およそ10年のスパンで繰り返されるケータイ端末の潮流|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 最終更新日:2016/07/04 モバイル研究家コラム, 木暮祐一のぶらり携帯散歩道

先日、携帯電話の歴史を説明する展示をしたいという相談を受け、ケータイ端末を260台ほどお貸出ししました。筆者の所有するケータイ端末は、1988年発売のショルダーホン以降、’90~’00年代のものを中心に主要な機種をコレクションしています。このコレクションですが、ざっと年代ごとに端末をグルーピングすると、およそ10年ぐらいのスパンで“時代が繰り返されている”ことに気づきました。

試行錯誤→普遍の繰り返し?!

 携帯電話の歴史を振り返ると、そのルーツは1979年にスタートした自動車電話とされています。そして自動車電話を車外に持ち出せるよう、バッテリーとハンドセット、無線機を一体化させたものがショルダーホンで、1985年に登場しています。これによって「持ち歩ける電話」がサービス提供開始されたことになります。そしてハンディタイプの「携帯電話」(といっても辞書みたいな大きさでした)は1987年にレンタルスタートです。現在からみて、およそ30年前の話です。その後、ショルダーホン、携帯電話とも一度フルモデルチェンジがあり(1988~89年)、そして1991年発売の「ムーバ」へとつながっていきます。

 今回のコラムでは、この黎明期のコレクションは割愛させていただき、1994年以降のケータイから説明させていただきます。

 1994年というのは、携帯電話業界に大変革がもたらされた年です。それまでレンタルでしか利用できなかった携帯電話等が、この年の4月から自由に販売可能となりました。それと同時に、各地域に最大2社しか無かった通信事業者に新たな参入が認められ、東名阪エリアではツーカーグループ(KDDIに吸収され、現在は消滅)、デジタルホングループ(現在ソフトバンク)を加えた4事業者体制になりました。さらに翌95年にはPHSサービスもスタートします。

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 まずはこの携帯電話業界大変革期である1994~95年の端末をご覧ください。その形状は実にユニークなものばかりなのです。左から、ソニー製の「マイクが飛び出すたばこサイズ携帯電話」、そして数字キーが一直線に配置された日本電装製端末、「立」をイメージしたデザインと言われる日立製PHS、女性向けをイメージしつつも結果的に「便座」とあだ名が付けられてしまったソニー製PHS、そして人間工学視点でデザインしたとされるソニー製のジョグダイヤルルーツ機。

 各端末メーカーが試行錯誤して端末を開発していたことが伺えますね。しかしながら、意欲的なデザインを採用したところで、それらの中から1台をセレクトしなくてはならないユーザーの大半は、「無難」な端末を選ぶことになります。結果的に、際立った端末ほど「売れない」ということに…。

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 そうなると、端末メーカーは「最も売れている端末」に右にならえということになり、気が付けばどのメーカーの端末も似通ったものばかりになってしまいます。こちらの写真は1996~97年頃の端末ですが、ストレートタイプの無難なデザインの端末ばかりになりました。

 この頃の携帯電話サービスはアナログ方式(1G)からデジタル方式(2G)にほぼ移行が進んだタイミングで、かつ「Windows 95」が発売されたことでインターネットの利活用が徐々に進み始めた時代でした。こうした環境で、携帯電話にもEメールやパソコン通信機能を搭載しようという新たな試みが行われます。

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 これらは1997~98年に市販された、Eメールやパソコン通信機能を試行錯誤の末に搭載した端末たちです。メーカー各社の工夫ぶりには頭が下がりますが、こうした奇抜な端末は一般のユーザーにはなかなか受け入れられません。いずれも一部のコアユーザー以外には浸透せず、不良在庫となっていったそうです。左から2つめはパイオニア製の全面液晶端末ですが、iPhoneが販売される約10年前にこうしたモデルが日本でデビューしていたことは本当に驚きですよね。

