モノづくりでもオープンソースの指向で!「Google Project Ara」|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 最終更新日:2015/03/12 モバイル研究家コラム, 木暮祐一のぶらり携帯散歩道 ,

2013年10月に発表され話題となったモジュールの組み合わせによりオリジナルのスマホを作成できるコンセプト「Project Ara」、ご記憶にありますでしょうか? 土台となるフレームに、ディスプレー、プロッサー、バッテリー、カメラなどのハードウェアモジュールを自在に組み合わせて自分好みのスマホを作れてしまうというものです。Googleがこのプロジェクトを推進しており、搭載されるOSはもちろんAndroid。この発表から1年4カ月を経て、ようやく市場投入へのロードマップが示されてきました。このコンセプトについて、識者のお話をうかがえる機会がありましたのでレポートをお届けします。

60億人のためのプラットフォームを目指す!

 先日、青森県八戸市で、IoT(Internet of Things/モノのインターネット)を題材とした『ものづくり×ITセミナー』が開催され、ここに日本Androidの会名誉会長である丸山不二夫先生(早稲田大学客員教授)、ソフトとハードの融合で新たなものづくりにチャレンジされている佐々木陽氏(株式会社GClue 代表取締役)などがお越しくださり、それぞれ貴重なご講演をしてくださいました。

 モノづくり×ITという世界で、今注目を集めているのはGoogleが推進する「Project Ara」というコンセプトでしょう。Google(Android)側の視点として丸山不二夫先生は、この「Project Ara」のコンセプトについて詳細にご紹介してくださり、さらに昨今はソフトウェアのみでなくハードウェア作りにも力を入れている佐々木陽氏が「Project Ara」のオープンソース・ハードウェアの意義や課題などについて解説してくださいました。

 このProject Araの思想は壮大です。
「これらか10年で世界の携帯電話がスマホに置き換わります。それは世界のほぼすべての人がインターネットにつながるということ。これぞNext Billions、世界史的に大きな転換期になるはずです。そんな時代に向け、世界では安価なAndroidスマホが流通し始めているところですが、Project AraはAndroidスマホをモジュール化してしまって、それぞれのパーツを組み合わせることで端末ができてしまうということを目指しています」(丸山先生)
現在のスマホごと定期的に買い換えるという方法に比べ、必要なときに必要なパーツのみ交換していくことで永続的に利用できるというものです。

Project Araはスマホのパーツがモジュール化し、組み合わせて1台のスマホとなります。

Project Araはスマホのパーツがモジュール化し、組み合わせて1台のスマホとなります。

 Project Araは、世界中のできるだけ多くの人たちにスマホを普及させていきたいという思想があります。日本のような高級スマホが流通する国ばかりではなく、簡単にはスマホを利用できない途上国の人たちもいます。このため、モジュール化するパーツは必要とされる国々の事情に合わせ、最適なスペックのものを提供していくことを目指しています。できるだけ安価にスマホを作りたいという人たちもいれば、最高のスペックでモジュールを組み合わせたいという人もいるでしょう。そんなオーダーメード的スマホが間もなく登場しようとしているのです。

モジュール自体がオープンソース

 「より安価に、それにより世界中の人たちに」という思想に対し佐々木陽氏は「必ずしもモジュール類が安価に提供されるとは限らない」と疑問を投げかけました。個々のモジュール自体は、安価になっていくかもしれませんが、複数のモジュールの組み合わせによって1台となるProject Araのスマホは、トータルで考えると部品点数や製造コストが掛かってしまうのかもしれません。

 しかし、このProject Araで重要なことはスマホを構成するモジュールの開発自体をオープンソース化してしまうという点にあります。モジュールを作るために必要な要素をオープンソースという形で無償で提供していくそうです。モジュールの設計や開発の環境はもとより、製造に関わる部分も誰でもが関われるようにしようということなのです(たとえばモジュール自体を3Dプリンターで作成できるようなデータ提供)。

 スマホを構成するモジュールの製造には、これまでスマホ作りなどに無縁だった小規模事業者や、場合によっては個人でも関われるようになるのではないでしょうか。モノづくりの世界に大きなインパクトを与えることになるはずです。誰もが簡単にスマホを作ることができる時代になるのかもしれません。

 佐々木陽氏は、会津若松市で「蔵」を借り、ここにエンジニアや理工系学生が集うハードウェア工房として活用を始めています。コンセプトは『少量多品種スタイルに合った工場、そしてハードウェアの地産地消』。でもウェブを通じて、世界に製造したモノを売ることもできます。あとはアイデア次第。Project Araは、モジュールの組み合わせによりスマホになりますが、スマホに追加したいハードウェア機能を、独自の発想で創りあげ、端末に組み込むことができるのです。アイデア次第で、これまでのスマホに考えられなかったような機能を組み込むことも可能になるでしょう。

 これまでのスマホは、アプリというソフトウェアにしかエンジニアがアイデアを工夫できる余地がありませんでした。しかし、Project Araでは、ソフトウェア的発想を、ハードウェアにも取り入れることが可能になります。今年中には登場するのではないかというProject Araスマホ。メインとなるモジュールはあって、そこにスマホとしての機能は詰め込まれて販売され、あとはバッテリーとディスプレーを組み合わせれば動いてしまうようです。奇想天外な発想のモジュールが出てくるのは、もう少し先のことのなりそうですが。

どんなモジュールを作るか。アイデアやデザインも自由自在ということです。

どんなモジュールを作るか。アイデアやデザインも自由自在ということです。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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