MWC2016でスマホ新製品より目立ったVR。2016年はVR元年になるか|山根康宏のワールドモバイルレポート

公開日: : 最終更新日:2016/07/04 モバイル研究家コラム, 山根康宏のワールドモバイルレポート , ,

スマートフォン以外にも注力するスマホ各メーカー

大手メーカーの最新スマートフォンが次々に発表されたMobile World Congress 2016(MWC2016)。毎年2月は世界中のメディアでこれらの新製品が大きく取り上げられる。その中のいくつかの製品は日本でも発売予定だ。SonyとSamsungの新モデルは日本向けは確定、LGの動向やSIMフリーで日本に製品を出しているAlcatel(TCL Communication)の新製品の動きも気になるところだ。

各社の新製品発表会はMWC2016の前日などに行われる。取材する側もそのスケジュールの調整は困難を極めるほどだ。しかも今回の各社の発表会では、スマートフォン以外の製品も多数発表されたのだ。その中でも目立ったのがVR(バーチャルリアリティー)関連の製品。各社がこぞってそれらの製品を発表したということは、2016年は「VR元年」になるのかもしれない。

すでにSamsungのVRヘッドマウントディスプレイ「Gear VR」は1万円台の低価格な製品が発売中で、同社のGalaxyシリーズを持っていれば手軽にVRの世界を楽しむことができる。ヘッドマウントディスプレイを頭に装着してゲームをプレイすれば、まるで空中の3次元空間にいるかのごとく、上下左右あらゆる方向に頭を向ければ目の前に広がる光景もリアルタイムで動くのだ。

MWC2016のSamsungブース。Gear VRを使ったデモは大人気

MWC2016のSamsungブース。Gear VRを使ったデモは大人気

とはいえVRはまだまだゲームなどその応用事例は多くない。最近では車や家のショールームのデモにVRを使う例も増えているが、日常的にVRを利用するかと言えばほとんど使うことはないだろう。そこでVRをより身近なものにしようと、ここにきてスマートフォン各社からこぞって登場するのが360度撮影カメラだ。

360度撮影カメラは2013年に日本のRichoが「THETA」を発売。スティック型の本体にカメラを左右に備え、シャッターを押すだけでその場の360度の風景が1枚の写真に撮影できる。撮影した画像はパソコン上で表示し、マウスを使って画像を動かすと360度のあらゆる方向から写真を見ることができる。2015年には動画にも対応した「THETA S」が登場。これで撮影した360度撮影の動画をSamsungの「Gear VR」で見ると、動画再生中に頭を左右に動かすとあたかもその場にいるかのような錯覚を覚える。この両者の組み合わせはまさに「バーチャルに、その場にいる環境をリアルに感じられる」という、VRな動画を自分で作り、再生することができるのだ。

360度の静止画や動画が撮影でききる、Samsung Gear 360

360度の静止画や動画が撮影でききる、Samsung Gear 360

それに刺激を受けたのか、SamsungはMWC2016で自社初の360度撮影カメラ「Gear 360」を発表。実は同社の新製品発表会は、ステージを中央にしてその周辺に来客の椅子を並べるという、360度を意識したものだった。つまり同社の発表会の目玉は最新スマートフォン「Galaxy S7」「Galaxy S7 edge」ではなく、じつはこのGear 360だったのだ。

ポストスマホとして熱いVR+360度カメラ

Gear 360はボール型の形状で市販の三脚を取り付け可能だ。THETAがスティック状で直接手で持って撮影することを考えたデザインだったのに対し、Gear 360は机の上などに置いて使うことを考えているようだ。大容量の外部メモリにも対応し360度撮影の動画をどんどん録画しておける。Gear 360の発売時期はまだ先だが、Samsungは一部の国ではGalaxy S7シリーズの購入者にGear VRを無償提供する予定で、まずはVRヘッドマウントディスプレイを入手させ、あとからGear 360を買ってもらい手軽にVRを楽しんでもらおうと考えているようだ。

一方、LGも発売未定ながらVRヘッドマウントディスプレイと360度カメラを出展。LGの360度カメラはTHETAスタイルで、片手で手軽に360度の静止画や動画の撮影ができる。一方VRヘッドマウントディスプレイは他社品とは異なり眼鏡をちょっと大きくした形状だ。これは他社のVRヘッドマウントディスプレイが前面にスマートフォンを装着するのに対し、LGのものはスマートフォンは直接装着せずケーブルで接続して利用する。そのため大きさも小さく手軽に使うことができる。なおどうしても上下方向に隙間が空いてしまうことから、VRな動画を体験中に実際の外の光が入ってしまうこともある。とはいえ店舗でのデモ用途など、簡易的な利用には十分だろう。

LGのVRヘッドマウントディスプレイはスリムな形状で使いやすい

LGのVRヘッドマウントディスプレイはスリムな形状で使いやすい

そしてSonyも360度カメラを参考出展。SonyはMWC2016で「Xperia Xシリーズ」を発表したが、それと合わせて4種類のアクセサリ「Xperia スマートプロダクト」も発表。自律式のロボットやタッチ操作も可能な小型プロジェクター、音声操作と音声通知できるヘッドフォンなどSonyらしさを久しぶりに感じられる意欲的な製品が揃っている。そしてそのラインナップに加わるのが360度カメラの「Xperia Eye」だ。

Xperia Eyeは胸からぶら下げるなど、普段から身体に装着しておき思い立った瞬間に360度の撮影を行うことができる。顔認識機能などもそなえ、自動シャッターも可能だ。本体サイズも小さくデザインも良く、このカメラが360度撮影に対応しているとは思えないほど。Sonyは多数のカメラ関連製品も出しているが、Xperia Eyeはそれらとはまた異なるテイストの製品に仕上がっている。Xperia Eyeの登場は「日常の記録は360度で撮影する」時代がやってきたことを物語っているのかもしれない。なおSonyによると製品化時期は未定だが、これらコンセプトモデルはほとんどがその後製品化されているので、2016年秋のIFA2016あたりで正式発表されることを期待したい。

Sonyらしい製品のXperia Eye

Sonyらしい製品のXperia Eye

MWC2016ではHTCが高性能なVRヘッドマウントディスプレイ「VIVE」のデモを行い、またネットワークメーカーとなったNokiaが価格数百万円という超高性能な360度カメラ「OZO」をデモするなど、360度カメラとVRの動きが目立っていた。すでに各企業ブースでは製品やコンセプトにVRを活用する例が目立っているが、来年のMWC2016ではVRや360度カメラの製品そのものや、それらを使った新しいサービスなどが増えているかもしれない。VRの今年の動向には注目したいところだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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