Windows10登場でスマホ第三のOSはどうなる?|山根康宏のワールドモバイルレポート

公開日: : 最終更新日:2015/04/16 モバイル研究家コラム, 山根康宏のワールドモバイルレポート ,

AndroidとiOSに続くスマートフォンOSの座を目指して「第三のOS」と呼ばれる各社のOSが製品開発に火花を散らしている。日本ではKDDIからFirefox OSを搭載する「Fx0(LGL25)」 が昨年12月に発売となった。またSamsungはインドにTizen OSを搭載したスマートフォン「Samsung Z1」を投入した。だがこれら新興勢の座を後からやってきた巨人、Microsoftが奪おうとしている。

Windows10でスマートフォンシフトを進めるマイクロソフト

Microsoftは最新OSであるWindows10の2015年夏の前倒し投入を、先日(2015年3月)中国・深センで行われたWindowsのハードウェア開発者向けイベントWinHECの場で発表した。当初Windows10は今年秋ころに登場する予定だったが、欧米の新学期である9月よりも前に投入されることになる。PCやタブレット市場はこのWindows10の登場で今年上半期は新製品ラッシュが相次ぐだろう。

だがWindows10はPCやタブレット向けだけのOSではない。スマートフォンも視野に入れられているのだ。現在マイクロソフトのOSはPC用がWindows 8.1、スマートフォン用がWindows Phone 8.1と2つの系統に分かれている。これがWindows10では両者が完全に統一される。例えばアプリストア「Windowsストア」もWindows10からはPC、タブレット、スマートフォンで共通化されるのだ。もちろんPC用のユーザーインターフェース(UI)をそのままスマートフォンには搭載できず多少のカスタマイズは必要となるものの、Windows10ではすべてのデバイスで同一のOS、同一のアプリ(ユニバーサルアプリ)が走ることになる。

MWC2015のLumia640/640XL発表の場でPCやタブレットとのシームレスな動作環境をアピール

MWC2015のLumia640/640XL発表の場でPCやタブレットとのシームレスな動作環境をアピールするMicrosoftのStephen Elop CEO

2015年3月にバルセロナで開催されたMobile World Congress 2015(MWC2015)でMicrosoftはスマートフォン2機種「Lumia640」「Lumia640LX」を発表したが、大きくアピールされたのは個別の機能よりもWindows10を見据えたPCやタブレットとのアプリやサービスの互換性だ。現行OSであるWindows8.1を搭載して出荷されるが、Windows10へのアップグレードが発表時から約束されているのである。

MicrosoftはすでにNokia時代に発売されたLumia630など一部の機種向けに「Windows Phone 10 Technical Preview」をリリースし、Windows10のアルファ版ともいえる、開発途中のOSを開発者のみならず一般ユーザーが試すことも可能だ。3月末には次のPreview版がほぼすべての現行Lumiaシリーズに対応することも発表。最新のハイエンドモデルだけではなく、低スペックなエントリーモデルまでもをWindows10にアップグレードさせるとはMicrosoftのWindows10にかける意気込みは本気そのものだ。

Windowsスマートフォンは今のところ旧NokiaとMicrosoft製品しか目立っていないものの、新興メーカーの製品も少しずつ増えている。またWindows10以降は大手メーカーの参入も相次ぐだろう。Android、iOSに次ぐ第三勢力の座をWindowsが一気にさらっていく、2015年後半のスマートフォン市場はそんな状況になりそうだ。

手のひらサイズのエントリーモデルLumia435もWindows10へアップグレード可能

手のひらサイズのエントリーモデルLumia435もWindows10へアップグレード可能だ

ラインナップが貧弱なFirefox OSはどうする

第三のOSの普及のためにはスマートフォンラインナップの拡充は必須だ。Windows Phoneスマートフォンは数は少ないと言っても、現行モデルでも10機種以上が販売されている。しかもハイエンドからエントリーまで製品の幅も広い。しかもLumiaシリーズはカラフルなボディーカラーが家電店店頭などで大きく目を惹く存在だ。

Firefox OSを搭載するスマートフォンも着々と数を増やしているが、ラインナップの大半はエントリーモデルに偏っている。KDDI発売のFx0(LGL25)はフルスペックを搭載しているものの日本のみの販売、しかもSIMロックがかかっており他国での利用は現実的にできない。2015年1月のCES2015のプレイベントでFirefoxブースにいたアメリカ在住説明員が「SIMロックが無ければいくら払っても個人的にこの端末を買って使いたいんだけど、、、」と話していたことを筆者は強く覚えている。

