SIMフリー化で急増!韓国のスマホ単体販売ショップ|山根康宏のワールドモバイルレポート

今年(2015年)5月から日本で販売されるスマートフォンのSIMロック解除が原則的に義務付けられた。しかし現時点では国内市場にまだその影響は全くと言っていいほど現れていない。それは5月以降販売端末のロック解除が販売開始から6か月後となるからだ。
ではその6か月後となる今年年末以降、どのような動きがおきるのだろうか。すでにSIMロックの無いお隣の国、韓国の状況を見てみよう。

SIMロック全廃の韓国

日本のように通信事業者が自社モデルを販売する国は海外にはほとんど無い。ましてやライバル同士のメーカーのスマートフォンを一堂に集めて新製品発表会を行うのも日本だけだ。この特殊な環境の日本に比較的近い販売方法を取り入れているのはお隣の国、韓国くらいである。韓国も通信事業者で2年契約してスマートフォンを買うのが一般的であり、アジアのように家電量販店でスマートフォンが単体で売られている光景を見かけることは無い。

だが韓国は日本と大きく異なる点がある。それは通信事業者販売のスマートフォンであってもSIMロックがかかっていないのだ。韓国では2008年からSIMロック解除が順次法令化され、現在はSIMロック販売は撤廃されている。つまり最大手SKテレコムのショップで最新スマートフォン『Galaxy S6 edge』を割引価格で購入し、買ったその場でシェア2位のKTのSIMカードを入れて即座に使うことができる。日本のようにスマートフォンは事業者販売でありながらも、端末そのものはシェア3位のLG U+を含めた3社で自由に使えるのだ。

韓国ではSIMロックは廃止されている

韓国ではSIMロックは廃止されている

なお各社LTEの周波数を複数利用しているが、事業者ごとにその組み合わせは異なっている。そして他社販売スマートフォンに自社サービスアプリが入っていないため独自サービスを完全に受けられないという問題はある。とはいえ「通話とネットとソーシャルサービスさえできればよい」程度であれば、多少の通信速度の低下や独自サービスの不便さも苦にならないだろう。それに韓国は完全にLTEが普及しているので、LTEでキャリアアグリゲーションが利用できなくても十分高速だ。
このように「端末販売は事業者経由」だが「端末はSIMフリー」という日本とはちょっとことなる韓国市場だが、街中に出てみれば日本と同じように通信事業者のお店や、携帯電話の契約販売代理店が至るところで営業を行っている。そしてそれらの店へ行くとスマートフォンを単体で売ってくれるケースもある。だが契約セットならば数万円から無料と格安になる端末でも、単体購入となると定価となるため日本円で8万円や10万円など、非常に高価なものとなる。同じモデルのSIMフリー品を比較すれば、恐らく香港やシンガポールで売っている製品のほうが安い。

そのためスマートフォンがSIMフリーとはいえ、外国人が韓国へ行って端末を買うメリットは無かった。だがその状況がここ1年ほどで大きく変わりつつあるのだ。

代理店から転売店へ鞍替え

ソウル市内に複数ある総合家電ビル、それらのビルは1フロアーをまるまる携帯電話の契約販売代理店が入った専門フロアにしている。ヨンサンにある『I`PARK mall』、カンビョンとシンドリムにある『Technomart』などが有名だ。携帯フロアに上がると代理店が数百件ずらりと並ぶ様は恐らく世界でも最大規模だろう。

このフロアに足を踏み入れると「社長さん!安いよ」とか「今ならGalaxyがお得ですよ」とあらゆる店から声がかかるのが当たり前だった。各店舗には最新機種のモックアップが並び、それを物色しつつ少しでも条件のいい店を探して契約するというのが以前のソウル市民の姿だった。

フロアに入ると代理店の小ブースが数百は並んでいる

フロアに入ると代理店の小ブースが数百は並んでいる

ところが今や店のショーケースには実機がずらりと並べられている。しかも客層を見ると圧倒的に外国人、特に東南アジアやインド、アフリカ系が多い。ソウル市民がここで契約する姿はわずかしかない。実は今ここで売られている商品は、そのほとんどが新品や中古のスマートフォンだ。しかも契約不要で単体で購入できるのである。

