世界2位のスマホ大国になったインド、世界進出を狙う地場メーカー|山根康宏のワールドモバイルレポート

世界最大のスマートフォン市場といえば中国だ。Strategy Analyticsによれば2015年の中国のスマートフォン出荷台数は4億3780万台で他国を依然大きく引き離している。だがその後を追いかけるアメリカをついにインドが追い抜いた。インドのスマートフォン市場規模は同社によれば2014年第1四半期には日本を抜きアメリカに次ぐ世界3位になっていた。そして2015年はそのアメリカも抜きついに世界2位にまで浮上したのだ。Counterpointによると2015年のインドのスマートフォンは前年比123%増で1億台を突破、ユーザー数も2億人を超えたとのこと。インドの人口が約12億であることを考えると、スマートフォン販売数はこれからまだ増加していくだろう。

数年前まではインドでも従来型の携帯電話の利用者が多かった。しかし今やあらゆる世代の消費者がスマートフォンへ飛びついている。実はインドのスマートフォンシフトは携帯電話シェア全体のメーカーランキングを見てもよくわかる。長らく「Nokiaのケータイ」が人気だったインドでは、NokiaがMicrosoftに買収された後、携帯電話出荷台数のシェア5位以内にそのMicrosoftが常に顔を出していた。しかし2015年第4四半期のデータからはMicrosoftがついに消滅してしまった。同社のスマートフォン「Lumia」シリーズの売り上げ減もあるだろうが、Nokiaブランドの携帯電話も販売数を極端に減らしている。つまりインドはもう誰もがスマートフォンを求める市場になっているということなのだ。

2015年第2四半期にはインドの携帯電話(スマートフォン含む)シェアで5位に入っていたMicrosoft。だが第4四半期にはランク外に落ちた

2015年第2四半期にはインドの携帯電話(スマートフォン含む)シェアで5位に入っていたMicrosoft。だが第4四半期にはランク外に落ちた

Nokiaブランドの”ケータイ”は現在もMicrosoftが販売している。2015年11月にはこの新モデル「Nokia 230」を発売。55ドルながらOperaブラウザ搭載、メイン・フロントカメラにフラッシュ搭載。

Nokiaブランドの”ケータイ”は現在もMicrosoftが販売している。2015年11月にはこの新モデル「Nokia 230」を発売。55ドルながらOperaブラウザ搭載、メイン・フロントカメラにフラッシュ搭載。

ではインドではどのスマートフォンが売れているのだろうか。インドの平均取得は中国の数分の一とも言われているが、低所得者が多い国だけに人気スマートフォンの比較を所得と紐づけて考えることは難しい。ましてやスマートフォンはSIMフリー品が販売されており、携帯電話料金はプリペイドが基本だ。つまり日本のように高い基本料金で顧客を2年縛り、スマートフォンを格安販売するビジネス手法は全く受け入れられない市場なのである。そのためiPhoneはごく一部の高所得者層にしか売れておらず、2015年の販売台数は200万台程度、シェアにして2%程度(Counterpoint調査)に留まった。中国では新モデル販売直後にiPhoneのシェアが1位になることもあるが、インドではiPhoneがシェア上位に顔を出すことは恐らく今後も無いだろう。

2015年のインドのスマートフォンランキングを見ると、1位はSamsungでその後を地元インドのメーカーが追いかけている。Samsungは一時期地元メーカーに追い抜かれ「Samsungの勢いも止まった」と報じるメディアもあったが、2015年中に製品ラインナップの統廃合を行い、エントリーモデルとミッドレンジモデルを強化した結果シェアは25.7%、1位の座をキープし続けている。だが2位以下のインドメーカー3社を合計すると32.3%となりSamsungを逆転する。

