MVNO時代に便利なデュアルSIMスマホ、4G完全対応に期待|山根康宏のワールドモバイルレポート

日本でも毎月のようにSIMフリースマートフォンの新製品が登場するようになった。それらの中には大手メーカー以外の製品も増えており、今までには無かった特殊な機能を備えた製品が出てきている。それがデュアルSIM対応機能だ。日本では回線を切り替えての利用しかできないが、2回線ダブル待受け対応の製品が出てくればスマートフォンやSIMカードの使い方がより便利になる可能性を秘めている。

大手メーカーも販売するデュアルSIM対応スマホ

デュアルSIM対応スマートフォンは、その名前の通りSIMカードスロットを2つ備えている製品である。現在販売されている製品は片側がW-CDMAとGSM、またはLTEとW-CDMAとGSMに対応し、もう片側がGSM専用となっている。両者を入れ替えて使うこともできるが、片側は常にGSMしか利用できない。だが両方のSIMスロットは同時待受けが可能で、2枚の異なる電話番号のSIMカードを入れどちらの回線からも発信したり着信を受けることができる。実際にデュアルSIM対応スマートフォンに2枚のSIMカードを入れると、待ち受け画面にはアンテナマークが2本立ち、それぞれが同時に電波を拾っているのである。

デュアルSIM対応スマートフォンはデュアル待ち受け可能

デュアルSIM対応スマートフォンはデュアル待ち受け可能、アンテナも2本立っている

このデュアルSIM対応スマートフォンは日本でも新興メーカーから製品が出ている。だが日本ではGSM方式が提供されていないため、片側のSIMスロットは常にOFFの状態となる。つまり日本では2枚入れたSIMカードのどちらかを切り替えて使うという利用方法になるため、あまり利便性は感じられないかもしれない。また「デュアルSIM対応だからこのスマートフォンを選んだ」という人もほとんどいないだろう。

ところが中国やインドなどの新興国や途上国ではこのデュアルSIM対応スマートフォンの人気がとても高い。地元メーカーのスマートフォンは基本的にデュアルSIM対応で、1枚しかSIMカードが利用できない製品を探すほうが難しいくらいなのだ。しかもデュアルSIM対応スマートフォンを出しているのは中小メーカーだけではなく、サムスン電子やLG、HTCといったグローバルメーカーも参入している。日本や海外で販売されているGALAXY S5やHTC Oneも、新興国ではグローバルモデルだけではなくデュアルSIM対応モデルも販売されている。大手メーカーがわざわざデュアルSIM対応版を出すということは、それだけニーズがあるという証拠でもある。

中国販売のGALAXY S5はデュアルSIM版。

中国販売のGALAXY S5はデュアルSIM版も。アンテナマーク部分に注目

新興国でデュアルSIMが人気の理由は?

ではどうしてデュアルSIM対応スマートフォンが新興国では人気なのだろう。それは複数のSIMカードを入れ替えて使いやすい環境が整っているからだ。新興国ではスマートフォンの契約は日本のような後から払いのポストペイドではなく、プリペイド方式が主流だ。プリペイドSIMは通信事業者がキャンペーンで安価なものを販売することも多く、お得な料金のプリペイドSIMが発売になると一瞬で売り切れてしまうことも多い。国によっては他社から客を奪うために、お得料金のプリペイドSIMを無料で配布する、といったこともよく行われる。

だがお得なプリペイドSIMを頻繁に買い替えていては、自分の電話番号もそのたびに変わってしまう。ところがデュアルSIM対応スマートフォンを使えば、片側には自分が普段使っているSIMカードを入れておくことができる。そしてもう1つのSIMスロットにキャンペーンなどで入手したお得なプリペイドSIMを入れて使えば、自分の電話番号も変えずに2つのSIMカードを同時に使うことができるというわけだ。

ASUSのZenFoneもデュアルSIMに対応する

ASUSのZenFoneもデュアルSIMに対応する

また中国ではプリペイドSIMとセットでスマートフォンの無料販売も行われている。これは後から割引やキャッシュバックが受けられるのではない。スマートフォン新機種を買うと、スマートフォン代金は無料の代わりに、新規番号のプリペイドSIMを購入する必要がある。そのプリペイドSIMにはスマートフォン代金相当の料金が含まれているのだ。しかもその通信料金はやはりお得な料金体系が適応されていることが多い。

つまりスマートフォンを機種変更すると、端末相当の代金は払うものの、その分がまるまる入ったお得な料金で利用できる新規番号のプリペイドSIMが付属してくるわけだ。これに普段使っている自分のSIMカードを入れれば、両者を併用して不自由なくしかもお得に使うことができるのである。

一方、アフリカなどの途上国では停電による基地局のダウンやネットワークが安定しないといったこともよく起きる。街中から離れた郊外では圏外であることも多い。そのため1キャリアのSIMカードだけでは突然スマートフォンが使えなくなることもあるのだ。それを避けるために、2つのキャリアのSIMカードを併用する人も多く、デュアルSIM対応スマートフォンの人気が高まっている。

MVNOが増え日本でも使える製品が欲しい

このようにSIMカードを手軽に購入できる環境であれば、デュアルSIM対応スマートフォンの利用メリットは大きいわけだ。だが日本では新規契約時に端末の大幅な割引が受けられることもあり、SIMカードは端末と同時契約するものであり、別途入手したり、別契約したほうが安い、という状況はこれまで無かった。

ところがMVNO事業者が次々に現れたことで、ドコモやau、ソフトバンクなど大手事業者よりも割安で利用できる料金プランが増えてきている。またプリペイドSIMも様々なものが登場し、短期間だけ大量のデータ通信を行いたい時などは、プリペイドSIMを買ってしのぐこともできるようになってきた。最近ではプリペイドSIM付属の雑誌も登場、プリペイドSIMの新規事務手数料がかからず雑誌を買うだけでお得に使えるとあって、その雑誌は一瞬で完売したほどだ。

つまり日本でも新興国同様、複数のSIMを組み合わせることでよりお得に通信できる状況が整っているのである。電話番号を変えられない、でもMVNOへ同一番号で移転するのは不安、と言う人にとっても、普段使っているSIMカードはそのままに、MVNOのSIMカードも併用できるデュアルSIM対応スマートフォンは便利だろう。

2011年に発売された過去唯一の3G+3GデュアルSIMスマホ、Coolpad W770

2011年に発売された過去唯一の3G+3GデュアルSIMスマホ、Coolpad W770。今となっては貴重な存在

但し前述したように現在販売されているデュアルSIMスマートフォンは、片側が2GのGSM方式にしか対応していない。これは日本と韓国以外の国では2G方式がまだサービスされているからであり、3G+3G、もしくは4G+4GのデュアルSIM対応スマートフォンの需要が少ないからだ。とはいえ先進国でも少しずつデュアルSIM対応スマートフォンの人気は高まっている。やはりどの国でも低価格なSIMカードが登場しており、普段使いのSIMカードと併用する利用者が増えているのだろう。

日本のMVNO事業者にとっても、大手通信事業者からいきなり客を奪うのではなく、「お試しでうちの回線も使ってみてください」と試用してもらうこともできる、3G+3Gまたは4G+4GのデュアルSIM対応スマートフォンの登場は望んでいることだろう。2015年はぜひとも日本でも同時待受けできるデュアルSIM対応スマートフォンが発売されることに期待したい。

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山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー

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