スマホを無料で貸出して行動分析|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 最終更新日:2015/12/24 モバイル研究家コラム, 木暮祐一のぶらり携帯散歩道 ,

先だって、香港の中古スマホ流通事情をご紹介しましが、その取材の際に泊まったホテルの部屋の中に、驚くべきものを発見。それは“スマホ”なんです。「スマホがどうした?」って言われそうですが、ホテル側が「どうぞご自由にお使いください」という形で無料で宿泊者に貸出しているのです。国内各地を出張で放浪している筆者でも、日本ではこういうものを見かけたことがありませんでした。なるほどこれはものすごく画期的であり、一方で日本ではなかなか実現できないものなんだろうと察した次第です。

宿泊したホテルの部屋にスマホが用意されていた…

 筆者が香港で宿泊したホテルは、香港の中心部にあるカジュアルなホテルでした。一方で、ICTの活用は日本以上に進んでいる感じで、まずチェックインの際にはフロントでiPadが登場。予約内容をホテルのスタッフがiPadを操作しながら確認し、パスポートナンバー等、不足事項を追記入力していきます。そして、その画面を筆者にiPadで提示し、ホテルの利用内容に間違いがなければ、指でディスプレイ上にサインをします。これでチェックイン完了。そして鍵を渡され部屋に向かいます。部屋に入って最初に目にとまったのが、デスク上にディスプレイされるように置かれているサムスン製スマホ! 何でしょうか、これ?

 端末横の説明を読むと、ようするに滞在中に自由に持ち歩いて使ってよいスマホのようです。しかも、国内電話、国際電話とも通話無料。またデータ通信も3Gになりますが、自由に利用可能なのです。その利用料が請求されることもなさそうです。

 そして実際にスマホを操作してみると、香港滞在中に役立ちそうなアプリが一通り仕込まれているではありませんか。

 観光ガイド系のアプリはもちろん、地下鉄の乗り換え検索アプリや、お天気検索アプリ、お勧めのお店を検索できるアプリ、それらのお店で使える割引クーポンもついています。さらには、タクシー配車アプリとしてUberもトップ画面に配置されています。ようするに香港滞在中に使えるあらゆる便利なアプリが仕込まれているのです。

 日本から香港にスマホを持ち込んだ筆者でしたが、むしろホテルで用意されていたこのスマホを使えば無駄な通信料も発生しませんし、お得なクーポンも満載で、何の不自由もありません。うかつに日本から持ち込んだスマホを使おうものならデータ通信ローミング料金が馬鹿になりませんので、このホテルのスマホを使いこなしたほうがはるかに賢そう。

ホテルのデスク上に置かれていた、外国人観光客向けのスマホ

ホテルのデスク上に置かれていた、外国人観光客向けのスマホ

インターネット接続されているテレビのスイッチを入れてみたら、ウェルカムメッセージが。しっかりデータ連携しているようです

インターネット接続されているテレビのスイッチを入れてみたら、ウェルカムメッセージが。しっかりデータ連携しているようです

香港では昔から携帯電話の無料貸し出しが当たり前

 このホテルに設置されていたスマホはサムスンのGalaxyシリーズでした。おそらく、韓国・サムスン電子の製品プロモーションを兼ねたサービスなのでしょう。

 では、日本ではこうしたサービスはないのでしょうか。

 国内各地を出張して歩いている筆者ですが、たとえば九州エリアでチェーン展開するビジネスホテル「FORZA」では、部屋にiPadが設置されていました。最近の多くのホテルではテレビモニタと合わせてパソコン機能が利用できる(インターネット接続されている)ビジネスホテルは少なくないですが、それがもう少しポータブルになったものが、FORZAのiPadの事例なのでしょう。ただし、そのiPadはWi-Fiモデルであり、部屋から持ち出して利用することは意図していなさそうです。

 一方、香港のホテルに設置されていたスマホは持ち出し自由です。紛失などの心配はないのでしょうか。

 そこは、位置情報やユーザーの利用履歴を追える「スマホ」のこと、万が一ユーザーが持ち出して紛失してしまっても、紛失場所を追うことは不可能ではないでしょう。また、チェックイン時に宿泊者の決済情報も記録されていますから、スマホを持ち帰ってしまうような宿泊客がいれば、その賠償額を後から請求することも簡単です。ですから、宿泊者が意図して持ち帰ってしまうということも無いのでしょう。

 こうしたサービスは、たまたま宿泊したホテルのオリジナルサービスなのかと思ったら、香港在住の山根康宏氏いわく「どこのホテルにもあるサービス」なのだそうです。さらに言えば、もともと電話料金が安価だった香港では、携帯電話を使うことが世界に先駆けて「当たり前」な国だったからこそ、音声通話のみの携帯電話の時代から、ホテルの部屋に宿泊者向けに貸し出すための携帯電話が用意されているのが普通だったそうです。この宿泊者向けに貸し出していた携帯電話が発展したものが、この「自由に使えるスマホ」のようです。なるほど。

 世の中、「IoT」や「ビッグデータ」というキーワードがブームですが、香港ではおそらく、外国人観光客向けにこうしたスマホを貸し出すことで、観光客がどういったものに関心を持って香港を旅行しているのか、あるいはどういったところに立ち寄るのかなど、観光客の嗜好や行動を収集するツールとしても有効活用されているのでしょう。割引クーポンがたくさん入ったスマホですが、どのクーポンを使ったかで、人気のあるお店やそうでないお店などのデータも取れるでしょう。経路検索アプリやUberの利用で、観光地等をどういう経路で回ったかなどの行動も追えます。スマホ自体で位置情報も取れるはずですので、出かけた先それぞれで、どれぐらいの時間滞在したのかというようなデータも収集できるはず。従来の携帯電話貸し出しサービスに比べれば、スマホの時代となってはるかに有益なデータ収集が可能になるのです。これはお見事。

 日本では2020年の東京五輪に向け、外国人観光客向けにさまざまな観光施策が練られているところでしょうが、相変わらず何かとアナログな我が国。まさか、「紙」ベースのガイドマップなどを配るだけで終わることの無いよう祈りたいものです。2020年に向け、今からでも来日観光客の行動をしっかりと押さえ、日本でどのような楽しみ方をしているのか、さらにどんなニーズが求められているのかをしっかりデータとして収集する必要性を感じます。2020年で終わるのではなく、その後も引き続き世界からお客様に来日してもらえるようにアイデアを凝らすには、やはりしっかりしたデータ収集と分析が必要となるはずです。香港に見習って、日本でももっとスマホを有効に活用せねばという感じですね。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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