シェア2位のMicromaxは早い時期にスマートフォンシフトを進めた結果、インドの地場メーカーとしては他社の追い上げを許さず、常にトップを走り続けている。その勢いは一時Samsungを抜いたほどで、多彩なラインナップの製品数でインドの消費者の注目を常に集めさせている。インドは中国よりも低価格端末に人気が集まる市場であり、50ドルから100ドル程度の格安スマートフォンが売れ筋だ。Micromaxはその低価格帯のモデルだけではなく、別ブランド「Yu」を立ち上げ高性能スマートフォンの販売にも乗り出した。2015年12月発表の「Yutopia」は5.2インチWQHDディスプレイ、Snapdragon810、RAM4GB、21メガピクセルカメラと大手メーカーのハイエンドモデルと肩を並べるほどの高スペック。価格は24999ルピー(約4万3000円)と安い。

Micromaxのハイエンド端末「Yutopia」。先進国でも通用するスペック

Micromaxのハイエンド端末「Yutopia」。先進国でも通用するスペック

また3位のIntexと5位のLavaもその製品数は国外メーカーを圧倒している。IntexのWEBを開くと、スマートフォン一覧で表示されるモデル数は実に59機種。その大半が6000ルピー、1万円以下のモデルだ。3Gモデルの最低価格は2399ルピー、約4000円。3.5インチHVGAディスプレイ、2メガピクセルカメラと先進国ではもう商品価値の無い製品だが、インドの低所得者層たちはこぞってこのクラスのスマートフォンを購入し、アプリやスマートフォンサービスを楽しんでいるのだ。これらの層にとって欲しいメーカーのスマートフォンとは「数千円で買える手軽な端末を次々に出してくれる地元メーカー」の製品。つまりインドメーカー人気は今後さらに高まっていくだろう。

ちなみにインドのこれら3社がどれくらいの勢いで伸びているのか、Counterpointから興味深いデータが出ている。それは2015年の各メーカーの出荷数の前年比の伸びを示したグラフだ。それによると2015年、最も出荷台数を伸ばしたのは中国のMeizuで前年比300%、それに次ぐのがインドのLavaの214%、Intexが173%と追いかける。ちなみに好調と言われたAppleの2015年の伸び率は20%だった。LavaとIntexの伸びがどれだけ勢いがあるか、よくわかるだろう。しかも両社もその販売数の大半はインド国内なのだ。

Intexはスマートフォンだけで約60機種を販売。低価格モデルも多い

Intexはスマートフォンだけで約60機種を販売。低価格モデルも多い


2015年の出荷台数伸び率を見るとMeizu、Lava、Intexが突出している

2015年の出荷台数伸び率を見るとMeizu、Lava、Intexが突出している

さてインド3社の動きがインドだけのものであれば、日本や先進国にとっては「自国には関係ない、遠い国の話」で終わるだろう。だが各社は2016年から海外市場展開を本格化させようとしている。すでにインド周辺国(バングラデッシュ、ネパール、スリランカ)やロシアなどに進出を果たし、アフリカや中東にも販路を広げる予定だという。この動きは中国からアジアそして東南アジアへと販路を広げていった、中国メーカーの動きの再現にも見える。いきなり全世界を制覇するのではなく、自国の周辺から足固めをしていく販売戦略は無理も無く成功を収めるだろう。

だが前述のYutopiaのように、先進国で販売しても十分通用するモデルもインドメーカーは作る力をつけはじめた。そのYotopiaはアメリカでの販売も噂されており、Amazonなどオンラインで販売するのであれば店舗展開も不要で進出の敷居も低い。Micromax/Yuのブランド力は弱いものの、スペックだけを見れば購買欲を十分そそられる製品だ。口コミで評判が広がればヒット商品になる可能性も高く、その後から低価格モデルを展開していけば、ブランド力もあとからついてくるであろう。

日本でも最近は少しずつ中国メーカーのSIMフリースマートフォンが増えている。もしかすると2016年中にはインドメーカーの製品が登場する可能性もあるかもしれない。Yutopiaなら十分日本の消費者に受け入れられるだけのスペックは備えているし、2万円以下の低価格モデルでもMVNO向けのミドルレンジモデルとして通用するだろう。インドメーカーの今年の海外市場への動きは無視できないものになるかもしれないのだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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