自動車もプリンターで”印刷”できる?モノのインターネットを後押しする3Dプリンターの可能性|山根康宏のワールドモバイルレポート

あらゆるモノが次々とインターネットにつながる時代がやってきた。IoT(Internet of Things、モノのインターネット)という言葉もよく聞かれるようになってきている。これまでモバイル業界ではスマートフォンアプリやオンラインサービスなどのソフトウェアを使ったマネタイズが市場をけん引してきたが、これからはスマートフォンと接続できるハードウェアにも注目が集まりつつある。

たとえば腕時計型のスマートウォッチ、リストバンド型のアクティビティートラッカー、メガネ型のアイウェアなど、身体に装着するウェアラブルデバイスは様々なものが登場している。2015年1月にアメリカ・ラスベガスで開催された総合家電ショー「CES2015」でも、これらウェアラブルデバイスが多数の製品が展示されていた。

多数のウェアラブルデバイスが登場したCES2015

多数のウェアラブルデバイスが登場したCES2015

このようにハードウェアに注目が集まる中、そのハードウェアを個人が自由に作ることのできる3Dプリンター市場が急激に拡大している。3Dプリンターは一般的なプリンターがインクを使うのに対し、樹脂製のリボンを使う。そしてプリンター内に3D図面データを送ることで、その樹脂リボンをノズルから溶かして図面通りのものを製造できるのだ。

この3Dプリンターは10万円程度の低価格なものもあり、個人がちょっとしたモデリングを行う用途なら十分活用できる。また工業用の高価なものなら精密な造形も可能だ。そして最近ではイスやテーブルなど、大型のものを造形できる3Dプリンターも登場している。もはや3Dプリンターは家具までも作ることが出来てしまうのだ。

もやは3Dプリンターは家具も製造できる

もやは3Dプリンターは家具も製造できる

さらには超大型造形対応の3Dプリンターを使って自動車を作ることも可能になった。2015年1月にデトロイトで開催された国際モーターショーで、アメリカ・アリゾナに本社のあるローカル・モータースが世界初となる3Dプリンターで印刷した自動車を出展した。しかも展示会の会期中、実際にブース内に3Dプリンターを置いて自動車を印刷して製造・仕上げまでのプロセスを来場者に見せたのだ。

参考的に出展されていた完成車は、印刷してすぐの状態のもの。3Dプリンターで造形するとどうしても溶けた樹脂が段々状につみあがるため、表面の仕上げは雑に見える。だがこの状態でもすぐに走行させることが可能だという。ちなみにエンジンや駆動部分はルノーのものを利用しているため、車としての性能はしっかりとしている。

この3Dプリンター印刷自動車の製品名は『ストラティ』と呼ばれ、現状では全体を印刷するのに44時間を要するという。また印刷後は研磨作業も必要となるが、それにより表面は段差のない滑らかな仕上げとなる。強度も十分あり、これがプラスチック製で、しかも大型の造型機ではなくノズルからカーボン入りABS樹脂を押し出し積み重ねて製造されたものとは想像できないほどだ。

ローカル・モータースが出展した3Dプリンターで印刷された自動車

ローカル・モータースが出展した3Dプリンターで印刷された自動車

こちらは共同開発もとが展示のもの。3Dプリンターで印刷後、表面を仕上げ塗装することで樹脂製には見えない。

こちらは共同開発もとが展示のもの。3Dプリンターで印刷後、表面を仕上げ塗装することで樹脂製には見えない。

『ストラティ』は3Dプリンターで造形しただけの自動車であり、スマートフォンを使った自動運転などが出来るわけではない。だが自動運転システムはここ数年でその開発が急激に進歩しており、たとえばBMWはサムスン電子のスマートウォッチ『Gear S』を使い、自動車を自宅車庫から自宅の前まで移動させるデモをCES2015で行っていた。

実際の道路走行を自動運転させるにはまだ時間がかかるだろうが、ゴルフ場の中など狭いエリアかつ低速で十分な場所なら、数年以内にスマートフォンを使った自動運転自動車が実用化されるだろう。

BWMとサムスン電子は出入庫の自動運転デモをCES2015で行った

BWMとサムスン電子は出入庫の自動運転デモをCES2015で行った

さてこのような自動運転システムを開発する際、例えば3Dプリンターで手軽に自動車を「印刷」できるようになれば、システム開発側としても手軽に自動車を製造し、それを使って実際のテストを簡単に行えるようになる。まさしくモノのインターネットの開発に3Dプリンターが大きく役立つわけだ。

将来は自動車の買い方もスマートフォンで自動車ディーラーのサイトにアクセスするだけになるかもしれない。希望の車のデザインや色を選び、クレジットカードで分割払いを終わらせ、あとは映画を1-2本見終わる頃に、自分が選んだ車が自動的に自宅の前まで無人運転で届いているとういわけだ。もちろんそんな時代が実現するのは数十年先だろうが、3DプリンターとIoTの進化は自動車の買い方までをも変えるかもしれないのだ。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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