2015年のブームは、ずばり「セルカ棒」!|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

公開日: : 最終更新日:2015/03/23 モバイル研究家コラム, 木暮祐一のぶらり携帯散歩道 ,

新年、あけましておめでとうございます。今年も筆者が気になったモバイルを巡る話題をコラムとしてお届けしていきたいと思います。さて、年末年始には「新年はスマートフォンに関わるもので、どんなものがヒットするのでしょうか?」といったコメント依頼が増えるのですが、みなさんはどのような話題を期待されていますか。「格安SIM」?、それもと「ウェアラブル」?。もちろん、そうしたトレンドをしっかり押えていかなくてはいけないのですが、筆者的に日本国内で大ヒットしそうだなと思っているのが…、「セルカ棒」です(笑)。

セルカ棒とは何?

 最近、海外からの観光客が、一脚のようなものの先にスマホを取り付け、自撮りをしている風景をよく見かけませんか? あれが「セルカ棒」です。日本では「自撮り棒」などとも言いますが、ブームに火をつけたのは韓国で、韓製英語の’self camera’(セルフカメラ)+棒で、略して「セルカ棒」という名称になりました。ちなみに韓国語では「セルカボン」と発音するそうです。これがアジア中に広まり、今や日本に観光に来るアジア各国の方々がこの「セルカ棒」を使って記念撮影を楽しまれています。

最近よく見かけるようになってきた、来日観光客の自撮り風景。

最近よく見かけるようになってきた、来日観光客の自撮り風景。

 確かに、スマホのインカメラを使った「自撮り」をする機会は増えてきましたよね。とはいっても、インカメラを使った自撮りですと、どうしても顔がクローズアップされてしまって、うまく背景を入れ込みながら撮影したいというときにアングルにかなり苦労をします。もちろん、自分自身の全身を入れるようなアングルはまず無理でしょう。そんなときに、少し離れたところからスマホ撮影できるセルカ棒は重宝します。

 韓国では、若い女の子達の必須アイテムなのだそうです。自分を美しく撮影するのは、じつはちょっと上から見下ろすように撮影するといいというのは定説ですが、セルカ棒を使えばスマホのディスプレイを見ながら、背景も考慮しつつ最も美しいアングルで撮影できちゃうというわけです。さらに、集合写真を自撮りする場合にも、とても便利です。

 セルカ棒は、グリップにシャッターボタンが取り付けられており、これを押すとスマホのシャッターを切ることができます。シャッターボタンとスマホの通信は2通りあり、スマホのイヤホンジャックを通じてシャッターを切るアナログタイプと、Bluetoohでスマホとペアリングさせ、Bluetooth経由でシャッターを切る通信タイプ(どちらかというと、このタイプが主流のようです)とがあります。日本でも、秋葉原等の電気街や、アマゾンの通販などで入手が可能になってきましたが、おそらくBluetooth版の場合は日本の技適の取得が必要になってくるため、多くはイヤホンジャック経由で撮影するアナログタイプが多いようです。

 正直なところ、筆者もこれまで何度か来日外国人観光客が使っているのを見て、「そこまでしなくても自撮りできるだろう」ぐらいにしか思っていませんでした。しかし…、実際に使ってみると面白いのです!

 年末に開催されたAndroid開発者のお祭り、「Android Bazaar and Conference 2014 Winter」に参加してきたのですが、そこでウェアラブルの神様とされている神戸大学大学院教授の塚本昌彦先生に久々に遭遇。なんと塚本教授がセルカ棒を楽しそうに使われているではないですか。実際に触らせていただき、一緒に撮影させていただいたりして遊びました(笑)。

 やはり、スマホ単体で自撮りするよりも、ある程度の距離から撮影できるので、周囲の風景などをうまく取り込んでアングルを決められるのです。スマホ単体ではどうしても自分の顔のクローズアップが主体で、オマケに背景が写っている程度の写真しか取れませんが、セルカ棒を使えば色々なアングルで自分を入れた撮影が楽しめます。これは楽しい! そして、撮影しているうちに「何それ、どうなっているの?」と仲間が集まってきても、みんなを入れ込んでワイワイと自撮り記念撮影できてしまうのです。

ウェアラブルの神様こと、神戸大学大学院の塚本昌彦教授がセルカ棒を愛用されていて撮影に割り込んでみました(笑)

ウェアラブルの神様こと、神戸大学大学院の塚本昌彦教授がセルカ棒を愛用されていて撮影に割り込んでみました(笑)

こんな感じでワイワイと集合写真も自撮りできてしまいます。もちろん風景のアングルをしっかり決めて自撮りするのに大変重宝しそう。

こんな感じでワイワイと集合写真も自撮りできてしまいます。もちろん風景のアングルをしっかり決めて自撮りするのに大変重宝しそう。

 この後、筆者は「トレンド裏読みで2015年のモバイルを予測する」というようなテーマで、筆者のかつての上司で、現在、角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏(元・月刊アスキー編集長)と対談形式の講演を行ったのですが、結論は「2015年のヒット商品は、ずばりセルカ棒でしょ」なんて話になってしまいました。でも、これ、今年は日本でも大ブームが起こるのではないでしょうか。

日本のメーカーが本気を出してセルカ棒を作ったら?!