MWC2015のFirefox OSブース

MWC2015のFirefox OSブース。せっかくFx0が目立つ位置に置かれているが「日本以外では使えない」の声に落胆する来訪者も多かった

Firefox OSスマートフォンはAndroidとのバッティングを避け、まだスマートフォンが普及していない新興国が途上国主なターゲットになっている。だが今やそれらの国でも中国や地場メーカーが低価格なAndroidスマートフォンを次々と出しており「低価格」というFirefox OSスマートフォンの強みは発揮できなくなりつつある。しかもこれら新興メーカーの同価格帯の製品はスペックも年々高めている。
Alcatelのように一つのハードウェアをAndroid、Firefoxと複数OSに対応させるメーカーも出てきている。だが中国勢、地場勢のAndoridスマートフォンラインナップは一か国だけでも数重にも及ぶ。フィーチャーフォンからFirefox OSスマートフォンに乗り換えた消費者が、その次に買い替えようと思っても同じような低スペック品ばかりでは豊富な製品種類を誇るAndroidへと客は移行してしまうだろう。端末製造パートナーを増やしてはいるものの、ミッドレンジやハイエンドモデルの拡充も今後求められていくだろう。

サービスやアプリの対応も重要だが、それを使うスマートフォンラインナップ拡充も必要

サービスやアプリの対応も重要だが、それを使うスマートフォンラインナップ拡充も必要

Tizenは組み込み特化、他OSも奮闘中

第三陣営としてはSamsungが強く押すTizen OSの存在も忘れてはならない。ようやく発売になったスマートフォン、Samsung Z1は待ち受け画面とメニュー画面が一体化されたUIを搭載しスマートフォン初心者にも使いやすい。とはいえFirefoxが苦戦している新興国・途上国にSamsungのこの1モデルだけで戦っていくのは難しい。

Tizen OSはすでにデジカメなどに組み込まれており、内部で同OSが動いていることは利用者にはわからない。組み込み型のOSとして家電などへの採用を進めているようだ。Samsungのウェアラブル端末もGoogleのAndroid Wear搭載品以外はTizen OSを搭載するなど、着々と対応品を増やしている。スマートフォン新製品は今後あまり期待できないかもしれないが、目に見えないところで動くTizen OS搭載製品はこれから数を増やしていくだろう。

Tizen OS搭載のSamsung Z1。使いやすいUIを搭載している

Tizen OS搭載のSamsung Z1。使いやすいUIを搭載している

さてこれ以外にも第三の座を狙っているOS製品がMWC2015では展示されていた。まずUbuntuはスマートフォンに同OSを搭載した初の製品をスペインで販売開始。スペインBQの「Aquaris E4.5 Ubuntu Edition」は4.5インチディスプレイに8メガピクセルカメラを搭載したミッドレンジ端末だ。また中国Meizuの「MX4」に同OSを搭載した製品も発表された。MX4はLTE対応に5.4インチのフルHD越えのディスプレイ(1152×1920ピクセル)を搭載したハイエンド端末だ。

このようにUbuntuは低価格品ではなく先進国のスマートフォンのヘビーユーザーをターゲットにしており、Android OSにはない使い勝手でニッチな市場を狙っている。Firefox OSとは違うアプローチで拡大を目指しているのだ。今後使いやすさを武器にどの程度販売数を伸ばせるのか興味深い。

Ubuntuを搭載するMeizu MX4。ハイエンド端末で先進国をターゲットにする

Ubuntuを搭載するMeizu MX4。ハイエンド端末で先進国をターゲットにする

そして日本ではあまり知られていないJolla(ヨラ)も新製品を展示していた。Jollaは元Nokiaにいた社員が立ち上げたベンチャーで、NokiaではMeeGo OSの開発に携わっていた。そのMeeGoの後継ともいえるOSがJollaのSailfish OSだ。同OS搭載スマートフォンは2014年に1モデルが発売されたが、MWC2015では新作となるタブレット「Jolla Tablet」が展示されていた。

Seilfish OSは起動中のアプリケーションウィンドウをそのままマルチタスクで動かせる特徴がある。Jolla Tabletでは広い画面を活かし複数ウィンドウを表示しそれらの切り替えも使いやすい。全体的な使いやすさは昔のNokiaスマートフォンにも通じる、自然な操作体系といった感じだろうか。iOSとはまた方向性が異なるモダンなOSというイメージを受ける。MWCでは「Sailfish OS Alliance」も発表され、今後同OSを中心としたエコシステムがどのように拡大されるか楽しみになってきた。

Seilfish OSを搭載したJolla Tablet

Seilfish OSを搭載したJolla Tablet

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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