ポケモンGO効果?プリペイドSIMカードの値上げも始まった香港|山根康宏のワールドモバイルレポート

社会的ブームにもなったポケモンGO。昼休みや休日になるといままで人気のあまり無かった公園に多くの人が集まるようになるなど、地域によっては経済的効果も生まれているほどだ。ポケモンGOはアメリカでのスタートを皮切りに日本や各国でサービスが開始されており、その人気はどの国でも高い。中でも香港は、ポケモンGOのサービス開始とともにプリペイドSIMの値段が値上がりするという不思議な現象が起きているのだ。

自由に買えるプリペイドSIM、データ利用分の追加も手軽

香港のプリペイドSIMは身分証明書の提示も不要で、誰もが自由に買うことができる。コンビニでも販売されているので、お菓子やジュースを買うついでにSIMを購入することも出来る。しかも安いものなら1000円以下で売られているので、仕事以外に使う電話番号が必要になったり、自分の使っている通信事業者の無料データ利用分が足りないときなど、プリペイドSIMを購入してそちらを使う、ということも可能だ。

しかしSIMを買うということは、普段使っているSIMを取り外さなくてはならない。これでは電話がかかってきたときに受信できなくなってしまう。ところが香港ではすでにデュアルSIM対応のスマートフォンが多数普及しており、2枚のSIMカードを1台のスマートフォンに入れて使うことができる。もちろん2回線を同時待受けできるので、仕事とプライベートの電話を受けたり、片側を格安データ通信料金のSIMにして併用する、と言ったことも可能だ。

香港発売のソニーモバイルのXperiaシリーズはデュアルSIMに対応している"

香港発売のソニーモバイルのXperiaシリーズはデュアルSIMに対応している

実は日本でもデュアルSIM対応のスマートフォンは、SIMフリーモデルを中心に増えている。だがそのほとんどすべてが日本では1枚のSIMしか使うことができない。これはデュアルSIM機の対応通信方式が片側は4G/3Gなのに対し、もう片側は2G専用だからだ。しかも日本ではサービスが提供されなかったGSM方式のみに対応するため、SIMを2枚入れても片側しか使うことができないのである。

なお日本でもようやく、日本のSIMを2枚入れてデュアル待ち受け出来る製品が出てきた。Motorolaが販売を始めた「Moto G4 Plus」で、例えば片側にドコモのSIM、もう片側に日本通信のSIMを入れ、そのどちらの回線も同時待受けさせることができる。いずれ同様の機種が増えてくれば、日本でも複数SIMの使い分けが一般的になってくるかもしれない。

日本でも2枚のSIMが利用できるMotorola

日本でも2枚のSIMが利用できるMotorola G4 Plus

さて香港ではデュアルSIM対応のスマートフォンが一般的な存在になり、しかもプリペイドSIMを手軽に買うことができる。そんな状況の中でポケモンGOのサービスが開始されたことから、香港人のおおくが普段は片側に何も入れていない自分のスマートフォンのSIMスロットに、コンビニなどで買ったプリペイドSIMを入れてポケモンGOのデータ通信をそちらでやるようになったのだ。プリペイドだから残高が無くなれば通信は止まってしまうので、余計な通信費がかかったり、ポケモンGOをやりすぎてしまう心配が無くなる。

また香港のプリペイドSIMは、定価以下での値引き販売もされているため、自分が普段使っているSIMのデータ料金よりも割安で通信することもできるのだ。このプリペイドSIMの値引き販売は街中のSIMを売っている携帯電話店や露店などだけではなく、通信事業者も自ら割引販売を行っている。

キャリア自らもプリペイドSIMを割引販売、需要増で値段が上がる

例えば中国移動香港は自社のオンラインストアでプリペイドSIMを定価より安く売っている。しかも1枚単位だけではなく、2枚ならばさらにお得な値段で買うことができる。それに加えて20枚パックも販売しており、定価の15%オフと割引率は高い。実は中国移動香港はオンラインストアの2周年記念で「プリペイドSIMの100枚パック」も販売。SIMが安くなるだけではなく、LGの最新スマートフォン「LG G5」が無料進呈されるなど、太っ腹のセールを行っていたこともある。

もちろん個人がこの100枚パックを買うことも可能で、使い捨て感覚でプリペイドSIMを使うことができる。日本であれば1人で100回線も持っていれば警察の職務質問で面倒なことになるだろうが、香港ではSIMカードはただの通信手段のツールに過ぎない。そのため通信事業者もなるべく自社回線を使ってもらおうと、割引販売も日常化しているのだ。

プリペイドSIMカードの値引き販売は通信事業者も自ら行っている。20枚買えばさらに安い

プリペイドSIMカードの値引き販売は通信事業者も自ら行っている。
20枚買えばさらに安い

このように通信事業者が一般消費者向けに割引販売を行っているだけではなく、プリペイドSIMカードを専門に売る店舗も香港には多い。仕入れ元はもちろん通信事業者であり、仕入れ価格は定価よりも当然だが安い。そしてそれらの業者はプリペイドSIMを定価販売するのではなく、独自の値付けで割引販売しているのだ。有名な場所としてはシャムシュイポ(ShamShuiPo)にプリペイドSIMカードの屋台がずらりと並んでおり、SIMによっては定価の半額程度で売られることもある。

