インドで急成長のスマホメーカー、Intexが注目を集める理由|山根康宏のワールドモバイルレポート

携帯電話加入者数が9億を超えるインド市場で、スマートフォン販売シェアに大きな動きが起きている。シェアトップのSmasungを追いかける地元メーカーの中で、新興勢のIntexが急激にシェアを伸ばしているのだ。

低価格特化で成功したIntex

インドの地元スマートフォンメーカーと言えばMicromax、Karbonn、Lavaの3社がここ数年シェア上位の座をキープしていた。中でもMicromaxは豊富な製品数を武器に一時はSamsungを抜きインドでシェア1位になったほどだ。2015年第2四半期のインド国内スマートフォンシェアはSamsungが24.5%、Micromaxが16.7%と続く。だが3位につけているのはKarbonnやLavaではない(データはCounterpoint調べ)。

上位2社の後を追いかけているのはIntex。同社のスマートフォンシェアは2014年第1四半期にはわずか3.9%しか無かった。だが期末の第4四半期には6.5%、今年2015年第1四半期には9.4%、そして同第2四半期には9.9%と数を伸ばし、2社の後ろ姿が見えるところに位置するまでになった。なお他2社はLavaのシェアが5.3%で5位。Intexの約半分に留まっている。

インドでシェア3位に食い込んだIntex

インドでシェア3位に食い込んだIntex

Intexがこの1年で急激にシェアを伸ばした理由は製品戦略の明確化だ。国内メーカーでトップのMicromaxが低価格品のみならずハイエンド品にも注力する中、Intexは低価格品を重視した戦略でシェアを伸ばしていった。いわばMicromaxが”気を抜いた”部分に集中的に製品を投入していったわけだ。

IDCによるとインドでは2014年に販売された携帯電話総数のうち、スマートフォンの占める割合は2013年の13%から35%と約3倍の伸びを占めた。製品の売れ筋の価格帯は2000ルピーから6000ルピーと言われている(約3870円から1万600円)。Intexは主力モデルをほぼこの価格帯に集めており、新製品を出せば必ず売れる、という好循環を繰り返している。

これに対してMicromaxやLavaは低価格モデルだけではなく、10000ルピー(約1万9300円)台の製品も増やし上位モデルを求める消費者層もカバーしようとしている。だがまだまだフィーチャーフォン利用者が多いインドでは、大量に売れるのは低価格帯のスマートフォンなのである。

インドの大手ECサイト「Snapdeal」を見るとIntexの戦略がよく見えてくる。売れ筋上位3機種の価格は2999ルピーが2製品と3649ルピー。他に3666ルピー、3530ルピーの製品も上位8機種の中に入っている。実は7000ルピーや9000ルピーなどの高価格なモデルも売れているが、あくまでも武器は低価格帯モデルであり、それらをしっかりと売り切っているのだ。

Intexの売れ筋端末。低価格品が多い

Intexの売れ筋端末。低価格品が多い

FirefoxやSeilfish OS搭載モデルも投入

しかしIntexは低価格品だけでここまで伸びてきたのではない。新しい動きへの対応も積極的なのだ。2014年8月にはFirefox OS搭載のスマートフォン『Cloud FX』を発表。2G方式のみ対応ながらも1999ルピー(約3860円)という超低価格で同社の名前を一躍有名にした。同製品は発売開始から3日で15000万台を完売。同社のスマートフォンラインナップの中でも唯一2000ルピーを切る低価格モデルで、フィーチャーフォン代わりに買う消費者も多いという。

ちなみにFirefox OSスマートフォンはアプリの弱さなどから「第三のOS」と呼ばれながらも、今一つ存在感を高められていない。だがスマートフォンを使ってWEBとソーシャルサービスができればいい、と考える新興国の消費者にとって、基本機能が使え低価格であればOSの差やアプリの数は購入の障壁にならない。例えばSamsungがインドで販売しているTizen OSスマートフォンの『Galaxy Z1』は今年上半期だけで100万台のベストセラーとなっている。

低スペックながらFirefox OS採用で超低価格を実現したCloud FX

低スペックながらFirefox OS採用で超低価格を実現したCloud FX

このCloud FXの人気に気を良くしたのか、Intexは2015年秋からSailfish OSを搭載したスマートフォン『Aqua Fish』を発売予定だ。同OSはNokiaからスピンアウトして設立されたJollaが手掛けているもの。現在は同社からスマートフォン1機種とタブレット1機種のみしか製品は出ておらず、Intexは初の他社によるSailfish OS搭載モデルとなる。

Sailfish OSはホームボタンを必要とせずに画面の上下左右スワイプだけで操作できるユーザーインターフェースを特徴とする。Aqua Fishは4Gに対応するため価格は1万ルピー台と若干高くなるが、簡単操作のスマートフォンとしてAndroidスマートフォンの対抗製品となることが期待されている。

だが同社がSailfish OSを採用したのはそれだけの理由ではない。同OSの最新バージョンではPartnerSpaceと呼ばれる機能が加わり、GPS情報などを元に広告などを表示することが可能になっているのだ。

IntexはAqua Fishの販売のため、先に紹介したEC大手のSnapdealとコンテンツポータルの「Times Internet」とパートナーシップを締結。Aqua Fishのロック画面を解除すると両サービスの画面が表示され、オンラインショッピングや映画などのコンテンツを即座に利用できる。4Gに対応しているためネットへのアクセスもスムース。ソーシャルやWEB以外のサービスも簡単に使えるとなれば、ヒット商品になる可能性も十分高い。

コンテンツポータルを組み込むAqua Fish

コンテンツポータルを組み込むAqua Fish

Intexは他にもGoogleの新興国向けプラットフォーム「Android One」製品も投入。低価格品で数を売りつつ、業界の動きに素早く対応することでシェアを伸ばし、今ではインド周辺国にも製品を輸出している。従来のインドメーカーとは異なる製品展開戦略を持ったIntexの動きは、他の新興国や途上国へも影響を与えるものになるかもしれない。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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