JALが国内主要空港でiBeaconの本格活用を開始|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 最終更新日:2015/03/11 モバイル研究家コラム, 木暮祐一のぶらり携帯散歩道 ,

アップルの「iBeacon」の活用が、いよいよ本格化してきそうです。iBeaconは、iPhone 5S発売時にリリースされたiOS 7以降に対応し、BLE(Bluetooth Low Energy) を用いて「位置情報」をさまざまな形で活用する機能のことです。O2O(Online to Offline:オンラインの情報からオフラインの消費行動を促すマーケティング施策)の切り札として期待されてましたが、本格的に活用するサービスはなかなか登場してきませんでした。しかし、このほど日本航空は主要空港の保安検査場やチェックインカウンターにiBeaconを設置し、利用客のiPhoneに登場便情報を表示させるサービスを開始しました。

iBeaconに対応した「JAL Countdown」アプリ

 アップルはiOS 7の提供開始時(具体的にはiPhone 5S発売の2013年9月)に、位置情報を活用した新技術「iBeacon」を発表しました。iPhone等のiOSデバイスが、iBeaconを設置した場所に近づいたり離れたりした際に、対応アプリに通知などをすることができます。あるいはiBeacon設置者側には、ユーザーの位置のモニタリングや、設置したiBeaconとの距離を測定するようなことが可能です。BLE (Bluetooth Low Energy) 信号を利用することで省電力で動作させることができ、iPhone側もBluetoothをONにした状態で使用していても電池の極端な浪費はありませんし、iBeaconも電池だけで数年動作させるようなことが可能です。iBeacon自体も安価に供給できる体制が整いつつあり、機器単価も数千円レベルから数百円レベルまで単価が下がってきています。

 しかしながら、活用イメージは描けても、実際に本格導入した事例はなかなかありませんでした。というのは、iBeacon対応のiPhoneが一定数市場に拡がらなければ、iBeaconを用いたサービスを利用するユーザーも限られてしまうので、導入する企業等にとっては無駄な投資になりかねません。

 このiBeaconが発表されてからようやく1年を経た昨秋から、日本航空は主要空港の保安検査場やチェックインカウンターにiBeaconを設置し、利用客のiPhoneに登場便情報を表示させるサービスを開始しました。大手企業が顧客サービスとしてiBeaconを本格活用した数少ない事例といえます。

 日本航空は、JAL国内線向けのサービスとして、搭乗する顧客向けに複数のアプリを提供しています。そのひとつである「JAL Countdown」アプリは、出発までの残り時間がカウントダウン表示されると共に、搭乗口や運行情報などの搭乗便情報を確認することができます。このアプリが昨秋にバージョンアップされiBeaconとの連携機能が追加されました。日本航空では、順次主要空港(2015年2月現在で、羽田、成田、伊丹、関西、新千歳、福岡、那覇、仙台、小松、広島、松山、熊本、鹿児島)の保安検査場やチェックインカウンターにiBeaconを設置、ここに近づいた顧客のiPhoneのロック画面に、自動的に当日の搭乗便情報や搭乗口、運行情報が表示されるようになりました。

チェックインカウンターに近づくと、iPhoneロック画面にプッシュ通知が表示されます

チェックインカウンターに近づくと、iPhoneロック画面にプッシュ通知が表示されます

「JAL Countdown」アプリの画面。当日搭乗予定の便があれば、その搭乗便の運行情報や出発10分前までの時刻がカウントダウン表示されます

「JAL Countdown」アプリの画面。当日搭乗予定の便があれば、その搭乗便の運行情報や出発10分前までの時刻がカウントダウン表示されます

 こうしたアプリは、顧客自身がアプリを起動しなければ情報の閲覧に至らないわけですが、ロック画面に情報がプッシュ表示されることで、この表示がフックとなってアプリを開くことになります。従来のバージョンでも、タイマー等をユーザー自身が設定することでロック画面に通知を表示する機能はありましたが、搭乗の際に通過する特定の場所に近づくことで通知が来るのは、なかなか便利です。とくに、この「JAL Countdown」アプリから、搭乗用のバーコードを表示させる機能なども備わっており、搭乗用バーコードを表示しなくてはならない場所で必要となる情報に簡単にアクセスできる利便性は計り知れません。

 モバイルインターネットサービスが開始された当初から言われていることですが、「必要な時に必要な場所で最適な情報を得られる」ことの便利さがしっかり追求されているサービスといえます。これこそ、iBeaconという新技術を有効活用した好事例と言えましょう。

「JAL Countdown」アプリ上の「QuiC」ボタンをタップすると、搭乗用バーコードや、搭乗便の詳細情報(搭乗口や座席、目的地の天気等)が表示されます。

「JAL Countdown」アプリ上の「QuiC」ボタンをタップすると、搭乗用バーコードや、搭乗便の詳細情報(搭乗口や座席、目的地の天気等)が表示されます。位置情報を上手に使ってこそ「必要な時に必要な場所で最適な情報を得られる」利便性を享受できます。このアプリでは「最寄りの保安検査場」も表示され、その保安検査場の混雑状況をライブカメラで見ることも…

iBeacon本格活用フェーズへはあと1~2年?!

 iBeaconのような新技術を本格的に活用するまでには、ある程度の時間が必要です。まず、対応端末自体が市場に広がらなければ、iBeaconをサービスやマーケティングに活用することができません。iOS 7以降にアップデートされたiPhoneであれば利用可能ですが、そのユーザーが一定数を超えないと、なかなかiBeaconを活用しようという企業は出てこないわけです。

 一方iBeaconも、増産できるほどの需要がなければ、機器単価が下がりません。これも世界規模で本格利用が始まれば、現在最安のもので数百円単位と言われていますが、もっと安価になれば大手企業だけでなく、小さな商店レベルでも活用しようという動きがでてくるでしょう。

 Android端末もBLEに対応したものが増えています。しかしiPhoneを含め、ユーザーの使うスマートフォン側が十分に普及して本格的にiBeaconを活用したサービス等が充実するまでには、あと1~2年は掛かりそうな感じですね。

 いずれにしても日本航空の活用事例のように、大手企業がこうした新技術の活用を積極的に行ってくれることで、ユーザー側にもその利便性が伝わって行くでしょうし、それらをお手本に中小企業や小規模事業者にもその活用イメージが認知されて行くでしょう。日本航空に限らず、大手企業にはぜひ積極的にこうした新技術を活用した、スマートフォンユーザーが便利に利用できるサービスを拡げてもらいってもらいたいものです。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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