フィーチャーフォンの新たな進化系となるか「AQUOS K」|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

1月19日、auが2015年春モデルの新製品発表を行いました。当日は「INFOBAR A03」「AQUOS SERIE mini」「BASIO」「miraie」のスマートフォン4機種と、フィーチャーフォン(携帯電話、以下ガラケーとしましょう)「GRATINA 2」の1機種に加え、なんと「AQUOS K」という、一見ガラケーに見えますが、OSにAndroid 4.4を搭載した、まさに「ガラケー型スマートフォン」を発表しました。さらに1月21日には、ワイモバイルがハートの形をした音声通話専用PHS「Heart 401AB」を発表。ハートの中心線を180度回転させるとスティック型の電話気になるという驚くべきギミック! 筆者はスマートフォンももちろん大好きなのですが、ショルダーホン時代から携帯電話を収集して来た立場として、本音は音声通話用端末の充実に期待していたところです。同時期に発表になったこの2端末は見事にコンセプトが対照的ですが、はたしてどのように市場に受入れられるのでしょうか。

形状はフツーのガラケーでも中身はAndroid

 「AQUOS K」について、auの2015年春モデル新製品発表会に登壇したKDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、自らこの端末を「ガラホ(ガラケー+スマホ)」と命名しました。その後、製造元のシャープも独自に会見を開き、常務執行役員 通信システム事業統轄 兼 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏が、フィーチャーフォンユーザーに対する「低リテラシー」「やがてスマホに変える」「現状に満足している」という印象を否定。多くのケータイユーザーはパソコンもネットも使いこなしながら、ガラケーについては「慣れたキー操作を優先している」と説明、だからこそ買い替え意向では「次もケータイ」と答えるユーザーが多く、無視できない規模であると話されたそうです。こうしたニーズから、「AQUOS K」は外見はもちろん、メニュー操作もガラケー同等、タッチパネルさえ備えていない、まさに完璧なガラケー端末ながら中身のOSはAndroid 4,4で動作させる端末を打ち出して来たようです。

KDDIが発表した「AQUOS K」(シャープ製)

KDDIが発表した「AQUOS K」(シャープ製)

 もちろん、音声通話に特化した端末は今後も求められていくに違いありませんが、このところのガラケーは機能を最小限に抑えたものが多く少々物足りなさを感じていました。さらに言えば、ネットワークは3GからLTEへ進化を遂げているわけですが、この「AQUOS K」はついにLTEネットワークにも対応(残念ながらVoLTEには非対応)! これは従来からあったガラケーの正統進化版と考えるべきでしょう。OSこそAndroid 4.4を採用していますが、操作性は基本的にガラケーのものを踏襲しています。

 ただし、この端末を契約しようとすると、スマートフォンの料金プランが適用されちゃうのが悩ましいところですね。通話主体でガラケーを求めるユーザーは、やはり「電話カケ放題プラン」を適用し、通話しまくり用端末とすべきなのでしょう。ガラケーの利用料金より高くなりそうですが、「データ定額」(2~13)の各プラン、または「LTEフラット」に加入すれば、毎月の利用料を1,000円割り引く「AQUOS K スタート割」が用意されました。

 この「AQUOS K」はガラケーにしてテザリング機能が搭載されており、思い切って「通話しまくり用」&「データ通信モデム」代わりに使うという手もありそうです。KDDIでは、55歳以上のシニア向けに新たに「シニアプラン」も新たに用意し、「誰でも割」適用時の基本使用料が月額3980円(0.7GB分のデータ通信量を含む)としたものも発表しているのですが、シニアと言わず、ビジネスユーザー層にもそれなりに受入れられる可能性もありでしょう。

一方で我が道を突き進むエイビット

 「AQUOS K」がガラケーの正統進化阪とすれば、auの新製品発表の2日後の1月21日にワイモバイルが発表した音声通話用端末(PHS)の「Heart 401AB」は超異端児。なんと待受時の端末形状はハートの形をしていて、通話するときはハートを中心線から180度ひねることでストレートタイプの音声通話用端末になるという驚くべきギミックが搭載されています。端末にはサイドにメニュー起動用のボタンが一個あるのみ。端末表面がタッチセンサーとなっており、メニュー起動後なでるような操作でアドレス帳を呼び出すなどの操作をするようです。

ワイモバイルが発表した「Heart 401AB」(エイビット製)

ワイモバイルが発表した「Heart 401AB」(エイビット製)

 音声通話専用と割り切り、メール機能さえ無さそうです。ここまで機能を削いでしまうところが、これはこれで斬新です。通信キャリアとしては大きな収益を上げることができないことは目に見えていますが、あくまでスマートフォンなど別の端末をすでに活用しているユーザーのサブ端末として使ってもらうことを前提にしているのでしょう。何よりも、ユーザーを喜ばせるこのような遊び心のある端末を打ち出してきたことを大いに評価したいものです。製造メーカーは、これまでストラップフォンやイエデンワといった、いわば「キワモノ」端末を連発してきたエイビットです。ガラケーにしても、スマホにしても、わが国の通信業界を牽引に大きく貢献して来たものですが、なんだか「型にハマって抜け出せず、次の一歩となる斬新なアイデアを生み出すのに苦心している」ように感じます。そんなモバイル業界を横目に、「自分たちが欲しいと思ったものを次々に生み出していく」というエイビットの姿勢には大いに好感が持てます。

 このハート型端末は発表直後からすでに海外のインターネットサイトなどでも話題騒然。PHSというのが惜しい限りで、SIMフリーの3G端末であったら、端末だけ購入して、ぜひメイン回線のSIMを入れてでも使ってみたい端末です。

 すでにわが国でも、1人1台の時代から、1人複数台の端末を目的別に使い分ける時代になってきました。だからこそ、バリエーション豊かな音声通話専用端末があってもいいと考えていました。「AQUOS K」と「Heart 401AB」のコンセプトの違いはあまりに対照的ですが、いずれにしても、スマホばかりでなく、何かに特化した面白い端末がこれからも多数登場してくれることに大いに期待したいものです。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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