スマートウォッチが格段に使いやすくなる!ロータリーUI搭載のSamsung Gear S2|山根康宏のワールドモバイルレポート

2015年9月、Samsungはスマートウォッチの最新モデル「Samsung Gear S2」を発表。今までのスマートウォッチにはない新しい操作方法を搭載している。各社から続々新製品が登場するスマートウォッチの中で、このGear S2は使いやすさの点で一歩リードした製品になりそうだ。

Apple Watchにすべてを持っていかれたSamsung

実はここ2年ほど、Samsungはスマートウォッチ市場で高いシェアを誇っていた。ところが今年春にAppleからApple Watchが登場するや、販売数だけではなく市場での話題などあらゆる面で追い抜かれてしまった。今や腕時計型のスマートフォン連携端末といえばだれもがApple Watchのことを思い浮かべる、そんな状況であることに異論をはさむ人はいないだろう。

とはいえスマートウォッチはまだまだニッチなユーザー向けの商品に留まっているのが実情だ。数百万台を販売したというApple Watchですら、日常生活に無くてはならないツールと消費者は考えていない。最近ではすっかりその話題をニュースなどで見かける機会も減っている。

2013年の参入以来スマートウォッチ市場をけん引してきたSamsung

2013年の参入以来スマートウォッチ市場をけん引してきたSamsung。だが普及の度合いは今一つ

ではスマートウォッチはなぜ盛り上がらないのだろうか?その理由の一つはスマートウォッチを使う必要性が無いことだ。スマートフォンを取り出さなくてもメッセージの通知を受けたり天気予報などの情報を腕元で見ることができるのはスマートウォッチの利便性の一つ。だが「それだけ」のためにスマートウォッチを買おうと思う消費者の数は少ないだろう。現実的にはたとえ満員電車の中で身動きが取れなくとも、胸元のポケットからスマートフォンを出せば事足りる。またメッセージに返信する必要があれば、結局はスマートフォンを取り出さなくてはならない。Apple Watchには魅力的なアプリも多数登場しているが、スマートフォンの利用に満足している人の興味を向けさせるまでには至っていない。

そしてスマートウォッチの普及が進まないもう一つの理由はその使い勝手、ユーザーインターフェースの問題だ。スマートウォッチの画面サイズは大きくても1インチ台後半。この小さい画面を指先で操作するのは結構面倒だ。たとえばメッセージを上下にスクロールさせるとき、指先で画面をスワイプしながら特定の位置に表示を止めるのは難しい。あるいは設定画面で希望する項目を指先でタップしたら、上下にある別のメニューを押してしまう、なんてこともよくあることだ。スマートフォンでは便利な画面タッチ操作も、スマートウォッチのような小さい画面には完全には向いていないのである。

デジタルクラウンでUIを大きく改善させたApple Watch。だがまだまだ改良の余地はありそうだ

デジタルクラウンでUIを大きく改善させたApple Watch。だがまだまだ改良の余地はありそうだ

Apple Watchはさすがそのあたりを考えており、本体横に腕時計と同様の竜頭(りゅうず)を取り付けている。このデジタルクラウンを回すだけで画面スクロールや拡大が行えるのだ。しかしこのデジタルクラウンも右腕に時計をはめて左手では操作できない。また細かい回転操作も100%快適とは言い切れない。

Samsungが採用したロータリーUIは画面の外側を回して操作

Samsungが今回発表したGear S2は、小さい時計の画面をどのように使いやすくするかを考えた結果、画面の外枠のベゼルの部分全体を回転させるという操作を取り入れている。時計の時刻表示の画面からベゼルをくるくると回せば、よく使うアプリや過去の通知画面を切り替え表示できるのだ。ベゼルは細かいクリック感があり画面ごとに小気味よく動いてくれる。そのため指先でスワイプ操作するときの「指先を動かしすぎて先の画面に行ってしまう」ように、「回しすぎで画面が行き過ぎてしまう」ということもない。

画面外側のベゼルを回転させるSamsung Gear S2

画面外側のベゼルを回転させるSamsung Gear S2

メッセージや予定を画面に表示させて、続きを読むときもベゼルを回せばよい。他社のスマートウォッチにあるように、画面を指先で上下にスワイプさせる操作だと指先で画面が隠れてしまう。しかしGear S2ならベゼルを回している間は画面表示を遮るものがなく、長文のメールでもストレスなく読むことができる。

設定画面も項目を見ながらくるくるベゼルを回して選択できる

設定画面も項目を見ながらくるくるベゼルを回して選択できる


設定画面も項目を見ながらくるくるベゼルを回して選択できる

さらにはアプリの選択も簡単だ。本体右のホームボタンを押すと、画面の円周に沿ってアプリアイコンが円形に並ぶ。ベゼルを回せばクリックごとにアプリがひとつずつ移動するので使うアプリの選択も簡単だ。アプリを選んだら画面中央を押せばそのアプリが起動する。

アプリ画面。ベゼルを回して簡単に選択できる

アプリ画面。ベゼルを回して簡単に選択できる

親指と人差し指を使ってベゼルを回すという操作、これは実は我々が日常的にやっていることだ。家電製品の丸いつまみを回して温度や時間を調整する、といったことは自然の操作である。つまりGear S2のUIは奇をてらったものではなく、つまみを回すという典型的な操作を応用したものなのだ。

これまで過去にSamsungが発売したスマートウォッチは4モデル。それらはいずれも四角いディスプレイを採用していた。またApple Watchのディスプレイも正方形であるし、GoogleのAndroid Wear OSを採用した時計も四角いディスプレイのものが多い。これは丸よりも四角の形状のほうが対角線サイズで比較した場合、同じ大きさでもより広い表示面積が取れるからだ。Gear S2はこの点では性能が退化している。だが丸いディスプレイで一画面あたりの表示情報量が減ったにもかかわらず、ベゼルを回す快適なUIのおかげでむしろ便利に楽しく使えるのだ。

Gear S2にも多数のアプリが提供されているし、NFCを内蔵しモバイルペイメント用途にも利用できる。また3G内蔵モデルは単体での通話もできる。だがどんなに優れたアプリがあっても、使いにくいUIでは製品として失格だ。ロータリーUI搭載で使いやすくなったGear S2が、スマートウォッチ利用者をどこまで増やせるか注目したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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