 アジア中で大ヒットのセルカ棒がなぜ日本であまり売られていないのかというと、前述の通りセルカ棒はBluetooth版が主流で、日本では電波法のからみがあって、なかなか本格的に取り扱おうという販売代理店が存在しなかったのでしょう。以前にも触れましたが、日本は電波を発する製品は技適の取得が必要となり、これがない製品を使うことは電波法違反として処罰の対象となってしまいます。

 ちなみにセルカ棒はいまやほとんどが中国製のようで、韓国でさえも、電波法に絡んだ規制が入っているようです。

“韓国政府は21日、自撮り棒を販売する業者の取り締まりを開始すると発表した。政府に認定されていない自撮り棒を販売すると最高3000万ウォン(約320万円)の罰金または最長3年の禁錮刑が科される。取り締まりの対象は主に、近距離無線通信規格のブルートゥース通信機能を備え、より簡単に写真が撮影できるタイプのもの。こうしたタイプの棒は一般的にグリップにあるボタン操作で、棒の先につけられたスマホのカメラに指示を出す仕組みになっている。”(THE WALL STREET JOURNAL. 2014.11.24)

 でも、韓国の電波法では、政府認定品(日本でいう技適を受けた製品)の取り扱いに関して、販売者に罰則があり、使用者は取り締まられないんですね。ちなみに日本では販売者には罰則がありませんが、使用者は罰せられるので注意が必要です。

 ところで、かつてケータイや、関連するアクセサリーなどのブームは、その多くが日本発祥でした。たとえば「ケータイ」という用語も、「スシ」や「相撲」同様に、一時世界で通用する単語になっていました。また、アクセサリーに目を向ければ、「ケータイストラップ」も日本特有のケータイ文化といえます。2000年頃には、香港の露店などで「日式手縄」(日本式ストラップ)という看板を掲げている店をたくさん見かけました。

 かつて世界で、モバイル最先端を突っ走っていた日本。ところが「セルカ棒」は韓国発祥という具合に、スマホの時代になってモバイルを巡るブームも世界から遅れをとり始めているのかと、ちょっと残念な気持ちにもなりました。

 このセルカ棒はきっと日本でも大ヒットするはず。であれば、日本のメーカーにはぜひとも海外のセルカ棒に負けない製品を作ってもらいたいものです。セルカ棒はヒットするのではないか、ということで「Android Bazaar and Conference 2014 Winter」の壇上で盛り上がったのは、やはり日本メーカーならではの高品質で世界をアッと言わせる製品を作ってもらいたいということです(そんなもんに注力してどするのかと言われそうですが)。たとえば、現状のセルカ棒の課題として、スマホのディスプレイがファインダーを兼ねているために、撮影はインカメラを使用しなくてはならないこと。インカメラはご存知の通り、アウトカメラよりもクオリティを落としている製品が少なくありません(ちなみにサムスンのGALAXYシリーズではインカメラを使うと自動的に美肌モードになるなど、自撮り文化が反映された製品となっていて驚きました)。なので、アウトカメラで自撮りできるよう、セルカ棒のほうで工夫できないか。

 「ミラーを付ければいいんじゃない?」なんて話にもなりましたが、やはり日本メーカーには再高級なセルカ棒を作ってもらいたいので、「4Kディスプレイをセルカ棒に装着させて、スマホからHDMI出力でカメラ画像をモニタ出力させ、それを見ながら記念撮影するぐらいしたいですね」なんていう空想話に発展…。いやはや、期待しています、ソニーさんあたりから「最高級セルカ棒」とか出して頂けないでしょうか(笑)

 ということで、本年もよろしくお願いいたします。

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木暮祐一
1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチし、携帯電話関連媒体の立ち上げや執筆などに携わる。2000年にはアスキーで携帯電話情報ニュースサイトを立ち上げ編集長を務めた。ケイ・ラボラトリー(現、KLab)を経て2009年に大学教員に転身。2013年より青森公立大学経営経済学部准教授。黎明期からの携帯電話端末コレクションも保有し、その数は1000台以上。株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
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