お子さんの急病時にその緊急性がわかるアプリ|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

誰でもが持ち歩いて使っているスマホだからこそ、何か社会に役立つような活用が進むと嬉しいですね。今日ご紹介する「小児救急支援アプリ」は、万が一お子さんが急病やケガの際に、救急車を呼ぶべきかどうかの判断を助けてくれるというもの。

小さなお子さんの病気やけがの際に緊急性の判断ができるアプリ

 モバイルコンテンツ分野の業界団体である、一般社団法人モバイル・コンテンツ・フォーラム(以下、MCF)は、優れたモバイルプロジェクトに対して賞を授与する「モバイルプロジェクト・アワード」を2002年から毎年開催しています。そして筆者は2005年からこのアワードの審査員を務めています。従来はモバイルコンテンツ、ソリューション、ハードウェアが対象だったのですが、2010年からは「MCF社会貢献賞」という部門が追加され、「モバイルを利用して、教育、地域活動支援、スポーツ、文化等を社会に貢献しているプロジェクト」に対して賞を授与しています。

 この「MCF社会貢献賞」が追加された翌年には東日本大震災が発災、ますます携帯電話やスマートフォンを社会に有効に活用したいという様々なプロジェクトが各地に生まれるようになり、毎年多数のプロジェクトやサービスが応募されてきています。

 さる7月4日に「モバイルプロジェクト・アワード2016」の表彰式が開催され、筆者はこの「MCF社会貢献賞」のプレゼンターとして登壇させていただきました。2016年の受賞プロダクツは、大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターと大阪市消防局が共同開発したスマホアプリ「小児救急支援アプリ」です。このアプリは、小児(0〜14歳)が病気またはけがなどで容態が急変したようなとき、その症状の緊急度が低いのか、高いのかの判断を助けてくれるアプリです。

 操作はとても簡単。アプリを起動し、年齢と性別を選択。その次に症状を選択しますが最初は「病気」と「けが・異物(中毒、熱中症を含む)」の二択となります。このどちらかを選ぶと、さらに詳細な症状の選択画面になりますので、近い状態を選択していきます。項目により症状選択の階層が深くなる場合がありますが、最終的にその症状から疑われる病気やけがの「緊急度」を判定してくれます。緊急度が「高」であれば、そのまま画面から119番発信できます(ただし、大阪府内でしか使えません)。また、緊急度が「中」であれば、「救急安心センターおおさか」につながり、専門家からの電話相談に乗ってもらえます。緊急度が「低」であれば、該当する病気やけがの診療科目が何科に該当するのかが表示され、そして「病院検索」画面に遷移します。病院検索画面では、位置情報を使って自分のいる場所から最寄りの病院がリストアップされます。

 救急車を呼ぶ119番発信の機能、電話相談、病院検索等は大阪府内でしか利用できませんが、症状から緊急性があるかどうかを判定する部分は他の地域の方でも、いざというときに役立ちそうです。小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、万が一の時にあらかじめインストールしておくといいかもしれません。

「小児救急支援アプリ」起動画面。年齢と性別を選択します

「小児救急支援アプリ」起動画面。年齢と性別を選択します

最初の二択は「病気」か「けが・異物」か

最初の二択は「病気」か「けが・異物」か

「病気」を選択しさらに症状を選択していきます

「病気」を選択しさらに症状を選択していきます

「吐き気・嘔吐」を選択すると、さらに詳細の症状選択が

「吐き気・嘔吐」を選択すると、さらに詳細の症状選択が

症状から緊急度が高いと判断されたらすぐに「119番発信」のリンクへ

症状から緊急度が高いと判断されたらすぐに「119番発信」のリンクへ

緊急度が「中」の場合は「救急安心センターおおさか」に通話でつながり、電話相談に乗ってもらいます

緊急度が「中」の場合は「救急安心センターおおさか」に通話でつながり、電話相談に乗ってもらいます

緊急度が「低」の場合は想定される診療科目が表示され、近隣の病院を検索できる画面へ

緊急度が「低」の場合は想定される診療科目が表示され、近隣の病院を検索できる画面へ

病院検索では位置情報を使って最寄りの病院一覧が表示されます

病院検索では位置情報を使って最寄りの病院一覧が表示されます

大学病院と消防局がタッグを組んで共同開発

 このアプリを発案されたのは、大阪大学医学部付属病院高度救命救急センター医師の片山祐介先生。もちろん、医療関係者側の知見だけではアプリは成立しません。救急の現場の知識や経験も求められてきますし、病院の情報は消防局に集約しています。このため、大阪大学医学部と大阪市消防局救急部救急課がタッグを組んでこのシステムを完成させました。

 もちろん、アプリの判断がすべてではありません。あくまでも参考情報として使うべきものですが、これまでに見たこともない急性の症状を呈したお子さんを見て案外多くの親御さんはあたふたしてしまうものです。そんなときに、このアプリは心強いお守りとなってくれるはず。

 一方、消防局としてもこのアプリは大きなメリットが生まれそうです。重篤な症状と思って救急車を呼んでみたところ、じつはそれほど症状は重くなかったというようなケースは少なくないそうです。救急車の数が限られている中で、本当に緊急性が高い患者さんのために救急車が運用されるべきなのです。このアプリは緊急性の低い119番通報を減らし、より効率的に救急車を運用する可能性を広げます。

 119番発信や電話相談、病院検索も、いざという時に大変ありがたい機能です。このアプリは現在大阪府全域に対応しているようですが、ぜひ他の地域でも使えるように各地の自治体などが動き出すと良いですね。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
IoT品質検証

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