ターゲット層が細分化、「女子スマホメーカ」が続々登場|山根康宏のワールドモバイルレポート

デザインやカラバリに工夫を凝らした様々なスマホが各社から登場している。1モデル2色だったiPhoneも今では3色展開され、しかも画面サイズも2種類となった。利用者の拡大により”IT機器”から”日用品化”するスマートフォン、デザイン面での各社の競争も激しくなっている。

女性向けスマホに特化するDoov社

スマートフォンが日用品化すれば、洋服やバッグを選ぶようにその見た目も自分の好みのものを選ぶ消費者が増えてくる。例えば女性ならよりスタイリッシュな製品を好むのではないだろうか?そんな女性たちの声に応えるように、中国では女性向けスマートフォンのみを手掛ける「女子スマホ」メーカーが次々に登場しているのである。

その筆頭がDoov社だ。同社は創業してから一貫して女性向けの携帯電話を販売。スマートフォンに移行してからもターゲット層は変えていない。本体デザインは白を基調としたものが多く、パステルカラーの採用も多い。また細かい模様や色入れなどは、各社のスマートフォンにはないデザイン上の特徴にもなっている。DoovのスマートフォンはまさにIT製品ではなく女性のためのアクセサリを目指している。

女性を意識したデザインとイメージで差別化を図る

スペックはもはや必要十分で各社横並び。女性を意識したデザインとイメージで差別化を図る

しかも女性が楽しく使える機能も多数搭載している。その中でも最近流行りの自分撮り、セルフィーの対応は恐らく同社が世界で最も早く始めたと思われる。フロントカメラの画質強化や、美しい顔が撮影できる美顔モードの搭載、そして自分たちのセルフィーを同社のWEB上にアップする「美顔大会」を開催するなど、セルフィー利用を推進してきたのだ。

美顔撮影のカメラアプリは「魔鏡Cam」。

美顔撮影のカメラアプリは「魔鏡Cam」。起動した瞬間に美白や若返りなどが自動適応。しかもウィンクやピースサインでシャッターが切れる

日本ではあまり考えにくいが、中国やアジアではスマートフォンのSIMフリー販売が一般的なため、男性がスマートフォンを買って女性にプレゼントすることも当たり前である。受け取った女性は自分が今まで使っていたスマートフォンからSIMを抜いて、もらった端末に入れ替えればよいわけだ。バレンタインデーには男性から女性に花束を贈るが(チョコレートを女性が送るのは日本や韓国など一部の国だけ)、それと一緒にDoovのスマートフォンを、といったキャンペーンも毎年行っている。

Doovのスマートフォンも今やハイエンド、ミッドレンジ、低価格と多数の展開がされている。だがそれらは全て女性向けの製品となっているのだ。一時は販売プロモーションで「男性購入禁止」と謳ったことで物議を醸しだしたこともあったが、それだけ「女性専用製品」に特化していることをアピールしたいのだろう。

宝石やマカロン、スペックよりもイメージで売る

一方、1年1機種という少数精鋭機種で勝負しているSugar社はスワロフスキーの宝石を散りばめた高級スマートフォンを販売。発表会もパリで行うなど本気で情勢向けの高級スマートフォンの展開を行っている。その姿はパッケージにも見られ、ダイヤモンドのようなカットを散りばめた透明で円形な箱に入れて販売されている。購入したその瞬間から、Sugarの世界観の中に入り込むことができるわけだ。

Sugarは高級感ある初代モデルの次に、パステルカラーを採用したモデル名『マカロン』を投入。LTEなど最新技術へ対応したが、製品の特長はマカロンのようなかわいらしいイメージであり、スペックはあまり説明されていない。ソフトキーのホームボタンもダイヤモンドのアイコンにするなど小さい演出もところどころにちりばめられている。

IT製品の枠を超え、高級アクセサリのイメージで攻めるSugar

IT製品の枠を超え、高級アクセサリのイメージで攻めるSugar

スマートフォンの性能は年々高まってはいるものの、すでに現在市場で販売されているミッドレンジクラスのスペックでも日常的に常用する分には問題ないレベルに到達している。ディスプレイ解像度は来年にはQHD=1440 x 2560ピクセルが主流になっていくだろうが、まだまだHD=720 x 1280ピクセルの新製品も登場している。CPUも2GHz超えのものが増えてきたが、1.5GHz前後のものも多い。だがハイエンド製品よりも性能の落ちるこれらのスペックを搭載したスマートフォンが使い物にならないのかと言えばそうではない。

すなわちもはやスペックを気にせずスマートフォンを買っても、十分常用できる製品がすでに市場にはあふれかえっているのである。またハイエンドな製品を手掛けられるのは資金力と開発力に長ける大手メーカーのみだろう。新規参入する新興メーカーや販売台数があまり見込めない中小のメーカーは、ミッドレンジクラスで他社と差別化できる製品で勝負に挑むしかないのである。女性向けスマートフォンはその一例でもあるわけだ。

