超大型タブレットがTVのスマート化を加速、18インチタブレットが相次いで登場|山根康宏のワールドモバイルレポート

タブレットの大きさは7インチから10インチが一般的だ。Appleが11月に発売した『iPad Pro』は12.9インチの大型サイズだが、Samsungも2014年に12.2インチの『Galaxy TabPro』『Galaxy NotePro』を発売しており、12インチ以上のタブレットも市場にはいくつか流通している。だがそれらの画面サイズを大幅に超える、18インチ前後のタブレットが2社から発表になった。持ち運びには不自由な大型タブレットが相次いで登場した理由はどこにあるのだろうか?

Samsung、TCLから相次いで18インチクラスのタブレットが登場

超巨大タブレットが発表されたのは2015年9月にベルリンで開催されたIT・家電関連ショー「IFA2015」でのこと。先陣を切ったのはSamsungで、新型スマートウォッチ『Gear S2』発表会の最後に大画面タブレットを発表することを示唆した。その発表会の翌日にはIFA2015の会場でTCLがAlcatelブランドの『Alcatel OneTouch Xess』を自社ブースに出展。超大型タブレットの話題はIFA2015でもちょっとした話題となった。その後Samsungは10月に『Galaxy View』を正式に発表し、11月から販売を開始している。

OneTouch Xessは17.3インチ、Galaxy Viewは18.4インチのディスプレイを搭載する。この大きさならさぞかし解像度が高く細かい文字もより見やすいディスプレイだと思うだろう。ところがどちらの画面解像度もフルHD、1080×1920ピクセルとタブレットとしては標準的だ。前述のiPad Proが2048 x 2732ピクセルであることを考えると、せっかく大きい画面を搭載しながら細かい描写はより”小型”なiPad Proより劣っているのである。

SamsungのGalaxy Viewは18.4インチの超大型タブレット

SamsungのGalaxy Viewは18.4インチの超大型タブレット

また両モデルともスタンドが内蔵されており自室などで立てかけて使うこともできる。背面に取っ手があり、部屋から部屋へと簡単に持ち運ぶことも可能だ。そもそもこれだけの大きさであれば外時に持ち運んで使うことは非現実的であり、自宅や会社の中で使うのが正しい利用スタイルだ。

このように「低解像度」「持ち運びしやすい」ことが、両タブレットの用途を明確にしている。これら超巨大タブレットは机やテーブルの上に置いて、TVのようにコンテンツを見る用途に適している。またコンテンツも高価なTVで視聴する4Kの超高解像度の動画ではなく、インターネット配信される動画サービスの閲覧に適しているだろう。例えば普段スマートフォンで動画を見ているユーザーが、自宅ではより大画面のTVを使いたいと思った時に、OneTouch XessやGalaxy Viewでスマートフォンと同じアプリを使い、WEBを見たり動画を視聴できるわけである。

17.3インチのAlcatel OneTouch Xess。どちらの製品も背面に取っ手がついている

17.3インチのAlcatel OneTouch Xess。どちらの製品も背面に取っ手がついている

インターネットの普及期にはパソコンで動画を見るサービスの普及が進んだ。そしてスマートフォン時代を迎え高速なLTEサービスの普及と合わせるようにストリーミング動画サービス市場が急成長している。しかもちょっと前ならばYouTubeに代表される個人作成ベースのショートムービーが主流だったが、今やNetfixやHuluのように映画やTVドラマを配信するサービスも増えている。それらのサービスは家庭の4K TVを有線ネットワークに接続して視聴できるだけではなく、スマートフォンを使っていつでもどこでも利用することが可能だ。

このようにスマートフォンで動画配信サービスが利用できたりSNSの利用が日常的なことになったことから、TVを使ってコンテンツを見る時間は減少傾向を見せているという。そこでTVメーカー各社はインターネット機能を融合した「スマートTV」を相次いで発売していった。スマートTVがあればTVの視聴はもちろん、ゲームアプリをダウンロードしてゲームをしたり、そのプレイ最中にSNSサービスを利用して友人とチャットすることも可能だ。スマートTVはスマートフォン利用者にとって利便性の高いTVであり、スマートフォン時代に無くてはならない存在になるはずだった。

