スマートウォッチにLTE、高速通信対応でウェアラブルが変わる|山根康宏のワールドモバイルレポート

Apple Watchを始めとする腕時計型のウェアラブルデバイス、いわゆるスマートウォッチの多くはスマートフォンとBluetoothで接続して利用する。そのためスマートウォッチ単体では使いにくいのが難点だ。ところがLGから登場した「LG-W200」は単独で通信できるLTEモデムが内蔵されている。しかも機能は非常に高く、スマートウォッチの使い方を大きく変える製品となりそうだ。

初期のスマートフォンが腕時計サイズに

LGの新しいスマートウォッチ「LG Watch Urbane 2nd Edition LTE(LG-W200)」はOSにAndroid Wearを採用した製品だ。最大の特徴は単独で通信できることで、4G(LTE)、3G(W-CDMA)、2G(GSM)の3方式に対応している。2015年春に発売したスタイリッシュなスマートウォッチ「LG Watch Urbane」の後継モデルでもあるが、実はLG Watch UrbaneにはLTEを搭載した「LG Watch Urbane LTE」も存在していたのだ。そのためLGのLTE搭載スマートウォッチは、LG-W200が2モデル目の製品となる。

単体で通話や通信ができるLG Watch Urbane 2nd Edition

単体で通話や通信ができるLG Watch Urbane 2nd Edition

だが初代のLG Watch Urbane LTEはSIMカードを利用しないソフトSIM(eSIM)を採用したことにより、特定の通信事業者でのみしか利用できなかった。発売先は韓国だけで、せっかく単独の通信機能を搭載したものの、そのメリットを享受できるユーザーの数はわずかだったのだ。またOSはLGが独自開発した「LGウェアラブルプラットフォーム」を採用したため、実質的にアプリが後から増えることは無く、プリインストールアプリのみでの利用に留まってしまった。LGはAudiと協力して同スマートウォッチから自動車のドアの鍵を開閉するデモなどを製品発表会の場で行ったものの、その後自動車との連携などの機能のアップデートが行われることは無かった。

これに対して新発売となったLG-W200はOSがAndroid Wearであることからすでに数多くのアプリケーションが利用できる。デベロッパーの数も多く、これからLTE通信を活用した様々なアプリの登場も期待できるだろう。またナノSIMカードを利用するため、世界中の通信事業者の回線を利用することも可能だ。最近は1契約で複数のSIMカードを利用できる「マルチSIMカードサービス」を提供する事業者が増えているので、LTE対応のスマートウォッチユーザーは追加コスト無しに通信回線を利用することも可能だ。

前モデル同様にスタイリッシュな本体デザイン

前モデル同様にスタイリッシュな本体デザイン

LG-W200は本体性能も大幅にアップしており、今までのスマートウォッチより一歩先のスペックを搭載している。ディスプレイは1.38インチで前モデルよりわずか0.08インチの大型化に留まるが、解像度は480×480ピクセルと大幅にアップした。前モデルの320×320ピクセルのディスプレイ解像度は他社のスマートウォッチと比べても高い方だったが、LG-W200のこの解像度はApple Watchなどと比較しても群を抜いて高い。一昔前のスマートフォンのディスプレイ解像度が320×480ピクセルだったことを考えると、それよりも高精細なのだ。

メモリ容量はRAM768MBにROM4GBで、このサイズとしては高容量だろう。バッテリーサイズは570mAhと大きく最大35時間の待ち受け時間、通話なら120分が可能だという。本体はIP67の防水防塵に対応しているので水回りの作業時に外す必要は無いし、小雨程度の天気の中でも安心して使うことができる。

LTE搭載でスマートウォッチの真価が発揮できる

LTEを搭載したLG-W200はそのまま単独で通信できることから、外出時にスマートフォンを忘れてしまっても腕時計だけで通話をしたり、SNSのタイムラインやメッセージの通知などを受けることが出来る。もちろんスマートフォンの電池が切れてしまっても同様のことができるのだ。ジョギングなどのスポーツ時、スマートフォンを身体に装着するのはいろいろと面倒なものだが、スマートウォッチ単体である程度のことができればスマートフォンをロッカールームに入れたままにしておくこともできる。スポーツ中にポケットに入れたスマートフォンを落としてしまい破損させる心配も無くなるし、置き忘れや盗難の防止にもなるだろう。

これまでに発売されたスマートウォッチのいくつかの製品は、高い機能を売りにした製品もあった。
しかし常にスマートフォンと接続して使う必要がある製品は、どんなに機能が高くとも利用シーンは限定されてしまう。そもそもスマートウォッチがいくら高機能になったところで、スマートフォンには敵わないのである。スマートウォッチの画面でメールの着信を確認しても、結局はスマートフォンを取り出したほうが読みやすいのだ。

だが単体で通信ができるようになれば、スマートウォッチの高機能化はアプリやサービスをより使いやすいものにしてくれる。腕を目の前に持ってきただけで天気予報を取得したり、あるいはソーシャルサービスのメッセージの通知だけをスマートウォッチで受け取り、タイムラインはスマートフォン側で受ける、といった使い方もできる。スマートフォンで得られる情報を全てスマートウォッチに流すのではなく、腕時計の小さい画面に適したアプリやサービスだけをスマートウォッチ内蔵のLTE回線を利用する、という使い分けをすればスマートウォッチはより便利なツールへと進化していくだろう。

LTE通信を活用するアプリの登場も望まれる

LTE通信を活用するアプリの登場も望まれる

とはいえLTE搭載スマートウォッチには弱点もある。それは電池の持ち時間だ。容量が増えたとはいえ、常に通信を行う状況ではLG-W200の内蔵電池も半日程度でゼロになってしまうだろう。LG-W200の充電はマグネット式のコネクタを使うようだが、より簡単に充電できるワイヤレス充電台もぜひ用意してほしいもの。また腕輪型のモバイルバッテリーなど、スマートウォッチを腕にはめたままで充電できるようなアクセサリも欲しい。スマートフォンのマイクロUSB端子から直接スマートウォッチを充電できるケーブルがあると便利かもしれない。

LG-W200の価格は4-5万円程度とやや高いものの、通信回線を内蔵していることから通信事業者との2年契約で割引販売されるケースも出てくるだろう。もし毎月数千円程度で利用できるのならば、Wi-Fiだけを搭載したスマートウォッチよりLG-W200のほうが使いやすいだろう。なかなか普及しないスマートウォッチだが、LTEを内蔵した製品が次々に出てくればこれから利用者が増えてくるかもしれない。他社にもぜひ追従してほしいものだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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