腕時計を目指すスマートウォッチ|山根康宏のワールドモバイルレポート

Apple Watchの登場で一気に注目を浴びる存在となった腕時計型のウェアラブル端末「スマートウォッチ」。これまで様々な製品が登場したものの、Apple Watchは初回予約が300万台と過去の各社の製品の販売数を一気に抜きさり、スマートウォッチでもシェアトップの製品になろうとしている。Apple Watchに対抗しようと各社から様々な新製品が登場しているが、最近目立っているのは機能よりもデザインを重視した製品だ。

アナログ時計に機能を加えたWithings

日本でも製品販売を開始するWithingsのスマートウォッチは機能は少なく、歩数を計測できる他に目標運動量を0から100%の間で時計の文字盤で表示できる。しかも時計で計測した歩数はスマートフォンにまとめてデータ送信され、一般的なスマートウォッチのようにリアルタイムに確認することはできない。だが実際に運動量を常時確認したいのはスポーツをするときくらいであって、日常生活ではその日の夜にまとめて1日の歩数がわかれば十分だろう。

美しいアナログ腕時計デザインのWithings Active

美しいアナログ腕時計デザインのWithings Active

Withingsのスマートウォッチは2014年登場の「Active」と今年登場の「Activite Pop」の2種類。どちらも見た目は普通のアナログ時計だ。電池は充電式ではなく、通常利用で8か月間利用できる。日々の充電が不要なだけではなく、腕時計として違和感なく毎日利用できるデザインをしているのだ。同社はフランスのメーカーで、デザインはさすがフランスと思わせる美しさ。ちなみにActiveはスイス製の時計モジュール、サファイアグラスを採用した高級モデルという位置づけで、価格も6万円台とApple Watchに並ぶ高価格帯の製品となっている。

Apple Watchは様々な機能を持ったデジタル機器であるのに対し、Withings Activeは簡易機能に留まるアナログ腕時計だ。しかし両者を比べてみると、腕時計としての使い勝手と美しさを追求したWithisngsに対し、デジタル機器を高級な腕時計デザインへと仕上げたAppleのアプローチは全く異なっている。Apple Watchは確かにiPhoneとペアリングして様々な機能を提供してくれるが、日々腕時計をはめているだけで自分の運動量を計測してくれるWithingsのスマートウォッチのほうが、自然に使い続けることができるようにも感じられる。何と言っても毎日充電する必要はないのだ。

ミラノで行われたApple Watch展示会会場

ミラノで行われたApple Watch展示会会場。高級腕時計を目指しているがWithingsとはアプローチが異なっている

腕時計デザインがスマートウォッチ普及を後押し

スマートフォンと連携してメールや予定を表示したり、あるいは運動量を常時計測する、スマートウォッチはそんな製品として誕生した。そのためこれまでの製品デザインはどうしても「腕にはめるIT機器」から抜け出せないものが多かった。

だが2014年後半あたりからそれを打ち破るデザインの製品の登場が相次いでいる。例えばLGは初代スマートウォッチ「LG G Watch」はリストバンドに大型ディスプレイを搭載したような製品で、カジュアル感はあるもののスーツ姿にはちょっと似合わないデザインだった。だがその直後に投入した「LG G Watch R」は一転して円形ディスプレイに高級スポーツ腕時計ライクなデザインを取り入れ、スマートフォンと連携せずともそのまま腕時計としても使いたくなるようなデザインを採用。他社のスマートウォッチには無いそのルックスで大きな話題となった。

LGのスマートウォッチ。初代モデル(左)と後継のLG G Watch R(右)ではデザインが大きく進化した

LGのスマートウォッチ。初代モデル(左)と後継のLG G Watch R(右)ではデザインが大きく進化した

ASUSが発売した「ZenWatch」も角を取ったスクエアなデザインが女性に人気だという。そのASUSは機能を落とし電池の持ちを高めた「VivoWatch」を続けて発表。電池の持ちが10日間に伸びたことで、毎日手軽に使うことができそうだ。またHuaweiが発表した「Huawei Watch」もぱっと見ると腕時計にしか見えないデザインをしている。

最初から腕時計デザインを採用したHuawei Watch

最初から腕時計デザインを採用したHuawei Watch

一方では大手腕時計メーカーのTag Heuerが今年下半期にスマートウォッチの販売を計画している。OSにAndroid Wearを採用することから文字盤が液晶となるデジタル腕時計となるものの、デザインや材質は高級感あるものを採用しスマートフォンメーカーの作るスマートウォッチとは比べ物にならない製品となるだろう。もちろん価格も高いものになるだろうが、それだけの価値を持った製品として出てくるだろう。

他の腕時計メーカーにはスマートウォッチ参戦の動きはほとんど見られていない。だがWithingsのようなアナログ時計をスマート化した製品が今後増えれば、いずれは有名ブランドからもスマートウォッチも登場するかもしれない。スマートウォッチはまだ誕生したばかりの分野の製品であり、Apple Watchが登場したものの決定打と言える製品ではない。

今後数年間は各社から様々な機能、デザインを持った製品が相次いで登場するだろうが、何よりも重要なのは消費者が「購入したい」「使いたい」と思う製品を提供することだ。今までのスマートウォッチ製品が普及しなかったのは機能の充実以前に、毎日使いたいと思わせるだけのデザインの製品が無かったからとも考えられる。腕時計デザインの製品はスマートウォッチを普及させる起爆剤になる可能性を秘めており、今年登場するスマートウォッチは腕時計にしか見えないような製品が相次ぐことになるだろう。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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