小型TVを代替、スマートTVの普及をけん引するか

ところが各社の家電新製品が集まるIFA2015の会場では「スマートTV」の名前を掲げる製品の数は激減していた。変わりに各社が大きくアピールしていたのは前述のNetflixやHuluの対応であり、アプリが利用できることよりも「ゲームができる」「教育用途にも使える」といった、具体的な利用シーンを来客に説明していた。2014年6月に鳴り物入りで発表されたGoogleの「Android TV」を採用したTVもその数はわずかだった。

IFA2015のSamsungブースTVコーナー

IFA2015のSamsungブースTVコーナー。スマートTVの文字は見当たらずNetflixやHuluなどとの提携をアピール

それは1-2年前に未来のTVと信じられていた「スマートTV」という言葉、製品が亡き者になってしまうかもしれないと感じられたほどだ。これは消費者がTVに求めている機能が純粋にTV放送や動画配信を視聴したい、ということなのだろう。リモコンのスイッチを押せば電源が入り、放送をすぐに見ることができるのがTVの姿なのだ。もちろん天気予報を見たりスマートホームのハブとして家電のコントロールもしたいと考える消費者もいるだろう。だがまだまだ操作は煩雑であり、何よりも情報が見たければ手元にあるスマートフォンを見ればよい。「スマートフォンやタブレットのようにいろいろなことができるTV」は、今の技術ではまだまだ消費者の心をつかむことはできないのだ。

またリビングルームに設置し、家族全員で使うTVに、個人情報も流れるSNSの画面を表示するのは違和感がある。Facebookの写真を家族で楽しむのはひと時だけであり、普段は友人とプライベートなメッセージを送り合うなど、家族と言えども他人に見せるものではない。実際に海外の展示会でスマートTVのデモを見た来訪客が「人に見られたくないメッセージはどうすればいい?」と質問するシーンを筆者は何度も見ている。

1年判前、2014年1月のCES2015のSamsungのTVの展示。スマートTVのアプリが目玉。SNSも利用できる

1年判前、2014年1月のCES2015のSamsungのTVの展示。スマートTVのアプリが目玉。SNSも利用できる

リビングで家族が共有するTVのスマート化はまだまだ発展途上、そうであれば個人の部屋に設置するパーソナルなTVをスマート化するほうが消費者にとって有用であり、製品としても受け入れられる余地はあるだろう。2社の超大型タブレットはそう考えられて開発されたものかどうかはわからない。しかしSamsungだけから製品が登場したのならともかく、TVメーカーとしても大手のTCLからも同時期に類似製品がでてきたということは、両者ともに小型TV市場の代替をこの超大型タブレットで狙っているという考えもあながち外れていないかもしれない。

タブレットであればスマートフォンと同じアプリが利用できるし、ネットとの親和性も高い。しかし10-12インチ程度のサイズではわざわざ動画を見るためだけに買おうと思う消費者は少ないだろう。ところが18インチ前後のサイズであれば映画もある程度臨場感あるサイズで見ることができ、自室用の「インターネット利用のできるTV」として購入意欲を沸かせる製品となるだろう。スマートフォンを持ち、リビングには4Kの大型TVがある、そんな家庭でも子供の各部屋に超大型タブレットを設置してもらえればメーカーとしても販売数増につながる。超大型タブレットは小型TVの代替や、小型TVでは必要性を感じていなかった消費者への新たな需要を掘り起こす製品になるかもしれないのだ。

OneTouch Xessはスタイラスペンが付属し子供のお絵かきや教育用途にも利用できる。またGalaxy ViewにはLTEモデルもあり、Wi-Fiの無い環境下でもインターネットに接続できるうえ、テザリング機能を使い他のWi-Fiタブレットなどを接続することも可能だ。これらの機能を使えば超大型タブレットは動画コンテンツ視聴以外の様々な用途に応用できる。とはいえ動画サービスの普及が両者の製品を生み出したことは間違いない。今後他社が同様の製品を出して追従していけば小型TVのタブレット化が進み、それがスマートTVそのものの普及を促すものになるかもしれない。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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