アイスクリーム、の相性もあるBoway。

アイスクリーム、の相性もあるBowayの端末。Sugarとは対極の学生向け製品だ

最近もAlvaというメーカーがスリムで美しい本体デザインとセルフィー機能を搭載した女性向け端末で市場に参入。またBowayは女子高校生や大学生を狙ったかわいい系とも呼べる製品を次々に発表している。数年もすれば、スマートフォンは家電量販店ではなく街中のブティックの店頭に並べられているかもしれない。そしてその光景は世界で最初に中国で見られるようになるのかもしれない。スマートフォンの開発競争は、スペックだけではなく使い勝手や価値観など、ソフトの方向へこれからどんどんシフトしていくだろう。

The following two tabs change content below.
山根 康宏

山根 康宏

香港在住15年。海外展示会取材や海外市場調査のため1年の半分を 海外で過ごす。2003年に前職を退職し同年に携帯電話研究家として独立。 香港を拠点にフリーランスの活動を開始する。消費者目線でのコラムやレポートを執筆する他、 コンサルティング活動も行っている。 週アスPLUS『山根博士の海外モバイル通信』、 ITmedia『山根康宏の中国携帯最新事情』、CNET『中国トンデモケータイ図鑑』など、 メディアでの連載多数。 携帯電話をこよなく愛しており、海外出張時は現地端末やプリペイドSIMを必ず購入、 それらのコレクターでもある。 収集した海外携帯電話の台数は約1300台、SIMカードは約500枚(2014年6月時点)。 株式会社ウェブレッジ社外アドバイザー
IoT品質検証

関連記事

Datawindの3000円スマートフォン。低スペックだが低所得者でも楽に買えるのは現地で大きな魅力だ

激安タブレットの次は3000円スマホ、スマホはコンビニ販売が普通になる?|山根康宏のワールドモバイルレポート

今やスマートフォンが無料で買えるのは当たり前だが、当然のことながら2年契約が必要だ。またスマートフォ

記事を読む

モバイルSIM登場の衝撃

デュアルSIM黎明。端末一個で2番号を格安で使い分けろ!|池端隆司のモバイルジャンクション

こんにちは、池端です。 まずはおなじみの宣伝から…モバイル界隈の分析やぶっちゃけ(!?)トークが満載

記事を読む

Lenovoの会員向けにサービスを開始したLenovo MVNO

端末だけでは商売にならない?中国で進むスマホメーカーのMVNO事業|山根康宏のワールドモバイルレポート

Lenovoは2015年10月26日、中国でMVNO事業(Mobile Virtual Networ

記事を読む

Mobile Asia Expo 2014でも多数の4G関連の展示を行った中国移動

早くも高速化が見えてきた中国のLTE|山根康宏のワールドモバイルレポート

中国の通信事業者3社の4Gサービス競争が本格化している。世界最大の契約者数を誇る中国移動は低価格機を

記事を読む

gazou006

タクシー配車アプリの激しい戦いが始まっていた!|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

みなさん、タクシー配車アプリってご存知でしょうか。2011年1月に日本交通が初めて導入し、これに追従

記事を読む

「マイマガジン」のタブの中に設定したキーワードが並び、それをタップするとキーワードに引っかかった最新ニュースがずらり

世界のニュースもキャッチ! 『ニューススイート』|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

若者たちのニュースソースといえば、もはやスマホによるニュース閲覧が圧倒的です。「新聞も読みなさいね」

記事を読む

WR170401_01

炊飯器から360度カメラまで、IoT製品を続々増やすシャオミ|山根康宏のワールドモバイルレポート

中国の新興スマートフォンメーカーとして世界中の話題をさらった時期もあったシャオミ(Xiaomi、小米

記事を読む

台北の空港のキャリアカウンターは大行列。たいていの香港人はここでプリペイドSIMを購入する

香港の人は海外に行くときスマホをどうやって使っているのか?|山根康宏のワールドモバイルレポート

毎年の夏休みや年末年始など、長期休暇が取れるときは海外へ行く人も多いだろう。最近では自分のスマートフ

記事を読む

LTE対応表

国内通信事業を統合したソフトバンク、その思惑は?|木暮祐一のぶらり携帯散歩道

1月23日、ソフトバンクは国内で携帯電話やインターネット通信などを手がける4つの子会社、すなわちソフ

記事を読む

MVNOブレイク!背景に潜む、SIMフリー版「失われた20年|池端隆司のモバイルジャンクション

MVNOブレイク!背景に潜む、SIMフリー版「失われた20年」|池端隆司のモバイルジャンクション

世界から遅れること20年、日本でもようやく自分が使いたい端末を通信キャリアの縛りなく選ぶことができ

記事を読む

ウェブレッジ
  • Facebook
  • Twitter
  • Google+
  • はてなブックマーク
  • RSS
PAGE TOP ↑