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 1997~98年の試行錯誤期を経てたどり着いた結論は「普通の形」へのこだわりでした。こちらの写真は1999年に発売されたiモードおよびEZweb搭載初号機です。それまでの一般的な形状のケータイ端末の中に、Eメール機能とブラウジング機能を搭載しました。結果的に大ヒットとなります。

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 2001年には当時としては画期的な、384kbpsの高速(!)データ通信サービスに対応したFOMAがスタートします(3G)。テレビ電話機能など、その当時のSFで見たような世界が現実のものとなったわけですが、一体何ができるんだ? と悩みそうなコンセプトデザイン的モデルもラインアップされました。右から2つ目の端末はシャープ製の電子手帳型FOMA。iモードメールをフルキーボードでタイピングできるというのが売りでした。大きなディスプレイを備えながらも、iモードを利用する際は画面中央タテに細長いブラウジング画面が表示されます。右端はこの電子手帳型FOMA付属のBluetoothハンドセットで、これを耳に当てて通話をします。当時の販売価格は約15万円(それでも赤字だったとか)。もちろん、売れてませんでした(笑)。その後のFOMAが普通の形になっていったのはもうご存知の通り。

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 こちらはスマートフォン黎明期の端末です。時期的には2005~07年頃でしょうか。この頃のスマートフォンの代名詞といえば、フルキーボードが搭載されていること。とはいえ、いずれも使いづらいものばかりでした。もちろん言うまでもなく、一般のユーザーには受け入れ難いものでした。

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 そして2007年、米国でiPhoneが発売開始。日本では翌08年にiPhone 3Gがデビューしました。そのシンプルながらも理想的なユーザーインターフェースを備えたスタイルは、その後のスマートフォンの定番になりました。同時に、それ以前のスマートフォンがいかに苦労を重ねて理想的な形状を模索してきたのかが偲ばれます。

 こうしてケータイの歴史をビジュアルで振り返ると、何かしら新しいビジネス環境が訪れるたびに、新たな機能等を取り入れるためにあれこれ試行錯誤してきたことがご理解いただけると思います。しかしながら、奇抜なものは一般には受け入れられず、その後は売れ筋製品のデザイン(=普遍的デザイン)に右に倣えという流れになることが、幾度となく繰り返されていることに気づかれると思います。

次に来るものは何か?!

 この「試行錯誤→普遍」の反復ですが、携帯電話業界でみると、およそ10年のサイクルで大きな変革が起こり、またその間の5年目あたりでも小変革が起きていることが分かります。

 たとえば、初めて「携帯電話」が製品化されたのが1987年です。携帯電話は「電話をする道具」だったものでしたが、これに新たな機能として1997年にメール機能が搭載されました。さらに1999年にはモバイルインターネットも。その間の1994~95年にはサービスの大変革がありました。1997年から10年を経た2007年には、iPhoneが登場して携帯電話の定義を大きく塗り替えました。こうした大きなトピックスの直前には、試行錯誤というか創意工夫というべきか分かりませんが、ちょっと引いてしまうようなプロダクトがたくさん生まれているというようなことが繰り返されているのです。

 さて、来年はiPhoneが世の中に登場して10年目を迎えます。こうした業界の変遷を振り返ると、来年はまた世の中を変えそうな新たなプロダクトの出現に夢が膨らむところです。はたしてどんなものが生まれ、世の中に定着していくのでしょうか。

 今現在試行錯誤が続いているプロダクトに目を向けてみましょう。その代表的なものの一つが「ウェアラブル」かもしれません。リストバンド型やメガネ型など、様々なウェアラブルデバイスが昨年あたりから数多く市販されるようになってきました。しかしながら、まだまだ奇抜だったり、利用性に工夫が必要なものばかりではないでしょうか。

 過去のケータイ端末の「試行錯誤→普遍」の変遷を見ると、まさにウェアラブルの試行錯誤期にあるように感じます。となると、来年あたりには決め打ちとなるようなデバイスが登場し世の中を席巻するようなことが起こるのかもしれません。楽しみですね。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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