使い切ったら別のSIMカードに差し替えて通信し、一方で音声通話用のSIMカードは常に装着されているのでいつ電話がかかってきても大丈夫という状態でいられます。

 こうした2回線以上を同時に1台の端末で利用できてしまう、そんな端末が海外では存在していました。残念ながらわが国の場合は黎明期から回線契約と端末販売が一体的に行われてきた商習慣があったため、通信キャリアとしてもデュアル端末を発売する意味がなかったのでしょう。

 一方、積極的にSIMカードを拡販していきたいMVNOにとっては、デュアルSIM端末は1端末で複数のSIMカードを使ってもらえる可能性があるということで、取扱いを始めているところもあります。以前、このコラムでご紹介したFREETEL「MUSASHI」などもSIMカードスロットが2つ備えられていました。ただしMUSASHIなどのわが国で販売されているデュアルSIM対応端末の多くは、国内では2回線を同時に待ち受けることができない仕様のものがほとんどでした。

以前このコラムでも紹介したFREETEL「MUSASHI」はデュアルSIM機

以前このコラムでも紹介したFREETEL「MUSASHI」はデュアルSIM機

複数のSIMカードを切り替えて使えるデバイスを考案

 このほどNTTドコモとCerevo(セレボ)は、複数のSIMカードを自由に切り替えて通信が可能なデバイス「SIM CHANGER ⊿(シム チェンジャー・デルタ)」を考案し、クラウドファンディングを開始しました。2017年3月末にこのデバイスの完成を目指しているということです。

「SIM CHANGER ⊿(シム チェンジャー・デルタ)」

「SIM CHANGER ⊿(シム チェンジャー・デルタ)」

 「SIM CHANGER ⊿」は最大4枚のSIMカードを挿入でき、これをスマートフォンとBluetooth通信して任意のSIMカードに切り替えて使用できるというもの。スマートフォン側には、NTTドコモが開発したBluetoothチップを搭載したSIMカードサイズのデバイス(「psim proxy」技術を採用したブリッジカード)をSIMカードスロットに装着、専用アプリと組合せ、「SIM CHANGER ⊿」に挿入したSIMカードを疑似的に認識して通信するようです。

「ポータブルSIM」デバイスとスマートフォンの接続イメージ

「ポータブルSIM」デバイスとスマートフォンの接続イメージ

 もともとNTTドコモは「ポータブルSIM」(e-SIMともいいます)に関する技術を持っていました。このポータブルSIMは「端末側でSIMカードを抜き挿しせずに電話番号の切り替えを可能にする技術」なのですが(Appleが一部採用し、専用のApple SIMを装着したiPadで地域によって通信キャリアをiPad側で選べるサービスを展開)、これをさらに発展させたものと考えられます。

 デュアルSIMどころか、いきなり4枚のSIMカードを1端末で使い分けられるようになるのです。なかなか画期的ではないですか。

 その登場が楽しみなのですが、唯一の心配ごとはこの「SIM CHANGER ⊿」の形状。この形では持ち歩くにはちょっとかさばって不便では。普通の板状のデバイスになることを希望したいものですね。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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