家電とスマホの連携は常識?中国の家電展示会に見るスマート家電|山根康宏のワールドモバイルレポート

Wi-FiやBluetoothを内蔵しルーターなどを経由しスマートフォンと接続できるスマート家電の数が年々増えている。この分野をリードするのは韓国勢で、海外のIT関連大型展示会ではSamsungとLGがスマートフォンやタブレットを使った家電コントロールの展示に力をいれている。だがここに来て中国の家電メーカーも自社製品のスマート化を急速に進めている。2016年3月に上海で行われた中国の大型家電展示会「Appliance&electronics World Expo」(AWE2016)でその様子を探ってきた。

スマートフォンと連携可能、将来は自動運転も

中国の家電メーカーと聞くと、日本でも特徴的な製品を出しているHaier(ハイアール)の名前を思い浮かべる人も多いだろう。そのHaierはAWE2016で最大規模のブースを出展。AWE2016は上海郊外の大型展示場で開催されたが、そのうちのホール1つがほぼそのままHaierのブースだったのだ。ブース内には冷蔵庫やTV、暖房機器などから高級家電など様々な製品が展示されていた。女性や若い世代を狙ったカラフルな色合いの家電など、メーカー名を見なければ中国製とは思えないような製品も多かった。

そのHaierブースで目立っていたのがスマート家電だ。同社のTVを設置したリビングルームを模した空間に、エアコンや空気清浄機、照明などを配置しスマートフォンから自由にコントロール。もちろん外出先からの操作も可能だ。Haierのこれらの家電はQualcommのスマートホーム規格「Alljoyn」に対応しているため、Haier以外の製品を混在させることも出来る。とはいえ総合家電メーカーのHaierだけに、自社製品だけでスマートホームを構築することも可能だ。

中国の家電展示会のHaierブース。1ホールのほぼ全てを1社で利用している

中国の家電展示会のHaierブース。1ホールのほぼ全てを1社で利用している

中国ではまだまだスマートホーム、スマート家電の普及は進んでいないものの、このような展示会で実際に自分のスマートフォンを使って家電がコントロールできるとなれば、次の買い替え時にはHaierの家電を買おう、と考える来訪者も多いことだろう。最近の中国では核家族化と共稼ぎが増えており、家庭を留守がちにする若い夫婦などにはスマート家電はぴったりの製品と言える。

またスマートフォンで利用するアプリも、単なる家電のコントロールを超えてプラスアルファの機能を持たせている。家電製品の使い方のオンラインマニュアルを読むことができるのはもちろんで、操作が分からなくなってもスマートフォンから使い方を検索することができる。紙のマニュアルとは異なり使いたい機能を直接調べることができるのは便利だ。

Hiaerの家電を使ったスマートホーム。スマートフォンで全ての機器のコントロールも可能だ

Hiaerの家電を使ったスマートホーム。スマートフォンで全ての機器のコントロールも可能だ

また今日の天気を表示しエアコンのON/OFF時間の設定の目安にもすることができる。将来はその日の天気予報からエアコンの温度設定やON/OFFを自動でコントロールする機能も搭載される予定だ。スマート家電はインターネットに常に接続されていることから、WEB上の様々なデータと連携させることもできる。Haierに限らず他社のブースでも、スマート家電の将来は人間によるスマートフォンからのコントロールではなく、データを利用した自動運転を目指しているという説明をよく見かけた。

「とにかくつなげる」の先にスマートな生活がやってくる

Haierが採用するAlljoynのように、スマート家電は共通のプロトコル(規格)で動作すれば複数の家電を一つのアプリでコントロールしたり、メーカーを超えたスマート家電を共用できる。だが中小のメーカーの中には自社独自のアプリで自社製品だけをコントロールできるようにしたものも増えている。AWE2016の会場内でも、中小メーカーのブース内にWi-Fiのロゴやスマートフォンのアプリ画面が展示されているケースが目立った。

これは中国の家電各社が、中小メーカーですら「スマートフォンと連携できる製品を出すのが今のトレンド」と考えていることの表れなのだろう。例えば中国ではお風呂よりもシャワーが一般的で、温水を貯める方式の給湯器を設置している家も多い。その給湯器にWi-Fiを搭載しスマートフォンのアプリで温度コントロールができるものもあった。しかし実際は温度コントロールは給湯器のつまみを回せば済むことであり、Wi-Fi対応はむしろコストが上がるだけにも思える。

菜種油(なたねあぶら)の絞り器。こんな製品にもWi-Fiが搭載されている

菜種油(なたねあぶら)の絞り器。こんな製品にもWi-Fiが搭載されている

一方、AWE2016には日本の家電メーカーの出展も目立った。Panasoniciは大型ブースを構え、日立も冷蔵庫やエアコンを展示。いずれも「高性能」「安心」「使いやすさ」をうたい文句にしており、スマート化という点では中国メーカーほど派手な動きは見られなかった。それでも多くの来訪者が日本メーカーのブースに集まっており、中国国内での日本家電人気を再認識させられたほどだ。Panasonicブースを訪れていたある来場者は「やっぱり家電は日本製がいい」と展示内容を見ながら感想を漏らしていた。

中国家電のあらゆる製品にWi-FiやBluetoothのモジュールが搭載されるようになれば、いずれはAlljoynのような共通プロトコルに対応させる動きも出てくるだろう。「まずはスマホと連携、共通化はその先」という動きも、結果として中国の家電全体のスマート化を強力に推し進めるものになるのは間違いない。だが家電本来の機能や安全性を軽視した製品では中国国内はもちろんのこと、海外へ輸出することも難しい。AWE2016を視察しての雑感は、中国メーカーによるスマート家電の動きが活発化しているものの、製品の信頼性や品質をどのように上げていくのか、まだまだ乗り越えるべき課題は多いと感じられた。

タイガーの炊飯器の展示。スマートフォンとは繋がらないものの来場者の数は絶えない

タイガーの炊飯器の展示。スマートフォンとは繋がらないものの来場者の数は絶えない

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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