ウェアラブル普及の布石となるか、Apple Watch発売開始|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

4月24日、いよいよApple Watchの発売が開始されました。さすがはAppleだけに、その出だしは好調のようで、取り扱い量販店でもあっという間に売り切れ続出というような状態だったようです。各所の報道では米国だけでも初日に100万台も売れ、これは2014年のAndroid Wearの総販売台数を抜いてしまう数という驚きの記録です。スマートフォンそのものも、かつてから多数の機種が発売されてきたわけですが、iPhoneが登場したことで、その販売数はもとより、スマートフォンを利用するユーザーターゲットをも普遍化させました(かつてのスマートフォンはガジェット色が強く、ビジネス利用か、一部の特別なユーザー層の利用に留まっていました)。

 まだまだウェアラブルデバイスというと、特殊なイメージを持たれるかもしれませんが、やはりAppleが商品化することで、見事に一般のユーザーにも浸透していくのですね。ある程度想定はしていましたが、これによって腕時計型ウェアラブルデバイスも「特別なもの」ではなくなっていくのでしょう。

充電しなくてはならない時計の不便さを克服できるか

 筆者もこれまで、多数の腕時計型スマートデバイスや、ウェアラブルデバイスを試用してきました。古いところでは1998年発売の腕時計型携帯情報端末「RuputerPro」(SII製)や、2003年発売の腕時計型PHS「wristomo」(SII製)などから始まり、2006年発売の「MBW-100」(ソニー・エリクソン製)などを経て、最近ではサムスン電子製の「Gear S」を愛用しているところです。

 こうしたウェアラブルデバイスは、スマートフォンと連携して、スマートフォンに届いたメッセージや、スケジュールの通知などを表示し、わざわざスマートフォンをポケットや鞄から取り出さなくても確認できるというところにメリットがあります。さらには、加速度センサーや脈拍センサーなども装着され、ヘルスケアやスポーツ分野での活用も想定されています。その一方で、ネックとなるのが「毎日充電しなくてはならない手間」なのです。

 これまで使用してきた数々の腕時計型スマートデバイスは、必ず1日1回は充電しないと、使い物になりませんでした。帰宅したらACアダプタを差し込めばいいだけですが、そのひと手間が面倒で、結局使わなくなったデバイスも多数あります。中には、専用のクレドルに腕時計型スマートデバイスを掛けるだけで充電できるものもありましたが、それでさえも面倒に感じていたものでした。しかしながら、サムスンの「Gear Fit」に始まり、現在メインで使用している「Gear S」についても、専用の充電アダプタを背面に装着し充電するという手間を惜しんでも、身に着けておきたいと感じる利便性を感じるようになってきました。

 ’00年代中盤の腕時計型デバイス、たとえばソニー・エリクソン製「MBW-100」などは、せいぜいSMSや通話の着信通知ぐらいの機能しかありませんでした。腕時計としてのデザインは秀逸で、デザインは米Fossilが担当していたこともあって、大変気に入っていましたが、やはり充電しなくてはいけないという手間のために、いつのまにか使用しなくなってしまいました。

 しかし近年の腕時計型スマートデバイスは、加速度センサーの内蔵により歩数計やカロリー消費量など、通知以外の機能も加えられてきました。これらの機能を必要とするかどうかで、腕時計型スマートデバイスの必要度が変わってくるはずです。実際に、自身の健康管理にかなり無頓着であった筆者でも、ある程度こうしたデバイスを継続的に使っているうちに、その蓄積されたデータ推移を振り返るのが楽しくなって手放せなくなりつつあるのです。さらに、今もはや手放せないサムスン電子製「Gear S」に至っては、これ単体にSIMカードが挿入でき、単体でのデータ通信や音声通話もできてしまいます。通常はスマートフォン(サムスン電子製端末に限ってしまうのですが)とペアリングさせて、スマートフォンで受けた通知が表示されるのですが、スマートフォンとの距離が離れ、ペアリングが切断されると、スマートフォン側に通話着信があった場合にGear Sに自動着信転送され、Gear Sで通話を受けることができてしまいます。再びペアリング状態になれば、着信転送は自動解除されます。これは本当に便利です。

 とはいえ、まだまだその利便性は多くの人たちに知られていないのでしょう。はたまた、こうしたデバイスは「特殊」なものという印象なのかもしれません。さらには「一部のマニアックなユーザーのもの」という印象が拭えていないのが現状なのか、なかなか普及には至っていません。

 そんな中で、Appleが打って出た腕時計型スマートデバイス「Apple Watch」。さすがだなと思うのは、やはり一般のユーザーにも受け入れられやすい、「特殊なもの」感が無いデザインです。

Apple Watch

Apple Watchはデザイン的にも魅力的なデバイスだと感じます。しかしながらバリエーションが多くて悩んだ末にまだ買えておりません(とほほ)

Appleが売れば普遍化し、市場拡大につながる

 iPhone発売時もそうでしたが、「スマートフォンなど売れない」といわれていた時代に、見事に大ヒット商品として君臨しました。iPhoneとペアリングさせ、iPhoneの補助として活用するデバイスですから、iPhoneほどの台数が出るわけではないのですが、それでもウェアラブルデバイス普及の布石となることは間違いなさそうです。

 とくにiPhone 6(iOS 8)以降では、Appleはユーザーのヘルスケア関連情報の収集に力を入れ始めました。ヘルスケアアプリ(HealthKit)の導入により、iPhoneを通じた健康情報を扱う周辺機器やアプリを見事に取り込み、Appleにデータが集約する仕組みを作りました。そしてそこに集約された世界中の人々のヘルスケアに関するビッグデータを、研究用に活用していこうとする「ResearchKit」も発表しています。すでに、多数市販されている通信する体重計や血圧計、脈拍計等からのデータがiPhoneを通じてAppleに集約しているわけですが、このApple Watchもその役割の一助となっていくはずです。Apple Watchには活動量や脈拍の収集も可能ですが、「バンドを交換できる」ということは、バンド部分に各種センサーを搭載した、サードパーティーによる生体情報センサーが市販されていくことも考えられます。

 国民皆保険制度が定着しているわが国では、こうした機器を用いて積極的に健康管理に努めるというユーザーは多くはないのでしょうが、米国など自由保険制度の国々では、これらのデバイスで収集されたヘルスケアデータの評価によって保険料が下がるといった活用も始まっています。

 ウェアラブルデバイスは、「常に身体に密着しているもの」という特性を活かし、各種通知を受け取れるという利便性に加え、身体に密着したセンサーから自分自身の生体情報をリアルタイムにモニタリングできる機器として、今後重宝されていくはずです。

 唯一、こうした各種デバイスメーカーさんにお願いしたいことは、ペアリングできるスマートフォンを自社製端末だけに限定しないで欲しいということです。もちろん、こうした魅力的なデバイスによって顧客を囲い込んでいくというビジネスモデルを否定はしません。しかし、筆者の場合、魅力的なウェアラブルデバイスを活用するために、ウェアラブルデバイスの数だけスマートフォンも持ち歩かなければならないという、困った状況になっています。Gear SがiPhoneでも使えたら便利だなと思いますし、逆にAndoroid端末ユーザーの中にもApple Watchを使いたいというユーザーが居て当然です。すべての機能が使えなくても構いませんので、せめて他の端末でも最低限の機能が使えるぐらいの融通が利いたら、ウェアラブルデバイス自体がさらに市場を拡大できるのではないでしょうか。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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