今度こそ成功する?新たなプロジェクター内蔵スマートフォンがまもなく発売|山根康宏のワールドモバイルレポート

Akyumen Technologiesはスマートフォンの上部にプロジェクターを内蔵した「Hawk」を発表。年内の発売を予定している。日本市場への参入も考えており、本体の日本語や技適の取得も行う予定だという。

プロジェクターを内蔵したスマートフォンは、過去にSamsungが「Galaxy Beam」を発売したり、中国メーカー数社が類似の製品を開発したことがあった。またLenovoの「YOGA Tab 3 Pro 10」のように、タブレットにプロジェクターを内蔵した製品もある。ZTEの「Spro Plus」も同様な製品だ。しかしいずれの製品も華々しく発表はされたものの、その後の販売実績については目立った報道はあまり見かけない。プロジェクター内蔵端末は、ビジネスシーンはプレゼンに利用したり、自宅では映画や写真を投影して家族で楽しめる、といったメリットがあるものの、それらの目的で製品を買うユーザーの数はまだ多くないのが実情だろう。

プロジェクター内蔵スマートフォン「Hawk」。画面表示をそのまま壁に投影できる

プロジェクター内蔵スマートフォン「Hawk」。画面表示をそのまま壁に投影できる

現状のプロジェクター内蔵スマートフォンやタブレットは、市販されているプロジェクターと比べると投影性能そのものは低い。そのためプロジェクターの完全代替として使うのはやや難しいかもしれない。例えばビジネスの現場でプロジェクターを使うのであれば、完璧なプレゼンのためには会議室に設置されているプロジェクターを使うことを選ぶのが当然だろう。何よりもスマートフォンやタブレットにデータをダウンロードしてからそれを投影するというのも、ギリギリまでパソコンで修正を行うような状況であれば面倒だ。

また家庭内で使おうとしても、プロジェクターを投影できるちょうどよい壁が無い、なんてこともある。ソファーに座て使おうと思ったら、壁が遠すぎてプロジェクタースマートフォンから投影した映像がボケてしまう、なんてこともありうるだろう。

それでも今、Hawkが発売されるのは、スマートフォンを取り巻く環境が大きく変わりはじめたからだ。今やだれもがストリーミングで動画を楽しむ時代になった。YouTubeなどの動画配信サービスだけではなく、今ではTV番組や映画もストリーミングで視聴できる時代である。スマートフォンで動画を見ている人が、自宅ではより大きい画面で視聴したいと思うのは当然の流れかもしれない。

だがここで注意も必要だ。スマートフォンで動画を楽しむ使い方が増えているとはいえ、最近伸びているのは長時間の映画やドラマよりも、数分程度の短時間のビデオクリップなのだ。今までSNSで写真を送っていたものが動画に変わったり、YouTubeでも一発芸で楽しませてくれる短編ビデオの利用が伸びている。そのような動画はなにも大画面で見る必要は無く、むしろスマートフォンの画面だからこそ楽しめるものだろう。

同社はプロジェクター内蔵タブレットも手掛けるが、小型のスマートフォンにより大きな注目が集まる

同社はプロジェクター内蔵タブレットも手掛けるが、小型のスマートフォンにより大きな注目が集まる

しかしスマートフォンの画面を気軽に大画面に投影できるプロジェクタースマートフォンが出てくれば、スマートフォンを使っての動画の視聴スタイルも変わってくるだろう。帰宅途中の電車の中で映画を見ながら、帰宅後は自室の壁面に映画の続きを投影して楽しむ、といった使い方もできる。Hawkは本体のホームボタン部分をダブルタップするだけでスマートフォンの画面をプロジェクターから投影できるので、画面の切り替えも簡単だ。TVを持たない若い世代などには、意外と受ける製品になるかもしれない。

そしてクラウドの利用が一般的になった今、動画や写真、あるはプレゼン資料をいちいちダウンロードする必要も無くなりつつある。スマートフォンで撮影した写真もGoogleフォトやAmazonプライムフォトなら容量無制限でアップロードできる。しかも4Gの高速回線を使えば、クラウドからの写真閲覧もストレスは少ない。プロジェクタースマートフォンから自分のクラウドサービスにログインし、、それらの写真を即座にプロジェクターを使って投影することも十分実用できるわけだ。

初期のプロジェクタースマートフォンが発売された数年前は、3Gの通信回線は遅く、クラウドサービスの保存容量もあまり多くなく、気軽にデータを保存できる環境ではなかった。しかし今の時代なら、スマートフォンにデータを保存せクラウドだけを使う、という運用も出来ないことはない。日本でもソフトバンクから発売されたクラウドスマートフォン「Robin」は、スマートフォンの利用状況に応じてデータを自動的にクラウドへ転送するだけではなく、利用頻度の低いアプリもクラウドへ自動バックアップし、使う時にクラウドから再ダウンロードして利用する機能を備えている。クラウドの利用が十分実用的になった一例の製品と言えるだろう。

本体の厚みは若干増してしまう。とはいえ出っ張り部分は少なく持ちやすい

本体の厚みは若干増してしまう。とはいえ出っ張り部分は少なく持ちやすい

プロジェクタースマートフォンは本体の厚みが増すことや、プロジェクターが電力を食うので投影中は電源接続が必須となるなど、まだまだ課題は多い。またHawkの予定価格は750ドルと、ミッドレンジ相当のスマートフォン本体性能に対して価格は割高だ。コンシューマー層に販売するのであれば、動画配信サービスの視聴料と合わせてのセット割引販売など、今までのスマートフォンには無かったビジネスモデルの構築も必要だろう。なおスマートフォンと動画配信をセットにした販売モデルは中国のLeEco(LeTV)がすでにアジア各国で展開している。

あるいはGoogleが開発中で間もなく製品が出てくる予定の、モジュール式スマートフォン「Project Ara」のように、後からモジュールを取り付けて機能拡張できる製品に、プロジェクターモジュールが用意されれば購入層は増えるかもしれない。モジュール式スマートフォンはLGがカメラグリップやHi-Fiオーディオユニットを取り付け出来る「G5」を発売したように、スマートフォンの機能を後からハードウェアで拡張する製品も登場している。

過去に何製品かが登場したものの、ニッチな製品止まりとなっているプロジェクター内蔵のスマートフォンやタブレット、果たしてHawkがどのような戦略で各国でのビジネスを展開していくのか、注目したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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