値段が安いためか時には店先に数十人もの客が集まるのが中古スマートフォンの販売店だ。韓国人が使い古しのスマートフォンを中古店に売れば、店側はその端末がどの通信事業者で利用できるのか、といったことを気にせず販売することができる。なぜなら端末には元からSIMロックがかかっていないからだ。

とはいえ韓国でも新品端末が契約とセットで格安で販売されている。そのため中古スマートフォンを買うより新品を買ったほうが安いケースも多い。つまり韓国内だけでは中古端末の流通規模は少ないのだ。

ところがSIMフリーで、しかも海外でも有名なSamsungやLGのスマートフォンの一昔前の製品が中古とはいえ格安で購入できるとなれば、海外で逓倍しても十分ペイできる。新興国では今でも十分使える、有名ブランドの格安スマートフォンとして韓国の中古端末が人気になっているのだ。

ショーケースに並ぶ新品端末。その多くが転売品などだ。

ショーケースに並ぶ新品端末。その多くが転売品などだ。

一方で新品のスマートフォンも多数売られている。だがこれは契約者向けのものではなく単体販売用のものだ。しかも格安で割引販売されたものの転売品も多いという。実は韓国でも「iPhoneが無料!」といった激安販売が行われていた。だが事業者間の補助金支出合戦が続きゆがんだ市場が形成されてしまったことから、端末の割引金額を政府が一定額と昨年定めた。

しかし契約者数が欲しい通信事業者側は代理店の違法な補助金支出を黙認。今でもゲリラ的に「無料iPhone」といったキャンペーンが行われている。それらを買う客の一部は、購入後回線を寝かして端末を転売してしまうのだ。しかも個人でオークションで売らなくとも、新品の引き取りショップはいくらでもあるのだ。また他には代理店が事業者からサンプルとして購入したスマートフォンを転売する例もあるという。

SIMフリー化は端末流通のグローバル化を加速する

「iPhone無料なら日本にもあるし、秋葉原などで大量に買い取る店もある」と思われる人もいるだろう。だがSIMロック品のロックをはずすのはひと手間かかるうえに、iPhoneの場合はロック解除アダプタ(通称「SIM下駄」)を使う必要があるなど、再販売するときにやはり手間がかかる。また残念なことに富士通やシャープなどの製品は海外ではネームバリューが無く、転売しようにも国外には引き取り手がほとんど無い。

これに対して韓国では、『Galaxy S6』や『LG G4』など世界に先駆けてフラッグシップモデルが国内に投入される。カラバリも海外よりも韓国のほうが多く、韓国でしか入手できない製品もある。すなわち韓国はすでにブランド力の高い有名メーカーの製品がSIMフリーで流通しているわけで、海外からは引く手あまたの状況になっているのである。

日本では現在、新品を買って転売するという動きはせいぜい一部のマニアや特定の業者などがやっているに過ぎないかもしれない。だがSIMフリー化が進めば、中古製品にもリセールバリューが生まれ中古市場が今以上に盛り上がる可能性がある。しかもそれを盛り上げるのは日本の国内市場ではなく、東南アジアなどの新興国かもしれなのだ。

筆者が先日ソウルで購入した折り畳みスマートフォン『LG Wine Smart』。中古で1万円台半ば、海外でも使える

筆者が先日ソウルで購入した折り畳みスマートフォン『LG Wine Smart』。中古で1万円台半ば、海外でも使える

また新品端末も、今のように「オプションを付けて無料」などといったゆがんだ販売を続けていけば、購入後に新品のまま半年寝かせてロック解除、それが海外からのバイヤーに買い取られて国外へと流れていく動きが加速するだろう。半年経ってもiPhone、Galaxy、Xperiaあたりはリセールバリューも高い。

今はまだSIMロック解除の影響は何も見えないが、年が明けた来年以降は韓国のように国外転売市場が大いに盛り上がる、といった、裏の市場が日本でも形成されるかもしれない。そうなると通信事業者側も今の割引販売方式を改めなくてはならなくなるだろう。SIMロック解除の動向は、これからじわりと影響が出てくるのだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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