2つのドコモ回線が同時に利用可能、デュアル待ち受けスマホで市場はどう変わる?|山根康宏のワールドモバイルレポート

最近のスマートフォンの中にはSIMカードが2枚入るものも増えている。だが片側は日本では利用できない2GのGSM方式となるため、実際に利用できるSIMカードは常に1枚だけだ。しかし海外に持ち出せば片側のSIMカードで4GのLTEや3GのW-CDMAの高速通信を行いつつ、もう1枚のSIMカードはGSMで音声通話が利用できる、2枚のSIMカードの同時待受けが可能となる。アジア各国ではSIMカードを2枚を料金や電話をかける相手に応じて使い分ける利用者も多く、デュアルSIMスマートフォンの需要も高い。

日本では2枚同時待受け可能なスマートフォンが無いことから、SIMカードの複数枚利用は一部のマニア層などに限られているのが実情だろう。だが新興メーカーのXiaomiが発売した最新モデルの「Mi 5」は4Gと3Gの同時待受けが可能となる。つまり片側のSIMカードでLTE回線を使いつつ、もう片側のSIMカードではW-CDM回線が利用可能なのだ。このMi 5ならば日本でも2枚のSIMカードを入れて両方を同時に使えるのである。

一見すると普通のスマートフォンに見えるXiaomiのMi 5

一見すると普通のスマートフォンに見えるXiaomiのMi 5

Xiaomiは中国の新興メーカーであり、中国やインド、インドネシアなど人口の多い新興国を中心に製品展開を行っている。今や年間数モデルのスマートフォンを発表する「準・大手」とも言えるメーカーであり、製品のコストパフォーマンスも非常に高い。その分1台当たりの利益は低く、大量生産でコストを下げつつ、薄利多売で利益を得るビジネスモデルを展開している。

そんなXiaomiが4Gと3Gの同時待受け対応端末を出したということで、先進国への製品展開も期待したくなる。とはいえ同社のビジネスモデルでは数が出ない市場への参入は現実的ではない。GSM方式の無い日本や韓国への展開もコストメリットや市場規模を考えると難しいところだ。Xiaomiの2016年第1四半期の端末販売台数は1480万台で、前年同期の1750万台から15%のマイナスとなった(IHS Technology調査)。Xiaomiとしては数の引き上げが急務だが、この差の270万台をカバーするためには数の出せる地域でのビジネスに集中する必要がある。

MM 総研によれば2015年の日本のスマートフォン出荷台数は2758万台。仮にXiaomiがMi 5を引下げて参入しても、シェア1%を取るのも難しいだろう。10-20万台規模しか見込めない日本市場へXiaomiが参入することは残念ながら考えにくい。

よく見ると4Gと3Gを同時に待受けしている。日本で使えば有用な機能だ

よく見ると4Gと3Gを同時に待受けしている。日本で使えば有用な機能だ

とはいえ4Gと3Gの同時待受けが可能な端末は、日本の携帯電話市場に新たなビジネスチャンスを作り、市場の活性化も期待できる。最も恩恵を受けるのはMVNO事業者だろう。現在のMVNO事業者はドコモ、au、ソフトバンクの大手MNOと価格面で差別化を図っている。だが価格の引き下げは限界に近付いており、ARPUの引き上げも難しい。また大手MNOはここにきてコンテンツや生活サービスを強化しており、「価格よりも利便性」を求めるユーザー層にはリーチ出来ていない。

しかし4Gと3Gの同時待受けが可能なスマートフォンがあれば、ドコモのSIMカードを入れたままで、もう片側用にMVNOのSIMカードを販売する、という売り込みができる。既存の電話番号やサービスはそのままで、より安い通話やデータ通信を行い時はMVNO側を使ってもらうことができるわけだ。仕事にはMNO、プライベート通話にはMVNO、といった使い分けの提案もできるだろう。会社契約で携帯電話を使っている人も、私用のために自分の回線を持ちたい時、同時待受けできるスマートフォンがあれば自費で契約したSIMカードを入れることができる。

海外ではSamsungやSonyもデュアルSIMスマートフォンを出している

海外ではSamsungやSonyもデュアルSIMスマートフォンを出している

またすでに既存のデュアルSIMスマートフォンを使い、SIMカードをいちいち切り替えて1回線ずつ使っている人も、同時待受けのスマートフォンならばその必要も無くなる。通話特化のSIMカードとデータ通信特化のSIMカードの組み合わせや、キャンペーンなどで無料のSIMカードを使い分けるなど、SIMカードが2枚同時に使えるようになるとユーザー側もよりお得にスマートフォンを使うことができるようになるわけだ。

今のところXiaomi以外で積極的に4Gと3Gの同時待受けスマートフォンを出そうとしているメーカーはほとんど無い。世界シェア上位に入る大手メーカーのデュアルSIM端末も4G+2Gの同時待受けのものばかりであり、4GとCDMAの同時待受け対応という製品がわずかにある程度だ。だがXiaomiがMi 5で4G+3Gに対応させたのは、中国で4G利用者が増え複数の4G回線契約をしている利用者が多くなったことを受けてのこと。いずれは新興国でも4G+2Gではなく4G+3Gの同時待受け需要が高まり、各社から対応製品が出てくるだろう。

中国の4G利用者増が4G+3G同時待受けスマートフォンを生み出した。各メーカーも追従するだろう

中国の4G利用者増が4G+3G同時待受けスマートフォンを生み出した。各メーカーも追従するだろう

今や日本もメーカが端末を自由に販売することができる国になった。2回線同時待受けスマートフォンは、大手MNOとしては利用の一部をMVNOに食われてしまうため導入しにくいところだろう。しかしSIMフリーでメーカーが独自に日本市場に投入し、それをMVNOが採用することも十分可能だ。大手メーカーの4G+3G同時待受けスマートフォンが日本で登場する日もそう遠くないかもしれない。その結果「一人2回線契約」が増え、スマートフォンの利用頻度も高まれば市場全体が今よりも活性化されることになるだろう。Mi 5に続く、日本でも2回線同時待受け可能な製品の登場に期待したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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