だがそのSIM屋台で、ここに来てプリペイドSIMの値上がりが始まっているのだ。たとえば中国移動香港が販売する香港用のプリペイドSIMは、定価がHK$80(約1050円)。約2日間のLTEデータ通信が無制限で利用できるほか、低速通信なら20日間利用できる。これを同社はオンラインストアでHK$72(約950円)と、100円値引きして販売している。これがシャムシュイポの屋台ではだいたいHK$55(約720円)、定価の3割引以上と言う格安価格で売られている。そのため香港人のみならず、香港をよく訪れるリピーターは電車賃を出してここへ行ってプリペイドSIMを買っても十分元が取れるのだ。

ところがポケモンGOが開始以来、この格安プリペイドSIMが日々値上がりし、今ではHK$70と、中国移動香港の割引価格とほとんど変わらない値段で販売されるようになってしまった。SIM屋台によってはプリペイドSIMの品薄状態も続いており、わざわざSIMを買いに行ったのに安いSIMが買えない、なんて状況も起きているのだ。

プ香港のSIM屋台。定価より安くプリペイドSIMカードを販売している"

香港のSIM屋台。定価より安くプリペイドSIMカードを販売している

ポケモンGO人気は香港でも過熱しているが、デュアルSIM対応スマートフォンと格安なプリペイドSIMカードがあることで、その人気はさらに熱いものになっているのだろう。日本でも国内で利用できるデュアルSIM対応機が増え、プリペイドSIMカードが手軽に買えるようになれば、「定価よりも高いプレミア価格の付いた低価格プリペイドSIMカード」がネットで転売されるという、不思議な状態が起きるかもしれない。

香港のSIM屋台ではそれまで見向きもされていなかった、低速かつ低価格な他社のプリペイドSIMをポケモンGOに最適として売り込みをかけて売るところも出てきている。店員の話では「今は出せば出すだけ売れる」という状況で、急に訪れたビジネスチャンスを逃さないようにとSIMカードの仕入れ量も普段の倍以上に増やしているという。また携帯電話ショップの中には、ポケモンGOのためにデュアルSIM対応機への買い替えをアピールする店も登場した。いつまでこのブームが続くかはわからないが、ポケモンGO人気が新たなビジネスチャンスを各国で生み出しているのは間違いないようだ。

The following two tabs change content below.
山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
IoT品質検証

関連記事

Mobile Asia Expo 2014でも多数の4G関連の展示を行った中国移動

早くも高速化が見えてきた中国のLTE|山根康宏のワールドモバイルレポート

中国の通信事業者3社の4Gサービス競争が本格化している。世界最大の契約者数を誇る中国移動は低価格機を

記事を読む

WR171002_04

電源不要のIoT、「Enocean」の可能性|山根康宏のワールドモバイルレポート

超低消費電力(Low Power)で利用できる広域ネットワーク(WideArea)、LPWA規格に

記事を読む

170201_01

音声認識技術で存在感を表すアマゾン|山根康宏のワールドモバイルレポート

今年も1月3日からラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show、

記事を読む

0101

電子ペーパー搭載のデュアル画面スマートフォンが発売 | 山根康宏のワールドモバイルレポート

ロシアのYota Deviceからデュアルディスプレイのスマートフォン「YotaPhone」がヨーロ

記事を読む

WR170901_04

疲れの解消は睡眠から!睡眠を改善してくれるIoTデバイスたち|山根康宏のワールドモバイルレポート

Apple Watchなどスマートウォッチには身体の動きを記録する機能、いわゆる活動量計が

記事を読む

NanoSenseの自己発電パネル。太陽電池を使うので電源への接続は不要だ

太陽電池給電のタッチパネルモニター、充電不要タブレット実現の可能性も|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンと併用してタブレットを使っている人も多いだろう。タブレットは本体サイズが大きいこともあ

記事を読む

85ユーロのWindows Phone、Lumia530

マイクロソフトの「本気」が詰まった低価格スマホが登場|山根康宏のワールドモバイルレポート

マイクロソフトは85ユーロのスマートフォン『Nokia Lumia 530』の販売を開始した。ノキア

記事を読む

Tudouが発売するタブレットはTVユーザーも取り込む

有料動画サービスとタブレットをセットで売るTudouの新しい試み|山根康宏のワールドモバイルレポート

スマートフォンやタブレットでも視聴できる動画配信サービスが花盛りだ。YouTubeに代表される動画共

記事を読む

WR171202_01

ランドセルから電話がかけられる!子供の安全を考えた中国のスマートバッグ|山根康宏のワールドモバイルレポート

新学期も始まりこれから小学校にお子さんを通わせる親御さんたちは、日々の通学時の子供の安全が気になっ

記事を読む

WR171102_01

冷蔵庫やエアコンがスマートになる!スマートホーム普及の鍵を握るNB-IoT|山根康宏のワールドモバイルレポート

単三電池2本で10年動き、電波の到達エリアも広いLPWAはIoTには欠かせない通信方式だ。その中の

記事を読む

ウェブレッジ
  • Facebook
  • Twitter
  • Google+
  • はてなブックマーク
  • RSS
PAGE TOP ↑